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第2章 人の人生を変えるなら、人に人生変えられるかくご位してやがれ

水野 雪 後編<187>

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「最近、ソウに彼女が出来たみたいなんだ」



「それがどうかしたの?」




私は週末の金曜日、ユキに誘われてクラウンに顔を出していた。



カウンター席に並んで座り、ユキはモスコミュール、私はオリーブをピンで留めたマティーニを頼んだ。



幸い、ソウはテーブル席を接客中で、ユキの発言は聞こえない位置だった。




「土曜の夜から月曜の朝まで、居ないんだ。そう言うルーティン初めてでさ」



「何、ユキは従兄が家に居ないと一人でお留守番も出来ないの?」




私が茶化すと、ユキが顔をしかめた。



私はマティーニを半分飲み干した。



シェーカーで良く冷やされたピリピリする舌触りの後、灼ける様なアルコールに酔いの波が来る。



ちびちび、話を愉しみながら飲むショートカクテル。




「そこのユキ、二人。 今日から生ハムの原木があるけど、どうする?」




テーブル客の接客の帰り、彼が私たち間にやって来た。




「ソウ、週末いつもどこに行ってるの?」




ユキが聞いた。



彼は何と答えるだろう?



毎週彼がどこに行っているかなんて、一つしかない。



私の一人暮らしの部屋だ。




不意にソウが私を一瞥して、ちょっと迷った様な素振りを見せた。




「今、聞くなよ。ここじゃ、言えないような所。 今は仕事中だから、そう言うのは、上に居る時に聞いてくれよ」




ソウとユキは、ルームシェアしている。



ソウの店にバイトに来ている住み込みの男の子と3人で。



そりゃ、店に飲みに来た時以外で、普通の会社員とバーテンで生活時間は大きくズレてはいるけど、そりゃ普段全く顔をほっつき合わさないなんてないだろうから。




「分かったよ。場所は改めるよ。生ハムとハイボール、ユキは?」



「生ハムと高いチョコレートと珍しいチョコレートとテキ……」



そう言いかける私に、すかさずソウが「コーヒーを煎れてやるよ、特別に」と私にテキーラと言わせず、断言した後カウンターに消えてしまった。





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