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第4章 裏切りと脅迫と忘却
荒巻 美月の脅迫 後編<418>
しおりを挟む「君は、俺が手塩にかけて育てた後輩だよ。ちょっと、やんちゃだったけど」
いや、後輩とかそういうんじゃなくて。
私は、初めて会った時から、冬野さんが好きだった。
ずっと、欲しかったの。
「悪うございましたね。これからも、私の事、ずっと面倒見て。 冬野さんには、地味で根暗な女は似合わないよ」
「確かに、地味でネガティブで面倒臭がりで、変わり者で、頑固で、ぶっ飛んでる。そんな人だよ、俺の恋人は。 でも、俺は彼女のを好きにならなかったら、恋愛なんてただ面倒くさい、つまらないものだと思ったままだった。 彼女に片想いして、初めて、知ったんだ。 俺は、今まで人に恋する程、人を好きになった事無かったんだって」
「私に恋してよ。 絶対、私の事好きになれるよ。 私の方がスタイル良いし、可愛いし、仕事出来るし。私だったら」
食い下がる私に、冬野さんは苦笑いした。
「彼女じゃないとダメなんだ。 傍に居ると安心して眠れるんだ。 俺、他の女性を抱いた事はあるけど、他人と同じベッドで眠りに付くなんてした事無かった」
え、そもそも、私は抱いて貰った事もないのに。
他のオンナを抱いた事あるって話をされるだけでも、腹が立つだけど。
そりゃ、童貞だったら引くけど、なら、今までに1.2度位、私をアソビでも良いから抱いてくれたって良かったんじゃない?
釈然としないわ。
「あんな女が好きな冬野さんなんか大嫌い」
「ごめん。でもね、マキさん。 もう、俺から卒業しなよ。 もう課長には言ってる。 俺はもう金輪際、会社のアルバイトは受けないから。 もう、マキさんや彼女の会社に行く事はないよ」
「そんな」
「俺の門出を祝って。 今まで、いつか前の経営者が戻って来て、また会社員に戻るかも知れないって甘えてた。そんな中途半端な雇われ店長気分だった自分から卒業する、俺の門出を」
あの女、冬野さんを変えやがった。
今更気が付いた。
あいつが冬野さんの店に来て、塗り替えて行ったのは、冬野さんのお店と冬野さんの心だけじゃない。
冬野さん自身まで、すっかり変えてしまってたんだ。
前の冬野さんより、悲しい位、活き活きしてて。
もう、認めざるを得ない、と心が諦めていた。
冬野さんに対してまで、私はあの女に負けたんだって。
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