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第2章 人の人生を変えるなら、人に人生変えられるかくご位してやがれ
バイオレーション(反則技) 前編<155>
しおりを挟む冬野さん、この前の綺麗な女の人の事で、ちょっとお酒の入った男の人と揉めてたんだろう。
本当は話題に出したいけど、わたしもちなも眞鍋ちゃんも敢えてしなかった。
お店にそれなりに人が入っていたのもあって、人目を避けたいと思った。
冬野さんが揉めてた話なんて、冬野さんのお店で出来ない。
お客さんに話を聞かれて、変な噂がたったら嫌だった。
22時になって仕事をあがったセンちゃんがテーブルにやって来て、状況は変わった。
「石崎さん、今日はありがとうございました」
「センちゃん。お疲れ」
センちゃんは、週末だからお父さんが迎えに来るはずなので、あまりゆっくり出来ないはずだ。
「石崎さん、今度、ゆっくり接客させて下さい。せっかく久しぶりに来てくれたのに」
「うん、また来るから。お父さん、迎えに来るんじゃない?」
私の指摘にセンちゃんは頷く。
「はい。でも、あの……。店長、元気なかったんで。石崎さん、店長の事、嫌いにならないであげてください」
「え?!」
驚く私に、センちゃんはまっすぐ私を視線の先に見据えて言った。
「何か嫌われる事したかなって、3日に一回位、レジの横の置物に向かって話しかけてました」
ハシビロウコウのぎょぎょんちゃんに?!
私は、ブッと吹き出した。
「嘘だぁ」
「本当ですから。じゃぁ、皆さん、お先に失礼します」
それから間もなくして、ちなと眞鍋ちゃんも二人で先に店を後にして、私はまたしても、店を出そびれてしまった。
お会計を済ませる時に、ちなと眞鍋ちゃんが冬野さんに私の事を頼んで帰るから、私はお店に置き去りだった。
冬野さんは、ちなと眞鍋ちゃんが店を出るのを待って、私に声をかけて来た。
「先に上に行ってる? 今さ……君が仮に帰るって言っても、今夜は帰したくない」
「あ、あの、えっと……、その、で、でも。冬野さん」
「何? セイ」
あ、もうお店に二人きりだからか知らないけど、名前で呼んだ。
「わたし、冬野さんの事……避けてました」
私の言葉に、冬野さんは腕を組んで、ため息をついた。
「分かってる」
冬野さんは言った。
硬い表情だった。
怒っているのか、あきれているのか、それとも全く別な感情なのだろうか?
「冬野さんに聞きたい事があるんです」
私は言い切って緊張のあまり息を飲んだ。
「俺も話したい事があるから。お願いだから、居なくならないで、上に行ってて」
「はい。……でも冬野さん」
「ごめん。今は話せない。後で、絶対」
「分かりました」
私は素直に、勝手口を出て冬野さんの部屋に上がった。
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