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第二章【高見沢家】

第一六話

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五〇五部屋に戻るとホッとした一方で、冷たい嫌な感じがする。
かなめを見ていたらひんやりしていた空気が、徐々に温められて部屋全体に広がっていくのを感じた。
私がかなめを見つめているのがバレてしまった。

「どうした。俺なんかしたか?」
「いや何でもないよ」
「そうか」
「かなめが居るとなんか部屋が明るくなったように感じてさ。ただそんなけ」
「オーラ効果のことかな、高見沢の力ってやつ。じっちゃんが言うには、一族に続く力なんだとさ」

かなめはそう言うと、試してみようかと先ほどの霊が居るバスルームへ通じる脱衣所を開けた。
冷蔵庫を開けたように冷たい冷気が、雪崩れ込んでくるのを感じる。
私は怖くなり一歩下がろうとした。

「待って今変えてあげるね」

そう私に笑顔を見せると、部屋に向かって手をかざした。
瞬間、冷蔵庫だった脱衣場がぽかぽかの太陽が射してきたのように温度が変わっていくのがわかる。目を閉じると香ばしく緑にあふれた草原の様のな世界へと変わっていくのがわかった。
私は鳥、鳥になって大空を駆け巡るの。
夢の世界からゆっくりと目を開いたら、さっきと変わらない脱衣場だ。

「これが高見沢のもつ力の一部な」
「すごいね。さっきまでの冷たい感じが無くなっている」

かなめは、脱衣場の扉を閉めると

「この力のせいで、めんどいこともあるんだけどね。そろそろ御飯はまだかいな」

かなめはベッド横の電話でどこかにかけている。

「ちょうどできたって、俺取ってくるなちょっと待っていてくれ、本当にすぐ戻るから」
「うん」

この暖かい空気の中なら怖くない。むしろ心地よくすら感じる。オーラ効果って言ってたわよね。高見沢家っていったい何者なんだろうか。
私はベッドにバサッと横になるとふとそんなことを考えていた。
部屋の扉が開く、かなめかな。

「夕飯を持ってきたぞ」

料理を運ぶワゴンにはおいしそうなオムライスや、ジュージューいっている花丸目玉焼きのハンバーグ、それに特大ビックパフェが乗っていた。
これがそのラブラブカップル特大パフェなのかと思いつつも頼んだ私を後悔した。
そりゃーかなめにも食べてもらわないと、到底無理な量である。

「それからアルミホイル」

ワゴンからアルミホイルを手渡された。

「ねぇーこれをどうるすの?」
「お前は家出人だろうが! 着信見てみろよ」

私は気にしていなかったが、スマホには大量の着信やメール、Limeのメッセージが届いた。

「電元を切ったら、アルミホイルに包んでおけよ。電波が遮断されるから」

私はすぐに電源を切ったのを確認すると、アルミホイルで何重にもグルグル巻きにした。

「こんな感じでいいかな?」
「そんなもんで、おけーなんじゃない」

かなめはその間にワゴンから、ダイニングテーブルに料理を運んでくれていた。
ラブラブカップル特大パフェは一旦冷蔵庫に入れたとのことだ。よく入ったなあのデカいのが……。
私もベッドからぴょんと飛び出ると、自分が頼んだ花丸目玉焼きハンバーグセットへのおかれた席へと向かった。
対面にはかなめが座っている。
故郷で東京行きの切符を買っていた時には、想像もつかない光景なのだ。

「どうした?」
「いや、なんでもない」
「花丸目玉焼きハンバーグは、想像と違っていたか?」
「それ以上だよ。ペレット迄ついてるし、本当にレストランみたい」
「だろ、それがここのもう一つの売りなんだよ。料理が異常にうまい!」

鉄板は熱々で、今でも肉汁があふれんばかりにすでに出ている。

「冷めないうちに、早く食べよ」

二人で手を合わせて

「「いただきます!!」」

早く食べたい気持ちを抑えつつも、オムライスなのにかなめもナイフを持っているのが気になった。

「なんでナイフを持っているの?」
「初めてだもんな、ここのオムライスは、横に切ると、ほら」

半熟のオムレツが上下に割れて赤いケチャップライスを筒積み込んだ。
中からはとろけた卵のほかにチーズが入っていてとてもおいしそう。
かなめは一口食べると

「オムライスでもバカにできないだろ」

そういってきた。私はその様子をかわいく思えてしまい、つい一言言ってしまった。

「私も食べてみたいなぁ」
「いいよ。ほら口開けろ」

かなめは何もためらうことなくオムライスを一口大にスプーンに乗せると、私にスプーンを向けてきた。

「それ、あーん」
「はい、あーん。おいしい!」

一口で分かる半熟卵ととろけたチーズのハーモニー。そしてしっかり炒められた香ばしいケチャップライスの味。しっかりと炒めないとこの香ばしさは出ないのよね。
デリシャス!
ん!? 私ってなに場のノリで、あーんなんてしているのよ。しかも彼の食べていたスプーンじゃないの。初間接キス……。
人生で初めての初めての間接キスだ。
女子間ではあったものの男の人とは、本当に初めてだ。
どうしよう、初めてのキス(間接)を奪われてしまったよ。
お母さん。
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