石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ

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7・実りの聖女と王子の帰還

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―ドンドン!ドンドン!…
「―!―!」
次の日も、さらにその次の日も次の日も、塔の扉のドアは叩かれ、誰かが何か叫んでいる。
「レザール…」
「ロシェ、大丈夫だ」
この塔は魔力で強固にしているとはいえ、怖い。
心細くて、レザールの手を強く握る。
「あと数日もすれば国王や王子たちが帰ってくる。それまでの辛抱だ」
「うん…」
そう。そうよね。
あと数日もすれば…そう思っていた時。
「―!―!」
「!この声は…!」
何と言ってるかは聞こえないけど、外から聞き覚えのある声がした。
この声は―
私は光取りの窓の1つを細く開けて外を見た。
塔の外に立っていたのは
「ソルテール様…!」
金色の豊かな髪をなびかせたもう1人の聖女様がそこにいた。
「ソルテール様ぁっ!」
私は窓から大声で叫ぶ。
私の声が聞こえたソルテール様がこちらに手を振る。
「ロシェさん!大丈夫!?どうしたの、なにがあったの!?」
ソルテール様の後ろには、ヴィペール王子の兄である第一王子ペトル王子もいる。
2人が帰ってきたんだ!

私とレザールはすぐに塔の外に出た。
久し振りの外の空気を味わう前に、困惑した表情のペトル王子に質問される。
「大臣達から、すぐに帰って来るようにと連絡を受けて大急ぎで帰ってきたのだが、俺達がいない間に何があったんだ?」
「それが、ヴィペール王子に幽閉されて―」
「途中で出してやろうとしたのに出てこなかったのはお前らだろうが!」
ペトル王子の隣にいたヴィペール王子が怒鳴る。
すると、レザールが前に出て
「幽閉の直前に、ロシェ様はヴィペール王子に殴られました。
今度はもっとひどい暴力を振るわれるのではないかと心配で、出てこれなかったのです」
「「殴った!?」」
レザールの説明にソルテール様とペトル王子が同時に驚きの声を上げる。
「それは本当なのか?」
「あ、いえ…」
ペトル王子は、モゴモゴと言葉を濁すヴィペール王子から、周りの兵士たちに視線を移した。
「今の話は本当か?」
「…」
答える者はいない。
兵士たちはみんな無言で、気まずそうに視線を逸らす。
その様子から事実を察したペトル王子は苦虫を噛み潰したような顔になった。
「ヴィペール…お前の処遇は、事実確認を行い、父上、母上と話し合った上で決める。それまで城の自室で謹慎とする。そして聖女ロシェ、並びにその従者レザール。お前たちは本日より城に戻るように」
「「はい」」
私とレザールは2人声を合わせて返事した。
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