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中3・冬・女の子
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受験シーズン。
私は手に持っていたシャーペンをノートの上に転がして体を伸ばした。
甘いものが欲しい。
今日学校帰りに買ったチョコをつまむ。
模試の結果を見る限り、K高には行けそうだ。
でも油断大敵。
さっきまでずっと塾のテキストをやり返していた。
だからさすがに疲れた。
勉強机から立ち上がってベットに転がる。
脳みそを休ませようと、意識してボンヤリしようとした。
でも頭の中では、受験に関する色んな情報が自動的に流れていく。
そういえば。
彼は推薦合格が決まったと噂で聞いた。
羨ましいことだ。
彼とは幼稚園の年少クラス、つまり4才からの幼馴染。
さすがに幼稚園の頃のことはほとんど覚えていない。
幼稚園時代の唯一の思い出は、夏のプールで彼があまりにも水を怖がるから、私がほぼ付きっきりで彼の世話をしたことくらい。
小学校に上がってからは、違うクラスになることも多かったし、お互い同性の友達とつるむようになって、特に思い出という程の思い出も無い。
でも…そうだ、中学1年の冬。
『どうしよう…誰か来ないかな…』
放課後の帰り道。
いつも通りの時間。
いつも通りの道。
いつも通りの下校になると思っていたのに。
いつも通っている道に頻繁に不審者が出没しているという話は聞いていた。
だけど私は今まで出くわしたことが無いから、これからも会うことは無いだろうと思っていた。
なのに
『あの男の人、後ろからついてきてる…?』
閉鎖された廃工場に沿った人のいない道を、少し早足で歩く。
さっきから知らない男の人が一定の距離を保ちながら私についてきている…気がする。
偶然同じ方向に向かっているだけだろうか?
でも男の人から視線を感じる。気のせいだろうか?
この工場沿いの道が終わっても、静かな住宅街で人通りは多くない。
それにこのまま家に帰ったら、私の家の場所を知られてしまう。
どうしよう。
どうしよう。
走ったらダメだろうか?
向こうも走って追いかけてくるだろうか?
気は強い方だと自負している。
それでも怖かった。
そんな時
「ねえ!待って!」
聞き慣れた高い声が後ろから聞こえた。
振り返ると、幼馴染の彼が、私についてきていた…かもしれない男の人のさらに後方から走ってきた。
男の人の横を通り過ぎて、すぐに私の隣まで来た。
息がかなり上がっている。
きっと全力のスピードで走ってきてくれたのだ。
「いっしょに帰ろうよ」
彼は笑顔で私にそう言ってくれた。
私は彼の申し出に勢い良くうなづいた。
…助かった…!
後ろに変な男の人がいても、隣に知り合いがいれば安心だ。
赤い夕焼け空の下2人で帰る。
しばらくして後ろをチラリと見ると、あの男の人はいつの間にかいなくなっていた。
次に隣の彼をチラリと見る。
もしかして…もしかしなくても…変な男の人がいたから、私に声をかけてくれたのだろうか。
今まで私達が一緒に帰った事なんて無かったし…。
彼に聞いて確かめたかったが、なんと言えばいいか分からなくて、グルグルしているうちに、私の家についてしまった。
「じゃあまた明日。学校でね」
「あ、うん…」
「それから…」
微笑んでいた彼がスッと真顔になった。
「あの道、おかしな人がよく出るから、あんまり通らない方がいいよ」
「あ…うん…」
やっぱり。
やっぱり、怪しい男の人がいたから私を助けてくれたのだ。
「じゃあね」
「あ…」
またなんと言えばいいか分からなくて、そのまま彼を見送ってしまった。
『今日はありがとう』
この一言で良かったのに。
あったな…そんなこと…。
忘れかけてた。
なんだか頭も体も妙にカッカと火照っていた。
熱い。
私はベットから起き上がってベランダに出た。
寒い。
だけどこの空気の冷たさが気持ちいい。
胸いっぱいに外の空気を吸って、腕を大きく伸ばして、体の凝りをほぐす。
よし、だいぶ気分がスッキリした。
私はすぐに部屋に戻り、机に座った。
「勉強がんばろう」
小さく声に出して、テキストを再開した。
私は手に持っていたシャーペンをノートの上に転がして体を伸ばした。
甘いものが欲しい。
今日学校帰りに買ったチョコをつまむ。
模試の結果を見る限り、K高には行けそうだ。
でも油断大敵。
さっきまでずっと塾のテキストをやり返していた。
だからさすがに疲れた。
勉強机から立ち上がってベットに転がる。
脳みそを休ませようと、意識してボンヤリしようとした。
でも頭の中では、受験に関する色んな情報が自動的に流れていく。
そういえば。
彼は推薦合格が決まったと噂で聞いた。
羨ましいことだ。
彼とは幼稚園の年少クラス、つまり4才からの幼馴染。
さすがに幼稚園の頃のことはほとんど覚えていない。
幼稚園時代の唯一の思い出は、夏のプールで彼があまりにも水を怖がるから、私がほぼ付きっきりで彼の世話をしたことくらい。
小学校に上がってからは、違うクラスになることも多かったし、お互い同性の友達とつるむようになって、特に思い出という程の思い出も無い。
でも…そうだ、中学1年の冬。
『どうしよう…誰か来ないかな…』
放課後の帰り道。
いつも通りの時間。
いつも通りの道。
いつも通りの下校になると思っていたのに。
いつも通っている道に頻繁に不審者が出没しているという話は聞いていた。
だけど私は今まで出くわしたことが無いから、これからも会うことは無いだろうと思っていた。
なのに
『あの男の人、後ろからついてきてる…?』
閉鎖された廃工場に沿った人のいない道を、少し早足で歩く。
さっきから知らない男の人が一定の距離を保ちながら私についてきている…気がする。
偶然同じ方向に向かっているだけだろうか?
でも男の人から視線を感じる。気のせいだろうか?
この工場沿いの道が終わっても、静かな住宅街で人通りは多くない。
それにこのまま家に帰ったら、私の家の場所を知られてしまう。
どうしよう。
どうしよう。
走ったらダメだろうか?
向こうも走って追いかけてくるだろうか?
気は強い方だと自負している。
それでも怖かった。
そんな時
「ねえ!待って!」
聞き慣れた高い声が後ろから聞こえた。
振り返ると、幼馴染の彼が、私についてきていた…かもしれない男の人のさらに後方から走ってきた。
男の人の横を通り過ぎて、すぐに私の隣まで来た。
息がかなり上がっている。
きっと全力のスピードで走ってきてくれたのだ。
「いっしょに帰ろうよ」
彼は笑顔で私にそう言ってくれた。
私は彼の申し出に勢い良くうなづいた。
…助かった…!
後ろに変な男の人がいても、隣に知り合いがいれば安心だ。
赤い夕焼け空の下2人で帰る。
しばらくして後ろをチラリと見ると、あの男の人はいつの間にかいなくなっていた。
次に隣の彼をチラリと見る。
もしかして…もしかしなくても…変な男の人がいたから、私に声をかけてくれたのだろうか。
今まで私達が一緒に帰った事なんて無かったし…。
彼に聞いて確かめたかったが、なんと言えばいいか分からなくて、グルグルしているうちに、私の家についてしまった。
「じゃあまた明日。学校でね」
「あ、うん…」
「それから…」
微笑んでいた彼がスッと真顔になった。
「あの道、おかしな人がよく出るから、あんまり通らない方がいいよ」
「あ…うん…」
やっぱり。
やっぱり、怪しい男の人がいたから私を助けてくれたのだ。
「じゃあね」
「あ…」
またなんと言えばいいか分からなくて、そのまま彼を見送ってしまった。
『今日はありがとう』
この一言で良かったのに。
あったな…そんなこと…。
忘れかけてた。
なんだか頭も体も妙にカッカと火照っていた。
熱い。
私はベットから起き上がってベランダに出た。
寒い。
だけどこの空気の冷たさが気持ちいい。
胸いっぱいに外の空気を吸って、腕を大きく伸ばして、体の凝りをほぐす。
よし、だいぶ気分がスッキリした。
私はすぐに部屋に戻り、机に座った。
「勉強がんばろう」
小さく声に出して、テキストを再開した。
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