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相談
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あれから数日。
私は自分の薬草園で、数種類の薬草を採取していた。
この薬草は人間用ではなく、虫除け・殺虫の薬草。
私の薬草園が虫に食い荒らされないよう、園をグルリと囲むように植え、魔法で薬効強化し、薬草を守っている。
もちろん薬の材料にもなるので、この薬を調合して虫除け剤や殺虫剤を作るのだ。
これから虫や、虫型モンスターが活発な季節になるし。
数日後に予定されている、林で行われる実習授業に持って行きたい。
委員会を解任されたことで時間もできたので、初挑戦のアイテムも作るつもりだ。
囲いに大きな隙間が空いてしまわないように注意しながら薬草を採取していると、意外な来客があった。
「あら…?」
「お、お久し振りです…」
やって来たのは、私と仲の良かった保健委員会の後輩の女子生徒だった。
「久し振り」
「はい…」
なんだか疲れた顔をしている。
理由は大体見当が付く。
私はレンガの花壇に腰かけた。
後輩にもどこかに座るように促す。
彼女が向かいの花壇に座ったので聞いた。
「委員会で何かあったの?」
「それはもう…」
後輩は、私が解任されてから現在までの委員会について話し始めた。
「…」
聞かされた内容に呆れて絶句してしまった。
後輩の話をまとめると、こうだ。
委員長であるドクトー・ホピタルと、新・副委員長ケリル・ゲリゾンは、保健委員会をメチャクチャにしているらしい。
まず、委員会の管理を放棄している。
そのせいで、どの委員がいつ保健室で働けばいいのか、シフトが作られない。
薬や包帯などの必要物資も補充されていない。
仕方ないから必要な物をリスト化して、注文してくれるようにホピタルに頼んでも、注文してくれない。
しかも、だったら他の委員がシフトを作ったり、注文しようとすると
『僕の仕事を取るな!委員長、副委員長じゃなきゃできない仕事だ!平委員がやっていい権限は無いぞ!』
等と喚いてやらせない。
さらに、委員会費が異常に減ってる。
今月、薬や物資の大量購入は無かったはずなのに。
どう計算しても帳尻が合わない減り方をしている。
その上、あの2人は保健室を自分たちの愛の巣だと勘違いしているらしい。
人目気にせずスキンシップし、やたら2人きりになりたがり、当番の委員を無理に帰らせる。
あまつさえ、やって来た患者に『その程度の怪我で保健室に来るな』とか、『具合が悪いなら、保健室じゃなくて病院に行け』などと言って追い帰したことすらあったそうだ。
…何を言っているのよ…。
普通の学校なら、保健室より病院を勧めることがあるかもしれない。
でもここは魔法学校。
保健委員会は優秀なヒーラーと魔法薬師の集まり。
たいていの怪我や体調不良は委員が治療できてしかるべきなのだ。
だからこそ保健委員は学内で尊敬されるし、委員会費も大金があてがわれる。
それなのに、あのバカは。
委員会の私物化にもほどがある。
大体、イチャイチャしたいなら、寮の自室に行けばいいじゃない。
なんでわざわざ保健室でするのよ。
私は深くため息を吐いた。
後輩も大きなため息を吐く。
彼女は私と同じく薬師で、事務関係のこともよく手伝ってくれていた。
それ故に、現在の委員会の状況がどれほどひどいか人一倍理解でき、誰かにグチを聞いてもらわずにはいられなかったのだろう。
そして私は、聞かされたからには、元・保健委員―いえ、それ以前に薬師として、何かしなくては。
薬は大丈夫。
保健室が薬草不足でも、私の薬草園がある。
「薬は私がなんとかするわ、ここの薬草で」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「えぇ、元々私が委員だった頃にはかなりの量を保健室に持って行ってたし。でも、ホピタルには内緒にしてね」
「もちろんです」
「でも、ガーゼや包帯もなんとかしないとね」
「あ…それについては…」
「どうしたの?」
「昨日さすがに『物資が足りなさ過ぎて仕事にならない』って委員長に私達から訴えたんです。そしたら…」
さすがのホピタルも注文してくれたのかしら。
「『そこまで言うなら、僕とケリルが町まで買いに行ってきてやる!』って言ってました…」
「…」
いや、普通に注文しなさいよ。
絶対にそれ、物資調達にかこつけてケリル・ゲリゾンと町でデートしたいだけじゃない。
あ、そうだ。
「ねえ、ゲリゾンさんといえば、彼女は委員会でどんな感じなの?ホピタルをなだめて、ブレーキになってくれるようにお願いできないかしら?」
「…」
後輩は無言で首を振った。
…そうよね。
人目気にせずスキンシップしてるんですものね。
まともではないでしょうね。
…あの2人のことは後で考えよう。
まず私は大量に薬を作らなければ。
私が育てた薬草は私が調合してこそ100%の力を発揮する。
この仕事は私じゃなきゃできないことだ。
私は後輩との相談を終えると、薬作りに取り掛かった。
私は自分の薬草園で、数種類の薬草を採取していた。
この薬草は人間用ではなく、虫除け・殺虫の薬草。
私の薬草園が虫に食い荒らされないよう、園をグルリと囲むように植え、魔法で薬効強化し、薬草を守っている。
もちろん薬の材料にもなるので、この薬を調合して虫除け剤や殺虫剤を作るのだ。
これから虫や、虫型モンスターが活発な季節になるし。
数日後に予定されている、林で行われる実習授業に持って行きたい。
委員会を解任されたことで時間もできたので、初挑戦のアイテムも作るつもりだ。
囲いに大きな隙間が空いてしまわないように注意しながら薬草を採取していると、意外な来客があった。
「あら…?」
「お、お久し振りです…」
やって来たのは、私と仲の良かった保健委員会の後輩の女子生徒だった。
「久し振り」
「はい…」
なんだか疲れた顔をしている。
理由は大体見当が付く。
私はレンガの花壇に腰かけた。
後輩にもどこかに座るように促す。
彼女が向かいの花壇に座ったので聞いた。
「委員会で何かあったの?」
「それはもう…」
後輩は、私が解任されてから現在までの委員会について話し始めた。
「…」
聞かされた内容に呆れて絶句してしまった。
後輩の話をまとめると、こうだ。
委員長であるドクトー・ホピタルと、新・副委員長ケリル・ゲリゾンは、保健委員会をメチャクチャにしているらしい。
まず、委員会の管理を放棄している。
そのせいで、どの委員がいつ保健室で働けばいいのか、シフトが作られない。
薬や包帯などの必要物資も補充されていない。
仕方ないから必要な物をリスト化して、注文してくれるようにホピタルに頼んでも、注文してくれない。
しかも、だったら他の委員がシフトを作ったり、注文しようとすると
『僕の仕事を取るな!委員長、副委員長じゃなきゃできない仕事だ!平委員がやっていい権限は無いぞ!』
等と喚いてやらせない。
さらに、委員会費が異常に減ってる。
今月、薬や物資の大量購入は無かったはずなのに。
どう計算しても帳尻が合わない減り方をしている。
その上、あの2人は保健室を自分たちの愛の巣だと勘違いしているらしい。
人目気にせずスキンシップし、やたら2人きりになりたがり、当番の委員を無理に帰らせる。
あまつさえ、やって来た患者に『その程度の怪我で保健室に来るな』とか、『具合が悪いなら、保健室じゃなくて病院に行け』などと言って追い帰したことすらあったそうだ。
…何を言っているのよ…。
普通の学校なら、保健室より病院を勧めることがあるかもしれない。
でもここは魔法学校。
保健委員会は優秀なヒーラーと魔法薬師の集まり。
たいていの怪我や体調不良は委員が治療できてしかるべきなのだ。
だからこそ保健委員は学内で尊敬されるし、委員会費も大金があてがわれる。
それなのに、あのバカは。
委員会の私物化にもほどがある。
大体、イチャイチャしたいなら、寮の自室に行けばいいじゃない。
なんでわざわざ保健室でするのよ。
私は深くため息を吐いた。
後輩も大きなため息を吐く。
彼女は私と同じく薬師で、事務関係のこともよく手伝ってくれていた。
それ故に、現在の委員会の状況がどれほどひどいか人一倍理解でき、誰かにグチを聞いてもらわずにはいられなかったのだろう。
そして私は、聞かされたからには、元・保健委員―いえ、それ以前に薬師として、何かしなくては。
薬は大丈夫。
保健室が薬草不足でも、私の薬草園がある。
「薬は私がなんとかするわ、ここの薬草で」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「えぇ、元々私が委員だった頃にはかなりの量を保健室に持って行ってたし。でも、ホピタルには内緒にしてね」
「もちろんです」
「でも、ガーゼや包帯もなんとかしないとね」
「あ…それについては…」
「どうしたの?」
「昨日さすがに『物資が足りなさ過ぎて仕事にならない』って委員長に私達から訴えたんです。そしたら…」
さすがのホピタルも注文してくれたのかしら。
「『そこまで言うなら、僕とケリルが町まで買いに行ってきてやる!』って言ってました…」
「…」
いや、普通に注文しなさいよ。
絶対にそれ、物資調達にかこつけてケリル・ゲリゾンと町でデートしたいだけじゃない。
あ、そうだ。
「ねえ、ゲリゾンさんといえば、彼女は委員会でどんな感じなの?ホピタルをなだめて、ブレーキになってくれるようにお願いできないかしら?」
「…」
後輩は無言で首を振った。
…そうよね。
人目気にせずスキンシップしてるんですものね。
まともではないでしょうね。
…あの2人のことは後で考えよう。
まず私は大量に薬を作らなければ。
私が育てた薬草は私が調合してこそ100%の力を発揮する。
この仕事は私じゃなきゃできないことだ。
私は後輩との相談を終えると、薬作りに取り掛かった。
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