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第二話
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『デンジャー・アヘッド!』は5VS1の非対称型アクションゲームである。
魔王の生み出した空間に迷い込んだ無力な村人五人が逃げ隠れしながら、各エリアの電動機を稼働し脱出装置を出現させる。そうして起動成功し元の世界へ帰るか、その前に魔王によって全滅させられるか……あるいは、魔王を勇者一行の力でやっつけるか、いずれかの形で試合は決着する。
魔王は三キャラクターの内から選べる。
攻撃特化の『破滅の魔王』。
絡め手が得意な『狡知の魔王』。
そして、あらゆる点でバランスのいい『世直しの魔王』。
世直し、と言ってもキャラの思想は過激で、要はこの世の害悪たる人類を殲滅するのが目的である。ほかの魔王も、理由は様々だが人間への悪意に満ちている。
圧倒的魔王の力に村人は基本歯が立たないが、対抗策はある。
一つ目は『職業スキル』。
二つ目は、伝説の勇者一行の魂をその身に宿し戦う、『伝説変身』。
村人の『職業スキル』は全五種類。
一つ。逃走特化の『トランスポーター』系スキル。逃走能力に優れるものが多いが、最近伝説変身時スピード20%アップの壊れスキルがでたため最強カードとなった。
二つ。隠密特化の『プライベートアイ』系スキル。ゲームリリース当初から、開幕魔王の位置を二十秒特定できるやべーやつだったが、最近さらに十秒完全ステルスのスキルが追加されてさらにやばくなった。
三つ。仲間の治療特化の『ドクター』系スキル。最近通常二十秒かかる蘇生を二秒でできるスキルが追加されてやべーやつになった。
四つ。バフ特化『コック』系スキル。最近スピードバフスキルが追加されてやべーやつになった。
五つ。起動特化の『エンジニア』系スキル。脱出装置起動のための電動機を素早く発見、設置できる。最近は設置が早すぎてこいつ一人いるだけでゲームが壊れる。
さすがにスキルの持続タイムやクールタイムはあるが、だいたいそんな感じである。
以上五つに、さらに『伝説変身』の変身先を組み合わせ、無限のやりこみを提供する、というのが多分、運営の当初の構想だったはずだ。
『伝説変身』はマップに散らばる勇者一行の思いを集めることで変身ゲージを溜め、魔王と戦う力を得るシステムのことである。もちろん変身ゲージが切れれば一般村人に戻るので、再度変身したければ再び思いを集めなければならない。
なんだよ『思い』って。
変身先は、勇者・魔法使い・剣士・僧侶・道化、のこれまた五種類。
だがこの分類はスキルほど重要ではない。
というか、今の環境ではほぼ意味がない。
なぜなら――。
「運び屋! 魔王、町エリアに逃げ込んだよ!」
「サンキュー探偵!」
「ってかあいつ空飛ばねえぞ。縛りプレイか?」
「今時期、魔王やってるってことはそういうことでしょ」
「殺せ殺せ殺せ!」
勇者・剣士は近接系。僧侶は広範囲浄化魔法という名の、ふわっとした球状判定の近中距離攻撃系。道化の攻撃は大ダメージの代わりに前スキ後スキが大きく、そもそも当たらない。
となると勝利を目指す村人の選択肢は一つ。
「「「「「伝説変身!」」」」」
長距離ビームの撃てる魔法使い以外、選ぶ理由がない。
そういうわけで黒夫は四方八方から襲い来るぶっといビームから逃げ回っていた。
「どこが無力な村人だクソが!」
しかしこのクソな感覚、間違いない。
間違いなく、ここは『デンアヘ』の世界だ。
「うお!」
己の逃げ足の速さに感嘆する間もなく、ビーム魔法が頬をかすめる。ついでに髪もジュっと焼き払っていく。
その瞬間、冷たい予感が黒夫を襲った。
これはゲームの世界だ。それはわかる。しかし、ゲーム特有の軽さのようなものを黒夫は感じ取れなかった。
端的に言えば、繰り出される攻撃に、命の危機を感じたのだ。
当たれば死ぬ。そう本能が囁く。
囁いたからと言ってどうしようもなく、黒夫は再びチェイスに最適な小高い塔を周り始めた。
伝説変身のゲージ切れを祈りながら。
「なんで五人の村人がいっぺんに変身できるようにしたよ! リンチ起きるってわかるだろうが! それはもう諦めるとしてパーティプレイは禁止にしろ! 村人弱体化しろ! 魔王強化しろ! 同じ練度のやつが集まったら五人が勝つに決まってんだろうが! もうそういうのは全部諦めるとしてせめてチャットはできないようにしろよクソ運営が~~!!」
ついでに叫びながら。
思うにつけ、このゲームは本当に、ほんっとうにクソな要素ばかりだった。
それでも黒夫はこのゲームをやりこんでいた。
しかも、魔王専で。
魔王の生み出した空間に迷い込んだ無力な村人五人が逃げ隠れしながら、各エリアの電動機を稼働し脱出装置を出現させる。そうして起動成功し元の世界へ帰るか、その前に魔王によって全滅させられるか……あるいは、魔王を勇者一行の力でやっつけるか、いずれかの形で試合は決着する。
魔王は三キャラクターの内から選べる。
攻撃特化の『破滅の魔王』。
絡め手が得意な『狡知の魔王』。
そして、あらゆる点でバランスのいい『世直しの魔王』。
世直し、と言ってもキャラの思想は過激で、要はこの世の害悪たる人類を殲滅するのが目的である。ほかの魔王も、理由は様々だが人間への悪意に満ちている。
圧倒的魔王の力に村人は基本歯が立たないが、対抗策はある。
一つ目は『職業スキル』。
二つ目は、伝説の勇者一行の魂をその身に宿し戦う、『伝説変身』。
村人の『職業スキル』は全五種類。
一つ。逃走特化の『トランスポーター』系スキル。逃走能力に優れるものが多いが、最近伝説変身時スピード20%アップの壊れスキルがでたため最強カードとなった。
二つ。隠密特化の『プライベートアイ』系スキル。ゲームリリース当初から、開幕魔王の位置を二十秒特定できるやべーやつだったが、最近さらに十秒完全ステルスのスキルが追加されてさらにやばくなった。
三つ。仲間の治療特化の『ドクター』系スキル。最近通常二十秒かかる蘇生を二秒でできるスキルが追加されてやべーやつになった。
四つ。バフ特化『コック』系スキル。最近スピードバフスキルが追加されてやべーやつになった。
五つ。起動特化の『エンジニア』系スキル。脱出装置起動のための電動機を素早く発見、設置できる。最近は設置が早すぎてこいつ一人いるだけでゲームが壊れる。
さすがにスキルの持続タイムやクールタイムはあるが、だいたいそんな感じである。
以上五つに、さらに『伝説変身』の変身先を組み合わせ、無限のやりこみを提供する、というのが多分、運営の当初の構想だったはずだ。
『伝説変身』はマップに散らばる勇者一行の思いを集めることで変身ゲージを溜め、魔王と戦う力を得るシステムのことである。もちろん変身ゲージが切れれば一般村人に戻るので、再度変身したければ再び思いを集めなければならない。
なんだよ『思い』って。
変身先は、勇者・魔法使い・剣士・僧侶・道化、のこれまた五種類。
だがこの分類はスキルほど重要ではない。
というか、今の環境ではほぼ意味がない。
なぜなら――。
「運び屋! 魔王、町エリアに逃げ込んだよ!」
「サンキュー探偵!」
「ってかあいつ空飛ばねえぞ。縛りプレイか?」
「今時期、魔王やってるってことはそういうことでしょ」
「殺せ殺せ殺せ!」
勇者・剣士は近接系。僧侶は広範囲浄化魔法という名の、ふわっとした球状判定の近中距離攻撃系。道化の攻撃は大ダメージの代わりに前スキ後スキが大きく、そもそも当たらない。
となると勝利を目指す村人の選択肢は一つ。
「「「「「伝説変身!」」」」」
長距離ビームの撃てる魔法使い以外、選ぶ理由がない。
そういうわけで黒夫は四方八方から襲い来るぶっといビームから逃げ回っていた。
「どこが無力な村人だクソが!」
しかしこのクソな感覚、間違いない。
間違いなく、ここは『デンアヘ』の世界だ。
「うお!」
己の逃げ足の速さに感嘆する間もなく、ビーム魔法が頬をかすめる。ついでに髪もジュっと焼き払っていく。
その瞬間、冷たい予感が黒夫を襲った。
これはゲームの世界だ。それはわかる。しかし、ゲーム特有の軽さのようなものを黒夫は感じ取れなかった。
端的に言えば、繰り出される攻撃に、命の危機を感じたのだ。
当たれば死ぬ。そう本能が囁く。
囁いたからと言ってどうしようもなく、黒夫は再びチェイスに最適な小高い塔を周り始めた。
伝説変身のゲージ切れを祈りながら。
「なんで五人の村人がいっぺんに変身できるようにしたよ! リンチ起きるってわかるだろうが! それはもう諦めるとしてパーティプレイは禁止にしろ! 村人弱体化しろ! 魔王強化しろ! 同じ練度のやつが集まったら五人が勝つに決まってんだろうが! もうそういうのは全部諦めるとしてせめてチャットはできないようにしろよクソ運営が~~!!」
ついでに叫びながら。
思うにつけ、このゲームは本当に、ほんっとうにクソな要素ばかりだった。
それでも黒夫はこのゲームをやりこんでいた。
しかも、魔王専で。
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