上 下
13 / 507
第1章 シンデレラはガラスの靴をk点に向かって全力で投げた

シュガーレスパレード~甘くない行進~<13>

しおりを挟む

今、私のお財布には福沢諭吉様がいらっしゃる。



つまり、昨日、私が冬野さんのお店で支払った福沢諭吉様は、私の財布に戻って来てしまったのである。



それはつまり。




「石ちゃん、9時までで良いから。なんか予定ある時はそっち優先で良いからね」



「はい、了解です」




福沢諭吉分、冬野さんのお店で働く事になりました。



うっそ~ん、って感じ。




「一応ね、スタッフを雇ってたんだけど、なぜかみんな長続きしなくて、マキさんがいつも手伝ってくれてたけど、来週一杯旅行で来れなくて。明日には、バイトの面接入っていて。マキさんが旅行に行っている間だけで良いから、手伝ってくれたら嬉しいんだけど」




冬野さんにスタッフ用の制服だと渡された白シャツに黒のパンツに着替え、カフェエプロンを着ながら私は取り合えず店の掃除でも始めようかと腕まくりしながら、話を聞いた。




「あっ、好きなだけこき使って下さい。ちゃんと、働きますから」



「本当、頼もしいよ」



「お店の掃除にテーブルのセッティング。そのあとは、食器の手入れ……ですか?」




私は、カウンターの中から見える食器やスプーンやフォークをまじまじと見た。




「どうしてそう思うの?」



「全部じゃないんですけど、水滴の跡で曇っているのが混じってません?」




私の言葉に、私が見つめる食器に近づき目を凝らす冬野さんは言った。



「え、例えば? どの食器」



私は目について曇った食器とスプーンとフォークを選んでテーブルに置いた。



「えっ、これ、どうしても乾きが悪くて」



「乾きが悪いから、乾燥機があるんですよ。業務用の乾燥機、なんで使わないんですか?」



「少しだったから、ちゃんと清潔な食器拭きで拭いたんだよ」



「濡れた食器はよっぽど熱いお湯で洗うか、ちゃんと自然乾燥させないと曇りが出るんです。スプーンとフォークは食器拭きで拭けない事も無いですけど、摩擦を利用して完全に乾燥させるまで拭かないと水分が残って曇るんですから」



「お客さんに出すものだから、石ちゃんのは正論だ。自分が恥ずかしいよ。なんでそんなに詳しいの?」



「えっ、高校の時、喫茶店でバイトしてたんです。そこのママさんに仕込まれただけです

から」



「えっ、飲食店経験ありってこと?! どれくらい働いてたの?」



「高一の夏休みから卒業まで…です」




冬野さんが私の事、なんか輝く様な目で見ている。



私ごときを、何かむず痒いよ。




「と、とりあえず、食器戻しておきますね。掃除、してきます。表は正面ブロック全部をほうきで掃いて、フロアは掃除機をかけてモップかけて、トイレ掃除の順序で良いですか?」



「え、なんで分かるの」



「今の清掃状態から、大体いつもやっている清掃のルーティンが分かりますから。開店、19時ですよね。無理か、あと30分じゃ」



「大丈夫。今の訂正するけど。フロアのモップ掛けは不要。店の閉店後に、一度、掃除機をかけてモップをかけているから。開店前は、もう一度掃除機をかけるだけで良い。トイレも閉店後に必ず掃除しているから、開店前は喚起だけで良いんだ」



「了解です。取り掛かります」




面倒事は極力避けるが、取り組む作業にはストイックにがモットー。



私は、冬野さんのお店の開店準備に集中した。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。

どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。 婚約破棄ならぬ許嫁解消。 外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。 ※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。 R18はマーク付きのみ。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕

月極まろん
恋愛
 幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

長い片思い

詩織
恋愛
大好きな上司が結婚。 もう私の想いは届かない。 だから私は…

処理中です...