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6・忌々しい聖女・ヴィペール視点
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クソッ!クソッ!クソッ!
城に帰ってきた俺の怒りは爆発していた。
わざわざこの俺が出向いてやったというのに出てこないなんて。
何様のつもりだ!
塔の入り口の向こうに何か重い物でも置いたようで、内開きの鉄の扉はビクとも動かなかった。
せっかく塔から出してやっても良いと思ったのに!
会議の為に城の一室に集まった大臣達は、どいつもこいつも苦い表情をしている。
「…聖女様は?」
おずおずと大臣の一人が俺に尋ねる。
俺は機嫌の悪さを隠さず答えた。
「出てこなかった。返事さえしなかった。…あの無礼者め!」
俺の答えを聞いて数人の大臣が大きなため息を吐く。
あまつさえ、俺に批判的な視線を向けるものまでいた。
まるで俺が何か失敗をしたかのように。
「なんだ!何か文句があるなら言ってみろ!」
俺に無礼な目線を送った者たちを怒鳴りつける。
すると、大臣達は口を開いた。
「…では申し上げますが、ここ数日城の東側の森に出現するモンスターの数がかなり増えています。
原因は、城を囲む塀に注がれていた地母神様の力が、無くなりかけている事だと思われます。」
「兵士に討伐に行かせるにしても、魔石の魔力注入ができるロシェ様がいないため、全力で戦えません」
「いざという時の為に予備の魔石や特別な武器を保管している部屋も、ロシェ様の力で施錠されているので開けません」
「ぐっ…」
大臣達の言葉に口をつぐむ。
「ヴィペール王子…こうなることは少し考えれば分かったでしょう…。
なぜ、私達に相談することも無く、ロシェ様を幽閉などされたのですか?」
「え…?」
なぜ…?
なぜって・・・・?
実りの聖女のように目に見える成果もないから、いてもいなくても変わらないと思ったから。
幼馴染だからと、トカゲの獣人なんかを従者として城に引き込んだから。
聖女とはいえ、平民のしかも孤児が城に住み着いているから。
兄上の婚約者は公爵令嬢のソルテール嬢なのに、あいつがいるせいで俺は平民なんかと結婚しなくてはならないから。
でもそれは前からそうだったことだ。
数年間、我慢できていたことだ。
なぜいきなり我慢できなくなったんだ?
なぜいきなり怒りが爆発したんだ?
あれ…分からない…。
疑問が浮かんだが、その疑問に向き合う前に再び怒りのマグマに吞み込まれる。
「う…うるさい!黙れ!どうでもいいからもうお前たちでどうにかしろ!俺は塔に出向いてやった!できることはやった!もう知らぬ!」
そう叫んで俺は部屋から飛び出した。
城に帰ってきた俺の怒りは爆発していた。
わざわざこの俺が出向いてやったというのに出てこないなんて。
何様のつもりだ!
塔の入り口の向こうに何か重い物でも置いたようで、内開きの鉄の扉はビクとも動かなかった。
せっかく塔から出してやっても良いと思ったのに!
会議の為に城の一室に集まった大臣達は、どいつもこいつも苦い表情をしている。
「…聖女様は?」
おずおずと大臣の一人が俺に尋ねる。
俺は機嫌の悪さを隠さず答えた。
「出てこなかった。返事さえしなかった。…あの無礼者め!」
俺の答えを聞いて数人の大臣が大きなため息を吐く。
あまつさえ、俺に批判的な視線を向けるものまでいた。
まるで俺が何か失敗をしたかのように。
「なんだ!何か文句があるなら言ってみろ!」
俺に無礼な目線を送った者たちを怒鳴りつける。
すると、大臣達は口を開いた。
「…では申し上げますが、ここ数日城の東側の森に出現するモンスターの数がかなり増えています。
原因は、城を囲む塀に注がれていた地母神様の力が、無くなりかけている事だと思われます。」
「兵士に討伐に行かせるにしても、魔石の魔力注入ができるロシェ様がいないため、全力で戦えません」
「いざという時の為に予備の魔石や特別な武器を保管している部屋も、ロシェ様の力で施錠されているので開けません」
「ぐっ…」
大臣達の言葉に口をつぐむ。
「ヴィペール王子…こうなることは少し考えれば分かったでしょう…。
なぜ、私達に相談することも無く、ロシェ様を幽閉などされたのですか?」
「え…?」
なぜ…?
なぜって・・・・?
実りの聖女のように目に見える成果もないから、いてもいなくても変わらないと思ったから。
幼馴染だからと、トカゲの獣人なんかを従者として城に引き込んだから。
聖女とはいえ、平民のしかも孤児が城に住み着いているから。
兄上の婚約者は公爵令嬢のソルテール嬢なのに、あいつがいるせいで俺は平民なんかと結婚しなくてはならないから。
でもそれは前からそうだったことだ。
数年間、我慢できていたことだ。
なぜいきなり我慢できなくなったんだ?
なぜいきなり怒りが爆発したんだ?
あれ…分からない…。
疑問が浮かんだが、その疑問に向き合う前に再び怒りのマグマに吞み込まれる。
「う…うるさい!黙れ!どうでもいいからもうお前たちでどうにかしろ!俺は塔に出向いてやった!できることはやった!もう知らぬ!」
そう叫んで俺は部屋から飛び出した。
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