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第二章【高見沢家】

第一二話

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数ページにわたるメニューを行ったり戻ったりを繰り返しながら、どれにするか迷ってしまう。

「何にする。今日は朱美に助けられたからおごるよ」
「助けたって、私何もしていないよ」

布団の中で丸まっていただけだもん。おごってもらう義理はないわ。そうよそうよ。

「おごってもらう義理は無いし、第一に足手まといになっただけじゃないの」

ガッルルルルルルル。戦闘モード。

「朱美がやつを引き付けてくれたしから、封印に成功したんだ。感謝しているよ。いままで成功した試しが無かったんだからな」

またしてもにっこりスマイル。戦闘モード終了。痺れる。って何心を許しているの私。
落ち着け。どーどーどー……私は馬か!
屈託のないあの笑顔に弱いのよね。
そうじゃないから、おごってもらうことに対してよ。何か企んでたりしないかな? 後で支払えとか。
もしかして体で清算させてもらうとか。ここはラブホテルだしね。
そうよ男なんて、そんなやつばっかりだったしね。
先ほど新幹線でツイートした、ツイツイでの出来事を思い出してしまう。

「まさかと思うけど、後で体で清算しろとか言わないでしょうね」
「ぷっ、あっはははは、それは無いから安心しろってば、ここに入る前に誓っただろ、何もしないって」
「そっそんなの男って直ぐ反故にするじゃんか」
「反故にされたことあるのか?」
「いや別に……特にないかなぁ」

選択ミッシング。私、男子とそんなに仲良くしてないし、変なところで意地張ってしまった。

「なら決まりだな。俺も腹が減ったから何か頼もうかな」

するとかなめは、するりと私の隣に座ってきた。
かなめのメニューを見ている真っ直ぐな瞳は、無邪気で悪気の無いことがわかる。
だ・か・ら、ずるっいてばそいうことするの!
気になっちゃうじゃんてばさ。

「もう何にするのか決めたか?」
「えっ、それはまだ」
「じゃあ俺は、このオムライスにしようかな」
「かわいいなぁ」
「えっ、かわいいか?」

私は両手でつい口を塞ぎ、彼の反対を剥いてしまう。
つい口に出ちゃったじゃないのよ。私のバカバカバカ。
呼吸を整えて向き直す。

「朱美っておもしろいやつだな」
「おもしろいってどういう意味よ」
「そのまんまだって、最初あったときから、泣いて死にそうな顔したかと思ったら、怒ったり、驚いたり、笑ったりしてさ百面相」
「ふん。私、目玉焼き付き花丸ハンバーグにする」
「いいぜ。んじゃ、デザートはどうしますかお嬢様?」

きゃー、お嬢様だって。私初めて人からそんなこと言われたかも。

「頼んでもいいの?」
「もちろんいいぜ、ここの支払いは俺の奢りだし」
「やったねーどれにしようかな」
「そういう、朱美もかわいいやつ……」

彼はそっと目を瞑り私にゆっくりと迫って来る。
ちょっとーーーーーーーー待った。待った。待った。待った。待った。
いきなり、キス。ここでこのタイミングでキスですか?
心臓の音が聞こえんばかりに、鼓動しているのがわかる。
待って私。これは何かの間違いよ。人生でこんな美青年に声かけられたことなしい。告白だってされて

”朱美もかわいいやつ“
”朱美もかわいいやつ……“
”朱美もかわいいやつ…………“

くかぁ、頭から蒸気を拭きだたす私。
頭の中でかなめのセリフが、超無限リピート再生されているし。
さらにせまるかなめは、まるで女の子の様だと思ってしまうほどかわいい。
ファーストキスって、こんな簡単に渡しちゃっていいのかな。
しかもここラブホテルだし、その先も……。
私は覚悟を決めて目を瞑る。
キスってこんな感じで待っていればいいのかな。誰にも教わっていないからわかんないや。
かなめならきっと知ってるだろうから、かなめに任せちゃう。

……。

…………。

……………………。

まだ来ないんですか? こんなに長く待つかものなのかしら。
私は薄目を空けて状況を確かめると顔ではなく、黒いものが見えた。
すると私の肩にこつんとかなめの頭がぶつかった。

「あれっ、あれれっ」
「……すまん、うたた寝をしてしまった」
「いや、いいんです。お疲れな様なので」

そっちかー、うたた寝かよ。驚かせんなよ。本気にしちゃったじゃんか。別の意味でかなめにヤラレタ。
私は一人でのぼせていた事に顔を赤らめた。

「朱美、ちょっと顔が赤くないか」
「いやこれは違うのそのちょっと のぼせただけ」
「のぼせた? どれ」

かなめは、私のおでことおでこをあてて、体温を確かめる。

「熱は、無いようだな」

顔が近いいし、ダメ見ないで、私に目を合わせないで、溶けてしまいそう。

「…………」

もうだめです。私は茹でタコの様に真っ赤に顔を赤く染めあげた。

「やっぱり顔が赤い気がする」
「本当に何でもないの、風邪とか引いてないし、大丈夫だから」
「ならいいけど、デザートは決まった?」
「あぁ、それならこれがいい」

私はのぼせ上った頭で、適当にメニューに指をさした。

「えぇ、まじかよ。それでいいのか?」
「うん、いいよ」

壊れた人形の様に答えた。

「さすがに一人でってことじゃないんだろうから、俺もいただこう! おけっ、注文してくるから待っていろ」

かなめはなぜか、テレなのか明後日の方向を向いて話している。
私はキョトンとなり、我に返り、自分が指をさした商品を確かめた。

”ラブラブカップル特大パフェ ※カップルの熱く火照った体を冷ますのにぴったり!! 決して一人で頼まないでください。空しいだけです。“

何よこれ、まるで私が、かなめとこれをたっ食べたがっているみたいじゃないのよ!
ちょっと待ってよ、あぁ、ダメだすでに電話中だ。
めっちゃ、ラブラブカップル特大パフェとか言ってるし。
とりあえず、今混んでいるから、一時間ほど待って欲しいと言われたそうだ。
ちなみにラブラブカップル特大パフェも一緒に、持ってきてくれるとのことだ。
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