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第1章 シンデレラはガラスの靴をk点に向かって全力で投げた
Night Drive×酩酊×命題=眠れない夜<44>
しおりを挟む冬野さんは水を買ってくると車を出ていった。
私は一人車に残って、センちゃんに向けてメッセージをしたためた。
(ごめん。今、気づいた。まだ起きてる? 私、明日は休みだから、話せるよ)
メッセージを送るとすぐ返事があった。
(今日、バーでバイトしてる事が父にバレて、お店に乗り込んで来たんです)
は?
え?
私は頭に盛大にクエスチョンマークを浮かべたまま取り敢えずリプライした。
(バイト禁止だったの?)
まぁ、お酒を提供するところだけど。
冬野さんのところは、ガールズバーでもなければ、クラブでも、スナックでもない落ち着いた飲食店だと思うけどな。
閉店だって、25時は早めだし。
深夜はお客少ないから、夜は遅くても23時にはスタッフを返してるし、特にセンちゃんの事気にしてよっぽど忙しくなければ、22時には上がって貰っていたはずだけどな。
二十歳の大学生ならまぁグレーなバイトだとおもうがお父さん古風なお堅いの人なのかな。
返答に困ったが、何とか文面を作り送信した。
(禁止ではないんですけど、なんと言うか過干渉で、前のコンビニでのバイトではバイト先まで毎回向かえに来ていました。深夜とかじゃない22時までの固定勤務だったんですけど)
コンビニのバイト普通の夜勤でむかえか、羨ましい。
私なんて高校生の時してたバイトだって親は無関心だったし、小学生の時なんて家に帰ってずっと一人で妹の保育園の迎えまで一人でやってたからな。
人それぞれだな。
しみじみしつつ、自然とセンちゃんの携帯の発信ボタンを押していた。
暫くしてセンちゃんに電話が繋がった。
「センちゃん、おうち帰ってないんでしょ。お友達の家に行ってないなら、私のところにおいで」
センちゃんが電話口で話す隙を与えないタイミングで私はそう言いきった。
いつの間にか、冬野さんとが車に戻ってきていて窓を開けた助手席の向こうのすぐ目の前に立っているところに目が合った。
一瞬その場に固まったあと静かに歩きだし、車に乗り込む。
「石崎さんごめんなさい。……私、……行くところなくて」
「どこに居るの?」
「……駅の近くのファミレスに」
私は、センちゃんの居場所を聞き出し、迎えに行くことを伝え電話を終えた。
「石ちゃんって、時々、人が変わるよね」
「へ、人が変わってましたか?」
「うん、そう言うところ、好きだよ。俺は」
何か照れる。
って、ここは照れるところなのだろうか。
そう思って固まる私をよそに、冬野さんは車のエンジンをかけた。
「石ちゃん、明日休みなの? 大丈夫?」
「…あっ休みはもう今日でした。日付変わってる。今日が有給なんです」
「気にするとこがどっかずれてるんだよね。でも、分かった。なんだ有給取ったのね」
言われてみればそうだが、私はこういうところが本当に残念なのである。
「あ、飲み物買って来たから中から好きなの選んで飲んでね」
そう言って冬野さんから車の信号待ちで、さっき停車していたコンビニで買ったのであろう買い物袋を受け取った。
なんかたくさん入っている。
そして重い。
「冬野さん。これ、スポーツドリンクに、レモン水に、炭酸水に、オレンジジュースに、トマトジュースに、アイスコーヒーですか?」
「そうだよ、石ちゃんが何飲みたいか分からなくって」
「え、そんな何でも飲みますよ」
そう言って、私がトマトジュースを選んで封を切るのを見て、冬野さんは今日会って初めて笑った顔を見せてくれた。
「いや全然何でもじゃないよ。絶対、飲まなさそうなの選ぶじゃん。本当、石ちゃんは何考えてるか全く分からない」
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