16 / 507
第1章 シンデレラはガラスの靴をk点に向かって全力で投げた
シュガーレスパレード~甘くない行進~<16>
しおりを挟む「……お疲れ様、ありがと。キヲツケテカエッテネ」
冬野さんが放心しているのが悲しい位分かる。
「ブラッディメアリーとカシスウーロンとファジーネーブル」
「シャンディガフと何かお腹にたまるのない?」
カウンターとテーブル席から無情に寄せられるオーダー。
「……」
それに微動だにしない冬野さん。
面倒な事からは、避ける、逃げる、忘れるのだが、中途半端はきらいである。
私は、冬野さんの前にたち直して冬野さんの顔を覗き込んだ。
「冬野さん」
一瞬の間を要して、はっとする冬野さんに私は更に「今日は金曜日だから、ラストまで居ますから、ブラッディメアリーとファジーネーブルとシャンディガフ作って下さい」と続けて、お腹にたまるフードが欲しいと言う客に具体的にどんなものが食べたいか聞きに行った。
居残ることを決めた私に、冬野さんはこれ以上迷惑かけられないと難色を示した。
でも、また新しいお客さんやオーダーが入ったところで冬野さんは観念した。
ブラッディメアリーに必要不可欠なトマジュースの在庫が切れて急遽買い出しに行かなければならなくなったのも手伝ったのだろう。
その買い物を利用して、お腹にたまる料理に使いたい食材を買うことが出来てラッキーだった。
「お待たせしました。海老のミートソースとクリームのドリアです」
炊きたてのご飯にバターを溶かしてお皿に敷いた上に、千切りオニオンと舞茸にぶつ切り鳥ももも肉を炒めてクリームで煮込んだソースかけて、その上にミートソースを薄く敷いて、その上にチーズをとろけるチーズど粉チーズの順でふる。
すると、とろけるチーズは溶けてトロトロに。
粉チーズはサックリきつね色に香ばしく仕上がる。
焼いて硬くならない様に、最後に茹で海老を散らしたら出来上がり。
「すっごい、こんな海老ドリア。レストランでも見たことないよ」
まだ食べてないのに、良い歳してそうなサラリーマン風の三人組がいそいそとドリアを取り分け始めるのを尻目に隣のグループからも、海老ドリアのオーダーを受けてしまった。
意外と手間のかからないメニューなのだが、材料はせいぜいあと2つ分しかない。
冷凍ご飯を作りたいから多めに炊いて欲しいと言われて多めに炊いて良かった。
時刻は23時を過ぎていた。
閉店まであとひと頑張り。私は、海老ドリアのオーダーに取り掛かった。
「あれ、ポテトサラダがもうない」
私は、ベシャメルソース(クリームソース)を作る手を止めて冷蔵庫にかがむ冬野さんに声をかけた。
「そこの棚に置いてるチップスとコンソメ顆粒をお湯で溶いて、じゃがいもを小さくさいの目に切って2分半レンジでチンしてつぶすと時短になりますよ。後は粒マスタード大目て味付けしたら出来上がり。塩分薄め、辛み強めのポテトサラダ。所要時間は驚異の5分」
「本当?」
「はい。で、良ければですけど。それを適当な大きさに丸めて生ハムで包むと、綺麗な深紅のポテトサラダが出来ます。少しポテト少なめに包んで生ハムの余ったところを織り畳むと薔薇みたいに綺麗になるんですけど」
「石崎さん、大好き」
冷蔵庫を見つめたまま、そう言い放った冬野さんに、私はフライパンを掴み損ねてしまいそうだった。
「は!?」
「……え、今、俺何か言った」
冬野さんは突然立ち上がり、冷蔵庫をしめた。
私は、じわじわと湧いてくる疑念に肩をすくめた。
今、何時もは自分の事、僕って言うのに。
冬野さん、自分の事、俺って言ってた。
気のせいじゃ無いよね。
私の知らない冬野さんを見つけてしまった気がするのと、冗談でも、好きって言われて私は帰ってお祝いしようと心に決めた。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。
どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。
婚約破棄ならぬ許嫁解消。
外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。
※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。
R18はマーク付きのみ。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
溺愛されて育った夫が幼馴染と不倫してるのが分かり愛情がなくなる。さらに相手は妊娠したらしい。
window
恋愛
大恋愛の末に結婚したフレディ王太子殿下とジェシカ公爵令嬢だったがフレディ殿下が幼馴染のマリア伯爵令嬢と不倫をしました。結婚1年目で子供はまだいない。
夫婦の愛をつないできた絆には亀裂が生じるがお互いの両親の説得もあり離婚を思いとどまったジェシカ。しかし元の仲の良い夫婦に戻ることはできないと確信している。
そんな時相手のマリア令嬢が妊娠したことが分かり頭を悩ませていた。
【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる