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第1章 シンデレラはガラスの靴をk点に向かって全力で投げた

逃げても、避けても、忘れても。<82>

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先に冬野さんがお風呂を上がって、私はゆっくり長湯をたのしみ、お風呂を上がると、前に泊まった時に冬野さんが貸してくれたガウンがバスタオルと一緒に用意されていた。



洗濯機が回っていて、どうやら私の服みたいで乾燥コースで組まれているので完了待ちだなとリビングに戻るとテーブルにメモが残っていた。





勝手に帰らないでね。

寂しいから。





あ、帰れない。



そう思った。



取り敢えず、ソファーに座ってテレビを着けた。




夕方のニュースを見ながら、私はまったりと冬野さんのいない部屋で寛いだ。



今、お店に行ったらせんちゃんに会えるのに、と思ったけど、鍵掛けないで降りられないと断念した。





テレビを見ながらうとうとして、私はいつの間にか眠ってしまった。




ガチャッとドアが開く音で目が覚めて、玄関へ行くと冬野さんが靴を脱いでいた。





「ただいま」

「お帰りなさい」




自然にそう声が出たが、住んでるわけでも無いのに、変な会話だと思った。




「お腹空いてない? なんか作ろうか?」

「今は大丈夫です」

「俺も、食事は良いかな。でも、今日さ、店に千波と眞鍋ちゃんが遊びに来て、ベアローズのチュロス貰ったんだ」

「え、何でまた?」

「君の荷物に間違って自分の眞鍋ちゃんがスマホ入れちゃってたんだって。何か、俺たちと別れた後、食事する時に気づいたって言ってたよ」

「それ絶対、ハンバーグ食べる前に写真撮るうとした時ですよね?」

「同感。話してたもんね。俺もそっくりそのまま言っちゃったよ。もちろん、そうだってさ。千波が変わりに写真撮ってたよ。今度連れて行こうか?」

「……良いんですか?」

「セイと行きたいと思わなかったら、そもそも言わないから」



冬野さんはそう言うと、キッチンテーブルにベアローズの紙袋を置いて、戸棚を開けて何かを探し始めた。




「石ちゃんって、コーヒー好き?」



「好きですよ。エスプレッソとかじゃなくて、ドリップコーヒーよく飲みます。冬野さんが、淹れる紅茶も好きですけど、家では妹がコーヒー飲むんで、コーヒー飲むのが習慣になってしまって」




コーヒー豆を挽くミルもあるし、液とか粉とかで作るんじゃない、コーヒー豆で作れる本格派エスプレッソマシンまである。




「今日、皆にコーヒー出してたよね?」

「はい、マカデミアとキャラメルのフレーバーコーヒーとグアテマラをブレンドした私達姉妹の珠玉の嗜好品ですけど」




因みに、淹れたてに冷たい牛乳入れて飲むのが一番好きなんだけどね。

夏とかマジ神の飲み物だと思って飲んでるレベルだ。




「良かったら、今から店で淹れてくれない。今年、貰った封切りしてないコーヒーあってさ、道具は店にあるからさ。持つてくるからちょっと待ってて」

「じゃあ、お湯沸かしましょうか?」



冬野さんは、鍵を片手に出て行き、私は勝手知ったる要領で、やかんを手に取り、ウォーターサーバーの水を汲んで、IHのスイッチを入れた。




冬野さん、冷蔵庫に牛乳入れてるかな何て考えながら。



さすがに断りもなく冬野さんの家の冷蔵庫は開けられないやと冬野さんが帰って来るのが先か、お湯が沸くのが先か考えたながら、冬野さんの帰りを待った。

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