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第4章 裏切りと脅迫と忘却

嵐の後の――― 嵐 ―――― 後編<438>

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あぁ、ソウの奴ぅ。



えっ、良くも悪くも、これから、冬野さんに会えるのは、正直。





嬉しい……とは、手放しに言えないよ。





大体、何でそもそも、マキさんの事は済んでいると受け取っている私にとって、冬野さんが私にお店に来て欲しくないのが、これ以上ないって位引っ掛かるのに。




時計を、見上げると、1時20分。




もういつ、冬野さんが帰ってきてもおかしくない時刻だ。




ガチャ




静かなリビングで、玄関の方から聞こえたドアの音に私は息を飲んだ。




冬野さん、帰って来たんだよね?




どうしよう、緊張する。




ソファーから立ち上がるソウが私に言った。




「帰って来たみたいだな。お前、腹くくれよ」



「えぇ!!」




いや、マジ、これで冬野さんと拗れたら、ソウに腹を切って欲しいよ。






そう言い残して、ソウは玄関に向かった。



間もなくドアが開く音がした。





「ソウ?」



「おう。待ってたぜ?」



「え、何でセイの靴があるんだよ。 は?」



「早く入れよ。何、顔しかめてんだ。 お前にとやかく言う権利ねぇからな」



その会話の後、ソウと一緒に冬野さんがリビングにやって来た。




「セイ、ソウに何言われたの?」




冬野さんに嫌な顔されるのは、嫌だった。



リビングに入ってきた冬野さんの表情は、私を嫌そうに思っては無さそうで、何の確証もまだ無いのにホッとしてしまった。




「えっと、何か色々…」




私が、そう答えると、冬野さんはソウに言った。




「俺、良く分からないんだけど?」



「お前が前に俺とユキにした事と一緒だって事だ。座れよ」




ソウに言われ、渋々冬野さんはソファーに腰を下ろし、ソウもソファーに腰かけた。




冬野さんの首に絆創膏が、貼ってあるのを見つけて、怪我でもしたのだろうか?と気になった。





そう言えば、マキさん。




冬野さんの首に記しを付けたと言っていたけど、何か関係あるのかな?




「セイ、ごめん。巻き込んじゃって」




冬野さんが、最初に切り出した言葉が、私への謝罪で、驚く。




「まぁ、そうなるな」




ソウが平然と言い放つと、冬野さんが顔をしかめた。





「つまり、5年前に俺がソウにやった事を、そのまま返したつもりって事?」



「そうだ。覚えてんじゃん」



「あの時は悪かったと思ってるよ、野暮だったって。……だから、もう気が済んだなら、帰って」



「お前、いい加減にしろよ」




今まで、ふざけ半分だったソウの声色が、変わった。



冬野さんの一貫的な素っ気無い態度と、ただひたすらソウの事を邪険にする姿勢に、さすがのソウも痺れを切らしたんだろう。



でも、だとしたら、今回は冬野さんが悪いよ。



そう、先週からこっち来てずっと、冬野さんのお店の為に、やりたい事たくさんあって、それに事情があるとは言え、非協力的態度を貫いてたんだから。




「今、俺は一杯一杯なんだよ。 俺は、ソウみたいに、何でもすぐに割り切れないんだよ。 セイみたいに、どこまでも自分の我を通して物事をやり遂げたり出来ないんだよ。 二人とも、ストイック過ぎて、時々、俺ついて行けないよ」




え、いや。



あのさ。



どうして、冬野さんは、ソウと私をそもそも一括りでとらえるのさ。



ソウの何がうまくて。



私の何が我がままなんだよ。




「何血迷ってんだよ。 暴走の次は、八つ当たりかよ」




おう、ソウ。



冬野さんを更に興奮させる様な事言って。





何、取っ組み合いのけんかでも始めるつもり?



本当、やめてよ。




「落ち着いて、喧嘩は」



「「黙ってろ(てて)」」





私に怒鳴るなよ……。



誰か、助けて。



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