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第3章 7days 3years fights
冬野 総一郎 前編<254>
しおりを挟む「奥さんが居ても良い。子供が貴方に居ても良い。 一度位、私と会ってくれても良いと思わない? 駄目だった?」
「……お前が結婚してなきゃ」
莫迦だ。
何も、話したくなかった。
話さないつもりだった。
脊椎反射で出た言葉を慌てて飲みこんで、目の前のユキは、皮肉そうな表情をしていた。
綺麗とか、可愛いとか、好みだとか。
そんな事より。
目の前の女の事を愛してた分だけ、悲しかった。
「ソウがさ。今、どこで何して、何を考えているとかさ。本当に別にどうだって良い。クラウンで、コーヒー淹れている人がいて、その人が淹れたコーヒー飲んだらさ。
ソウが淹れたコーヒーとは全然違う味がしたんだけどね。もう一度、会いたいって、思ったから来たの」
俺が淹れたコーヒーじゃなくて。
でも、俺の店だったあの場所でコーヒー今も淹れているのか?
誰が?
でも、もう俺には関係ない。
「何か、言ってよ」
「気が済んだなら、帰れ」
繰り返さない。
これで、終わりだ。
これでもう、二度と傷つけなくて済む。
俺をまっすぐ見つめてくるユキに、俺は目を逸らさず、見つめ返す。
「もうチョコレートにテキーラでも、私にコーヒーは淹れてくれないの?」
「淹れない。でも、テキーラは飲み過ぎんな」
思わず、言葉が引き出されて、止まらなかった。
「終電逃して遊ぼうって言っても、私にキスしてくれないの?」
「するか」
本当は。
全然、好きだった訳じゃない。
あの時、気づかなければ、良かった。
あいつはあの日、俺に言った。
「朝まで遊びます?」
いっつも、他人にどここ冷めた目をするユキが、こんな人懐っこい表情も出来るんだな。
そう思ったら、愛おしかった。
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