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第4章 裏切りと脅迫と忘却
snitch on ブルータス(告げ口をしたのは、身近で意外な人物) 前編<338>
しおりを挟む言いたい事は、山ほどある。
でも、これ以上、冬野さんのお店に、一秒でも居てはだめだ。
でも、脊椎反射は良くない。
慎重にならないと。
「……ここで話してたらお店の迷惑だから、お店を出よう」
私は、両親の肩を掴んで移動しようとしたが、びくともしない二人に立ち止まる。
母親の逆鱗に触れたら、いつもそうなのだが、また左の頬に母親から怒りのビンタの第二波が来た。
「やめて下さい」
冬野さんの声が聞こえた。 すぐそばで。
母さんのビンタは私には届かなかった。
バシッて音が響く。
嘘。
あろう事か、私の母さんが繰り出したそのビンタは、私を庇う様に割って出た冬野さんの肩に落ちたのだ。。
お父さんもお母さんも、私も、多分店内のお客さんもその光景に目を丸くしていたであろう。
「お母さん、やめてあげて下さい」
「私は、貴方のお母さんじゃないっ。 ……何のつもりで、娘を何日も……信じられない。あんた、旅行じゃなかったの?」
怒りながらも、母親は冬野さんに狼狽えて、少し大人しくなった。
とは言え、お店には依然、事情を知らず、事情を知られたくない2組のお客がいるし、もう気分は最悪だった。
「冬野さん、本当にごめんなさい……私、逃げますっ」
「セイっ!!」
逃げちゃダメだ✕3って、言葉があるが。
だが、敢えて言おう。
今は絶対、逃げなきゃだめだ。
そう思ったから、私は、逃げた。
一目散に店を出て。
人波かき分け、夜の街を、駆け抜ける。
私が逃げれば、両親が私を追って店を出るのは間違いないと思ったからだ。
案の定、両親は店を飛び出す私について来た。
私は二人が私を見失って万が一にも冬野さんのお店に戻ってしまわない様、一定の距離感を保って逃げた。
そして、何とか20分かけて自宅の近くまで戻って足を止めた。
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