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第一章【出会いと最大の敵】
第一話
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「もう、東京までのチケット買いだけじゃないの! 何迷ってるのよ私!!」
新幹線の切符売り場で、大きなカートを抱えた赤いリボンを付けた前開きセーラー服にローファー姿の女子高生が、一人券売機の前で悩んでいる。
駅の券売機は行列ができるどころか閑散としていた。
新幹線の終点に位置する街だからのせいだろう。
駅前も商業施設が立ち並ぶも、人はまばらだ。
駅構内には、ガラスケースに大きな鬼のお面を付け、藁で覆われた人形が二体飾ってあるが、鬼とはいっても神々の一種である。そんな街で、一人の少女は今日も悩み続けて数一〇〇回。
駅員さんも覚えてしまうほどの回数を券売機前で悩み続けては、勇気の出ない自分を鼓舞しようと奮闘していた。
だが、今日の彼女には強い味方を連れているのだ。手作りぬいぐるみのグリムも一緒にいる。
このグリムは猫型のぬいぐるみで、胸に抱きかかえられるほどのサイズ。女子高生はグリムの手の肉球を画面に押し当てようとしている。
「グリムが押しちゃったら仕方ないよね。 だって私の相棒でありペットなんだし、飼い主としては仕方ないや」
そう言うと、またしても手の肉球をぐいーと券売機のタッチパネルに伸ばす。
だが届いていない。
女子高生は目をつぶり今度こそと手を伸ばす。
──ピッ。カシャカシャ。
『二枚発券します。しばらくお待ちください』
機械音と電子音声が切符の購入を伝えた。
「……本当に買っちゃったよ」
諦めと不安が入り混じった声色には、微弱な震えが混じっていた。
『まもなく一二番線より、こまちニニ号東京行きが発車いたします』
発券されたばかりの乗車券を見ると、“こまちニニ号”と書かれている。
「やばい、乗り遅れちゃう。 グリム行くよ」
自分の生まれ育った街にさよならを告げる余裕すらなく、女子高生は自動改札機をすり抜けるとホームへと駆け下りた。
ホームには赤と白いラインが特徴的な新幹線こまち号が停車している。
乗車番号を確かめながら、大きなカートとグリムを連れて歩くさまは、家出人とは思えないほど背筋を伸ばし、さっきまでは違い生き生きとしていた。
発車ベルが鳴る。この発車ベルは地元アーティスト高橋さんが作曲した“明日はきっといい日になる”という曲だ。
まさに家出の旅立ちにはいい曲である。
発車ベルの終わりに合わせて列車へと乗り込んだ。
──プシュー、パタン。
ドアが閉まると同時に私は窓からホームを眺める。
「さようなら生まれ育った街。私のふるさと、いつか帰ることなんてあるのかな」
そう思いながら、感情に浸る間もなく無情にも列車は動き出す。線路にたまった雪を蹴散らせ目的地の東京へ向けて。
座席に座ると、東京への道中ではどこに泊まるかなどを調べているが、急なこともあり行き先が決まっていない。
調べるとホテルに泊まるにしても、数泊が限度な状況。
座席で絶望を味わっていると、SNSであるツイツイを思い出し、宿泊先希望のツイートを出してみた。
すると勢いよくリプが集まる。ほとんどが男の人ばかりで、卑しさを感じずにはいられない内容ばかり。絶望感が全身を覆う。
この絶望感をなくすため、ツイートを削除した。
削除した理由は、一人だけ心当たりがあったのを思い出したためである。
お菓子屋さんこと“高見沢ひよりさん”であった。ひよりさんとはツイートで盛り上がり、個別に通信できる機能である、ダイレクトメッセージにて本名や細かい住所を交換しのであった。
だが、首の皮一枚で繋がっている状態には変わりはない。
修学旅行のお土産を渡す際に、住所を聞いておいてよかった。
もうひよりさんを頼るしかないことを決意するが、突然押しかけて迷惑にならないだろうか。一抹の不安を感じるが、行ってみるしかない。
とりあえず言ってもいいかのダイレクトメッセージを送ることにした。
新幹線の切符売り場で、大きなカートを抱えた赤いリボンを付けた前開きセーラー服にローファー姿の女子高生が、一人券売機の前で悩んでいる。
駅の券売機は行列ができるどころか閑散としていた。
新幹線の終点に位置する街だからのせいだろう。
駅前も商業施設が立ち並ぶも、人はまばらだ。
駅構内には、ガラスケースに大きな鬼のお面を付け、藁で覆われた人形が二体飾ってあるが、鬼とはいっても神々の一種である。そんな街で、一人の少女は今日も悩み続けて数一〇〇回。
駅員さんも覚えてしまうほどの回数を券売機前で悩み続けては、勇気の出ない自分を鼓舞しようと奮闘していた。
だが、今日の彼女には強い味方を連れているのだ。手作りぬいぐるみのグリムも一緒にいる。
このグリムは猫型のぬいぐるみで、胸に抱きかかえられるほどのサイズ。女子高生はグリムの手の肉球を画面に押し当てようとしている。
「グリムが押しちゃったら仕方ないよね。 だって私の相棒でありペットなんだし、飼い主としては仕方ないや」
そう言うと、またしても手の肉球をぐいーと券売機のタッチパネルに伸ばす。
だが届いていない。
女子高生は目をつぶり今度こそと手を伸ばす。
──ピッ。カシャカシャ。
『二枚発券します。しばらくお待ちください』
機械音と電子音声が切符の購入を伝えた。
「……本当に買っちゃったよ」
諦めと不安が入り混じった声色には、微弱な震えが混じっていた。
『まもなく一二番線より、こまちニニ号東京行きが発車いたします』
発券されたばかりの乗車券を見ると、“こまちニニ号”と書かれている。
「やばい、乗り遅れちゃう。 グリム行くよ」
自分の生まれ育った街にさよならを告げる余裕すらなく、女子高生は自動改札機をすり抜けるとホームへと駆け下りた。
ホームには赤と白いラインが特徴的な新幹線こまち号が停車している。
乗車番号を確かめながら、大きなカートとグリムを連れて歩くさまは、家出人とは思えないほど背筋を伸ばし、さっきまでは違い生き生きとしていた。
発車ベルが鳴る。この発車ベルは地元アーティスト高橋さんが作曲した“明日はきっといい日になる”という曲だ。
まさに家出の旅立ちにはいい曲である。
発車ベルの終わりに合わせて列車へと乗り込んだ。
──プシュー、パタン。
ドアが閉まると同時に私は窓からホームを眺める。
「さようなら生まれ育った街。私のふるさと、いつか帰ることなんてあるのかな」
そう思いながら、感情に浸る間もなく無情にも列車は動き出す。線路にたまった雪を蹴散らせ目的地の東京へ向けて。
座席に座ると、東京への道中ではどこに泊まるかなどを調べているが、急なこともあり行き先が決まっていない。
調べるとホテルに泊まるにしても、数泊が限度な状況。
座席で絶望を味わっていると、SNSであるツイツイを思い出し、宿泊先希望のツイートを出してみた。
すると勢いよくリプが集まる。ほとんどが男の人ばかりで、卑しさを感じずにはいられない内容ばかり。絶望感が全身を覆う。
この絶望感をなくすため、ツイートを削除した。
削除した理由は、一人だけ心当たりがあったのを思い出したためである。
お菓子屋さんこと“高見沢ひよりさん”であった。ひよりさんとはツイートで盛り上がり、個別に通信できる機能である、ダイレクトメッセージにて本名や細かい住所を交換しのであった。
だが、首の皮一枚で繋がっている状態には変わりはない。
修学旅行のお土産を渡す際に、住所を聞いておいてよかった。
もうひよりさんを頼るしかないことを決意するが、突然押しかけて迷惑にならないだろうか。一抹の不安を感じるが、行ってみるしかない。
とりあえず言ってもいいかのダイレクトメッセージを送ることにした。
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