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第2章 覚悟と旅立ち
更なるレベル上げ #2
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素直なはずなのに少し痛い所を突かれると相手を威嚇し攻撃してしまう。ラッセルは自尊心が高く、臆病な部分も持っている。だから傷付けられそうだと思った途端に虚勢を張ってしまうのだろう。
注意や助言は攻撃ではないと分かってくれれば、人を攻撃すればその分自分に返ってくることが分かれば、素直な所を尊重すれば、或いは、感情の起伏が激しくてもあそこまで誰彼構わず揉めることも無くなるのかもしれない。
『アイツらの貸切って…そんなの他の道場生から苦情が来ないか?俺は注意しただけだよ。なのに突っかかってきて腹が立ってさ。俺はアイツとは合わないんだろ。』
道場の師範が貸切を敢行することは珍しい。通常であれば、他の道場生やその保護者から苦情、若しくは、自分も貸切をしたいと要望が来ることになり、正当な理由があったとしてもどこか不満が残ってしまうため行わない。
しかし今回は特殊だった。
クリードによると、道場生と揉めたヤツをそのままにしてはおけないと、モーリスがこってり搾ることにしたらしい。
『マンツーマン指導だ。他に参加したいやつは?』とモーリスが道場生に聞くと皆は遠慮したという。
とにかく厳しい指導だと皆分かっていてモーリスにラッセルが搾られることに納得した形だ。だからこそ文句など出なかったのだとか。
『クロトの言うところのドンマイってやつだね。』
アキリムが楽しそうに言った。そのおかげで少しピリついていた空気が弛緩した。クロトやニーナ、ジャックも『確かにドンマイ。』『そうね。』『だな。』と軽く笑った。
『ドンマイって何だ?最近ギルレイが使うんだが聞いても教えてくれないんだ。』
クリードが思い出したように言い、クロトが答えた。初めてみんなの前でドンマイと言い、詳しく聞かれた時と同じように教えた。
『俺の居た世界の言葉で、語源の意味は確か気にすんなってことなんだ。けど、俺の居た場所では、気にすんなの他に、諦めろとか、受け入れろとか、自業自得だとか、同情するよとかっていろんな意味で多用してたな。』
クリードは『なるほど、だから取り調べの前後に言われたんだな。』と納得していた。
『あたしはやっぱ自力で覚えるしかないのかな?』
ニーナが話を戻すとクリードが代案についてメリットとデメリットを考えながら話し始めた。
『それなんだが、いくつか選択肢を用意した。まず、1つ目。別の道場を紹介する。メリットは波風が立たない。モーリスよりは優しい。デメリットはモーリスよりは取得に時間がかかることだな。次に、2つ目。俺が教える。メリットは取得にかかる時間が多分モーリスより早い。デメリットは俺自体が時間をあまり取れない分、厳しくなる。目立つ。波風が立つ可能性がある。そして、3つ目。俺かリミルかギルレイの知り合いの冒険者に教えてもらう。メリットは依頼と並行できる。波風が立たない。その冒険者との縁故ができる。デメリットは教え慣れていない分時間がかかる可能性が高い。相手に寄っては見返りを要求される。それから…。』
3つ目までスラスラと言っていたクリードが言葉を区切りチラリとリミルを見てフッと笑い、ニーナに視線を戻して続けた。
『4つ目。リミルに教えてもらう。本人は取得の記憶が曖昧みたいだけどな、レベル上げの方法が分かるってことは一応必要になる基礎は分かってるって事だろ?メリットはそのままレベル上げに移行できる。指導料を払わなくて済む。保護者だから安心。デメリットは取得出来るか一抹の不安が残る。だが、これは道場以外の全員に当てはまる。教えるのを仕事にしている人が1番安心だ。最後に、5つ目。自力でやる。メリットは自立の1歩。デメリットは失敗の可能性が大きくなる。時間がかかる。間違いを正してくれる人が居ない。危険も多くなる。だから自力はオススメはしない。』
ニーナは暫く考えてリミルに教えてもらうことにした。リミルは驚き、クリードは射抜くような目でニーナを見た。
『何故リミルを選んだか参考までに教えてくれるか?』
『リミル君の直感を信じようかなと思って。職業改変を勧めてくれたってことは向いてると思ったからでしょ?それに覚えていないのに取れたってことはリミル君の習性とかが合ってたってことなんだから条件と照らし合わせながらリミル君を観察して真似すれば取得できそうだし。直ぐにレベル上げに移行できるのもいいよね。』
『そうか。何となくって言ってたらもう少し考えさせようと思ったが、そこまで考えて決めたなら良しとするか。』
ニーナはホッとし、リリアンがクスクスと笑い出す。不思議に思って皆一斉にリリアンを見た。
『元からリミルちゃんを勧めてたんじゃない?』
『まあな。でも一応、別の道場もオススメだった。もし冒険者を選んでいてもなるべく条件の良い奴を探して勧めたしな。1番無かった選択肢は俺か一人でやるかだな。』
リミルは自分が選択肢に上がった時点でもしや?とは思っていた。ニーナが実際選ぶとは思わなかっただけで。
リリアンは嬉しそうに笑ってクリードとリミルを交互に見ていた。
注意や助言は攻撃ではないと分かってくれれば、人を攻撃すればその分自分に返ってくることが分かれば、素直な所を尊重すれば、或いは、感情の起伏が激しくてもあそこまで誰彼構わず揉めることも無くなるのかもしれない。
『アイツらの貸切って…そんなの他の道場生から苦情が来ないか?俺は注意しただけだよ。なのに突っかかってきて腹が立ってさ。俺はアイツとは合わないんだろ。』
道場の師範が貸切を敢行することは珍しい。通常であれば、他の道場生やその保護者から苦情、若しくは、自分も貸切をしたいと要望が来ることになり、正当な理由があったとしてもどこか不満が残ってしまうため行わない。
しかし今回は特殊だった。
クリードによると、道場生と揉めたヤツをそのままにしてはおけないと、モーリスがこってり搾ることにしたらしい。
『マンツーマン指導だ。他に参加したいやつは?』とモーリスが道場生に聞くと皆は遠慮したという。
とにかく厳しい指導だと皆分かっていてモーリスにラッセルが搾られることに納得した形だ。だからこそ文句など出なかったのだとか。
『クロトの言うところのドンマイってやつだね。』
アキリムが楽しそうに言った。そのおかげで少しピリついていた空気が弛緩した。クロトやニーナ、ジャックも『確かにドンマイ。』『そうね。』『だな。』と軽く笑った。
『ドンマイって何だ?最近ギルレイが使うんだが聞いても教えてくれないんだ。』
クリードが思い出したように言い、クロトが答えた。初めてみんなの前でドンマイと言い、詳しく聞かれた時と同じように教えた。
『俺の居た世界の言葉で、語源の意味は確か気にすんなってことなんだ。けど、俺の居た場所では、気にすんなの他に、諦めろとか、受け入れろとか、自業自得だとか、同情するよとかっていろんな意味で多用してたな。』
クリードは『なるほど、だから取り調べの前後に言われたんだな。』と納得していた。
『あたしはやっぱ自力で覚えるしかないのかな?』
ニーナが話を戻すとクリードが代案についてメリットとデメリットを考えながら話し始めた。
『それなんだが、いくつか選択肢を用意した。まず、1つ目。別の道場を紹介する。メリットは波風が立たない。モーリスよりは優しい。デメリットはモーリスよりは取得に時間がかかることだな。次に、2つ目。俺が教える。メリットは取得にかかる時間が多分モーリスより早い。デメリットは俺自体が時間をあまり取れない分、厳しくなる。目立つ。波風が立つ可能性がある。そして、3つ目。俺かリミルかギルレイの知り合いの冒険者に教えてもらう。メリットは依頼と並行できる。波風が立たない。その冒険者との縁故ができる。デメリットは教え慣れていない分時間がかかる可能性が高い。相手に寄っては見返りを要求される。それから…。』
3つ目までスラスラと言っていたクリードが言葉を区切りチラリとリミルを見てフッと笑い、ニーナに視線を戻して続けた。
『4つ目。リミルに教えてもらう。本人は取得の記憶が曖昧みたいだけどな、レベル上げの方法が分かるってことは一応必要になる基礎は分かってるって事だろ?メリットはそのままレベル上げに移行できる。指導料を払わなくて済む。保護者だから安心。デメリットは取得出来るか一抹の不安が残る。だが、これは道場以外の全員に当てはまる。教えるのを仕事にしている人が1番安心だ。最後に、5つ目。自力でやる。メリットは自立の1歩。デメリットは失敗の可能性が大きくなる。時間がかかる。間違いを正してくれる人が居ない。危険も多くなる。だから自力はオススメはしない。』
ニーナは暫く考えてリミルに教えてもらうことにした。リミルは驚き、クリードは射抜くような目でニーナを見た。
『何故リミルを選んだか参考までに教えてくれるか?』
『リミル君の直感を信じようかなと思って。職業改変を勧めてくれたってことは向いてると思ったからでしょ?それに覚えていないのに取れたってことはリミル君の習性とかが合ってたってことなんだから条件と照らし合わせながらリミル君を観察して真似すれば取得できそうだし。直ぐにレベル上げに移行できるのもいいよね。』
『そうか。何となくって言ってたらもう少し考えさせようと思ったが、そこまで考えて決めたなら良しとするか。』
ニーナはホッとし、リリアンがクスクスと笑い出す。不思議に思って皆一斉にリリアンを見た。
『元からリミルちゃんを勧めてたんじゃない?』
『まあな。でも一応、別の道場もオススメだった。もし冒険者を選んでいてもなるべく条件の良い奴を探して勧めたしな。1番無かった選択肢は俺か一人でやるかだな。』
リミルは自分が選択肢に上がった時点でもしや?とは思っていた。ニーナが実際選ぶとは思わなかっただけで。
リリアンは嬉しそうに笑ってクリードとリミルを交互に見ていた。
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