上 下
418 / 507
第4章 裏切りと脅迫と忘却

荒巻 美月の脅迫 後編<418>

しおりを挟む


「君は、俺が手塩にかけて育てた後輩だよ。ちょっと、やんちゃだったけど」





いや、後輩とかそういうんじゃなくて。



私は、初めて会った時から、冬野さんが好きだった。



ずっと、欲しかったの。





「悪うございましたね。これからも、私の事、ずっと面倒見て。 冬野さんには、地味で根暗な女は似合わないよ」



「確かに、地味でネガティブで面倒臭がりで、変わり者で、頑固で、ぶっ飛んでる。そんな人だよ、俺の恋人は。 でも、俺は彼女のを好きにならなかったら、恋愛なんてただ面倒くさい、つまらないものだと思ったままだった。 彼女に片想いして、初めて、知ったんだ。 俺は、今まで人に恋する程、人を好きになった事無かったんだって」




「私に恋してよ。 絶対、私の事好きになれるよ。 私の方がスタイル良いし、可愛いし、仕事出来るし。私だったら」




食い下がる私に、冬野さんは苦笑いした。




「彼女じゃないとダメなんだ。 傍に居ると安心して眠れるんだ。 俺、他の女性を抱いた事はあるけど、他人と同じベッドで眠りに付くなんてした事無かった」




え、そもそも、私は抱いて貰った事もないのに。





他のオンナを抱いた事あるって話をされるだけでも、腹が立つだけど。





そりゃ、童貞だったら引くけど、なら、今までに1.2度位、私をアソビでも良いから抱いてくれたって良かったんじゃない?



釈然としないわ。




「あんな女が好きな冬野さんなんか大嫌い」



「ごめん。でもね、マキさん。 もう、俺から卒業しなよ。 もう課長には言ってる。 俺はもう金輪際、会社のアルバイトは受けないから。 もう、マキさんや彼女の会社に行く事はないよ」



「そんな」



「俺の門出を祝って。 今まで、いつか前の経営者が戻って来て、また会社員に戻るかも知れないって甘えてた。そんな中途半端な雇われ店長気分だった自分から卒業する、俺の門出を」




あの女、冬野さんを変えやがった。



今更気が付いた。



あいつが冬野さんの店に来て、塗り替えて行ったのは、冬野さんのお店と冬野さんの心だけじゃない。



冬野さん自身まで、すっかり変えてしまってたんだ。




前の冬野さんより、悲しい位、活き活きしてて。



もう、認めざるを得ない、と心が諦めていた。



冬野さんに対してまで、私はあの女に負けたんだって。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。

どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。 婚約破棄ならぬ許嫁解消。 外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。 ※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。 R18はマーク付きのみ。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕

月極まろん
恋愛
 幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...