6 / 32
日記(本編)
閑話 ☆
しおりを挟む
あれから数日経った。
あの後、親切な強面紳士さんはボクを家に送り届けると顔を見て少し痛ましそうな顔をした。何でか不思議に思って首を傾げると少し戸惑ってから、『その、涙の跡が…余程辛かったのでしょう?』と心配そうに労わってくれた。
正直、気持ち良すぎて流れた泪だとは口が裂けても言えないので乾いた笑いで誤魔化し、『全然大丈夫です。』と言うしか無かった。
お礼をと言うと偶然同じアパートだったらしく、ついでだから気にしなくて良いと言われた。断られたボクはどうしていいか分からなかったので、『じゃあ何かあれば言ってください。』と言っておいた。
それからは何となく近所の人としての交流がある。何度か朝の出掛けと夜の帰りに遭遇して軽く話す。
帰りに駅でばったり会ってからは行き帰りのどちらかをご一緒することも度々あった。襲われる可能性が減るが致し方ない。
そしてついにコンペが終了した。打ち上げと社員旅行が企画されているのでそれが終われば元の通勤の道に戻る。
(そしたらまたゲイバーにも行って…、前に路地で襲ってきた行き摺りの男に襲われないかな。)
正直最近溜まっている。襲われていないのもそうだが、強面紳士さんが原因だと思う。あの人を見る度、出会う直前に襲われていた事を思い出して腸内が疼いてくる。
とりあえず、今日は打ち上げだ。
企画課のエースとその後輩に当たる同期のおかげで今度仕事を一緒にすることになった別会社と合同で打ち上げすることになった。課長同士も知り合いのようでサクサク話が進み、向こうの会社には庶務係がおらず、ボクが店の手配などを行うことになった。店も抑え、もし店を変えたいと言われても対応出来るよう他に即日予約可能な店を見つけておいた。決定した店を全員に通知したのは2日前。自社の企画課からはボクが担当しているチームのほぼ全員が参加することとなった。やむなく欠席が1人、後は全員参加だ。
その欠席者が企画課の理性を担当している人だから今回こちらの会社にブレーキ役が居ない。
いざとなったらボクがしっかりしなければと気合を入れた。
幹事はボク。合同プロジェクトの会議中、ボクはお茶出しと備品の提供と打ち上げ会場の手配を行っていた。幹事も仕事の内なので、ボクは世話役に徹し、酒には口をつけないつもりだ。皆を無事に送り届けなければならない。
店に全員揃ったのを確認したので課長達に合図を送る。進行は仲のいい課長達に任せた。
全員がワイワイと飲む中、ボクは注文を聞いて周り、店員さんに料理やお酒を頼む。
「大変そうっすね。」
「いえいえ、これも仕事ですから。」
「接待ってやつですか?」
「違いますよ、会社の方針ですね。社員が問題を起こさないように気を回してるんです。」
「あー、なるほど。」
少し話すと店員さんは注文を伝えに行った。ようやく一息ついていると、おそらくあちらの係長だと思われる細身で眼鏡の男性が話しかけてきた。
「君は飲まないのか?」
そう言いながらジロジロと観察され居心地が悪い。当たり障りなく、社の方針ですので、と断り課長達に呼ばれたのでそちらへ移動する。係長さんも着いてきたが気にせず用件を聞いた。
「この飲み会が終わった後、私達に付き合ってくれ。」
「そっちにいるうちの係長も連れていくが良いか?」
「ああ。私は構わないよ。」
「承知しました。」
うちの係長が居ないのは今日、欠席したからだろう。何処に行くのか決めているようなので手配しなくて良いのは助かる。
全員を送り出し、課長達に着いて行く。どうやらあちらの係長は飲んでいなかったようで彼が運転するみたいだ。
あちらの課長さんとうちの課長は後部座席でこれから行く課長さんの自宅にあるコレクションについて話しているみたいだった。聞いている限り芸術品らしい。フォルムが美しく、お気に入りが幾つかあるので見せたい。というようなことを話していた。
あの後、親切な強面紳士さんはボクを家に送り届けると顔を見て少し痛ましそうな顔をした。何でか不思議に思って首を傾げると少し戸惑ってから、『その、涙の跡が…余程辛かったのでしょう?』と心配そうに労わってくれた。
正直、気持ち良すぎて流れた泪だとは口が裂けても言えないので乾いた笑いで誤魔化し、『全然大丈夫です。』と言うしか無かった。
お礼をと言うと偶然同じアパートだったらしく、ついでだから気にしなくて良いと言われた。断られたボクはどうしていいか分からなかったので、『じゃあ何かあれば言ってください。』と言っておいた。
それからは何となく近所の人としての交流がある。何度か朝の出掛けと夜の帰りに遭遇して軽く話す。
帰りに駅でばったり会ってからは行き帰りのどちらかをご一緒することも度々あった。襲われる可能性が減るが致し方ない。
そしてついにコンペが終了した。打ち上げと社員旅行が企画されているのでそれが終われば元の通勤の道に戻る。
(そしたらまたゲイバーにも行って…、前に路地で襲ってきた行き摺りの男に襲われないかな。)
正直最近溜まっている。襲われていないのもそうだが、強面紳士さんが原因だと思う。あの人を見る度、出会う直前に襲われていた事を思い出して腸内が疼いてくる。
とりあえず、今日は打ち上げだ。
企画課のエースとその後輩に当たる同期のおかげで今度仕事を一緒にすることになった別会社と合同で打ち上げすることになった。課長同士も知り合いのようでサクサク話が進み、向こうの会社には庶務係がおらず、ボクが店の手配などを行うことになった。店も抑え、もし店を変えたいと言われても対応出来るよう他に即日予約可能な店を見つけておいた。決定した店を全員に通知したのは2日前。自社の企画課からはボクが担当しているチームのほぼ全員が参加することとなった。やむなく欠席が1人、後は全員参加だ。
その欠席者が企画課の理性を担当している人だから今回こちらの会社にブレーキ役が居ない。
いざとなったらボクがしっかりしなければと気合を入れた。
幹事はボク。合同プロジェクトの会議中、ボクはお茶出しと備品の提供と打ち上げ会場の手配を行っていた。幹事も仕事の内なので、ボクは世話役に徹し、酒には口をつけないつもりだ。皆を無事に送り届けなければならない。
店に全員揃ったのを確認したので課長達に合図を送る。進行は仲のいい課長達に任せた。
全員がワイワイと飲む中、ボクは注文を聞いて周り、店員さんに料理やお酒を頼む。
「大変そうっすね。」
「いえいえ、これも仕事ですから。」
「接待ってやつですか?」
「違いますよ、会社の方針ですね。社員が問題を起こさないように気を回してるんです。」
「あー、なるほど。」
少し話すと店員さんは注文を伝えに行った。ようやく一息ついていると、おそらくあちらの係長だと思われる細身で眼鏡の男性が話しかけてきた。
「君は飲まないのか?」
そう言いながらジロジロと観察され居心地が悪い。当たり障りなく、社の方針ですので、と断り課長達に呼ばれたのでそちらへ移動する。係長さんも着いてきたが気にせず用件を聞いた。
「この飲み会が終わった後、私達に付き合ってくれ。」
「そっちにいるうちの係長も連れていくが良いか?」
「ああ。私は構わないよ。」
「承知しました。」
うちの係長が居ないのは今日、欠席したからだろう。何処に行くのか決めているようなので手配しなくて良いのは助かる。
全員を送り出し、課長達に着いて行く。どうやらあちらの係長は飲んでいなかったようで彼が運転するみたいだ。
あちらの課長さんとうちの課長は後部座席でこれから行く課長さんの自宅にあるコレクションについて話しているみたいだった。聞いている限り芸術品らしい。フォルムが美しく、お気に入りが幾つかあるので見せたい。というようなことを話していた。
10
お気に入りに追加
388
あなたにおすすめの小説


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる