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04 私、我慢の王……?

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 お母様が倒れた後、お父様はオロオロしてるし、メイドAなんて可哀そうな目で見てくる。いや、確かに少し懐かしい感じはしたけど……カイリーンちゃんの記憶が一切無いんだもん。気のせいだって思っちゃうでしょ、普通。そう、だから私は悪くない……と思う。

「急いで、キャスをベッドまで運んでくれ!」

「「かしこまりました」」

 お父様の命令で二人のメイドさんがお母様を運び始めた。一人は脇の下を抱え、もう一人は膝辺りを抱えてる。いや、お母様めちゃめちゃ貴族ですよ?そんな風に運んでいいの?せめて担架とかは……あ、この世界には無いんですね。なるほど、なるほど。それからもうちょっと早く退場しないの?!めっちゃ遅いやん!シュールすぎる絵だよ……。

「……えっさ、ほいっさ……」

 え?わざとですか?まるで重い荷物を運ぶような掛け声をここで聞くとは……。人生は不思議だね。それから!笑ってませんから!うんワラテナイヨ。笑ってるのはお父様です。バレてますよ。

「……」

「……」

 視線と無言、き、気まずい。ゆっくり歩いてたメイドさん達いつの間にか居なくなってるし、だれか何でもいいから私を忘れて話してて。私は今それどころじゃないから。誰かほんと頼む……。もう顔も上げられない状態なの。

「……えー、カイリーン、先ほどはいい冗談だったよ。キャスも面白いぐらいに騙されたよね」

「……」

 私に話を振るな、父よ。

「カイリーン?あれは冗談だったよね……?」

「……」

 だから振るな。今本当にそれどころじゃないんだって。

「カイリーン……?どうして何も言わないんだい?」

「……」

「カイリーン?なんでプルプル震えてるのかな?」

「……」

「誰も怒ってないから、顔を上げて……僕の天使ちゃん」

「……」

「もしかして、反抗期……つ、ついに嫌われ……」

「……レ」

「……はい?」

「トイレ……」

「え?」

「トイレってどこですかぁあああああああ?!」

 本当にもう、限界なんだよ。なんか涙出てくるし、鳥肌ヤバいし。お母様が倒れた辺りから雲行きが怪しかったのに、あんのメイドさん二人のせいで気が緩んでしまった……。空気読んで我慢してたのに……。こちとらとっくに限界突破してたんだよ!ステータス画面とかあったら『長時間トイレを我慢した者』とかっていう称号とか貰えてた。別に要らないけど。

「あ、ああ。廊下の一番奥、右のド――」

「あざっす!!」

「え?」

 天の光が見えたよ。一番奥の右ね。おけおけ。てか歩いた瞬間漏らすとか無いよね?恐る恐る一歩目。……セーフ。このまま早歩きしようと視線を上げた瞬間……

「いや、廊下長すぎじゃろ?!金持ちふざけんな?!トイレが一番奥とか何?!せめて真ん中にしろよ!!てかトイレ増やせよ!!」

 突っ込まずにはいられなかった。一体何百メートルあるんだよ……ここは学校か……。いや家だね。それも私の。いや、引っ越したいです……。業者さんよ、いつでも訪問オッケーだよ。それから無事トイレまでたどり着けた私を誰かほめて……。
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