稀有ってホメてる?

紙吹雪

文字の大きさ
上 下
86 / 96
第2章 覚悟と旅立ち

更なるレベル上げ #2

しおりを挟む
 素直なはずなのに少し痛い所を突かれると相手を威嚇し攻撃してしまう。ラッセルは自尊心が高く、臆病な部分も持っている。だから傷付けられそうだと思った途端に虚勢を張ってしまうのだろう。
 注意や助言は攻撃ではないと分かってくれれば、人を攻撃すればその分自分に返ってくることが分かれば、素直な所を尊重すれば、或いは、感情の起伏が激しくてもあそこまで誰彼構わず揉めることも無くなるのかもしれない。

『アイツらの貸切って…そんなの他の道場生から苦情が来ないか?俺は注意しただけだよ。なのに突っかかってきて腹が立ってさ。俺はアイツとは合わないんだろ。』

 道場の師範が貸切を敢行することは珍しい。通常であれば、他の道場生やその保護者から苦情、若しくは、自分も貸切をしたいと要望が来ることになり、正当な理由があったとしてもどこか不満が残ってしまうため行わない。


 しかし今回は特殊だった。


 クリードによると、道場生と揉めたヤツをそのままにしてはおけないと、モーリスがこってり搾ることにしたらしい。
 『マンツーマン指導だ。他に参加したいやつは?』とモーリスが道場生に聞くと皆は遠慮したという。
 とにかく厳しい指導だと皆分かっていてモーリスにラッセルが搾られることに納得した形だ。だからこそ文句など出なかったのだとか。

『クロトの言うところのドンマイってやつだね。』

 アキリムが楽しそうに言った。そのおかげで少しピリついていた空気が弛緩した。クロトやニーナ、ジャックも『確かにドンマイ。』『そうね。』『だな。』と軽く笑った。

『ドンマイって何だ?最近ギルレイが使うんだが聞いても教えてくれないんだ。』

 クリードが思い出したように言い、クロトが答えた。初めてみんなの前でドンマイと言い、詳しく聞かれた時と同じように教えた。

『俺の居た世界の言葉で、語源の意味は確か気にすんなってことなんだ。けど、俺の居た場所では、気にすんなの他に、諦めろとか、受け入れろとか、自業自得だとか、同情するよとかっていろんな意味で多用してたな。』

 クリードは『なるほど、だから取り調べの前後に言われたんだな。』と納得していた。



『あたしはやっぱ自力で覚えるしかないのかな?』

 ニーナが話を戻すとクリードが代案についてメリットとデメリットを考えながら話し始めた。

『それなんだが、いくつか選択肢を用意した。まず、1つ目。別の道場を紹介する。メリットは波風が立たない。モーリスよりは優しい。デメリットはモーリスよりは取得に時間がかかることだな。次に、2つ目。俺が教える。メリットは取得にかかる時間が多分モーリスより早い。デメリットは俺自体が時間をあまり取れない分、厳しくなる。目立つ。波風が立つ可能性がある。そして、3つ目。俺かリミルかギルレイの知り合いの冒険者プレイヤーに教えてもらう。メリットは依頼と並行できる。波風が立たない。その冒険者との縁故ラポァができる。デメリットは教え慣れていない分時間がかかる可能性が高い。相手に寄っては見返りを要求される。それから…。』

 3つ目までスラスラと言っていたクリードが言葉を区切りチラリとリミルを見てフッと笑い、ニーナに視線を戻して続けた。

『4つ目。リミルに教えてもらう。本人は取得の記憶が曖昧みたいだけどな、レベル上げの方法が分かるってことは一応必要になる基礎は分かってるって事だろ?メリットはそのままレベル上げに移行できる。指導料を払わなくて済む。保護者だから安心。デメリットは取得出来るか一抹の不安が残る。だが、これは道場以外の全員に当てはまる。教えるのを仕事にしている人が1番安心だ。最後に、5つ目。自力でやる。メリットは自立の1歩。デメリットは失敗の可能性が大きくなる。時間がかかる。間違いを正してくれる人が居ない。危険も多くなる。だから自力はオススメはしない。』


 ニーナは暫く考えてリミルに教えてもらうことにした。リミルは驚き、クリードは射抜くような目でニーナを見た。

『何故リミルを選んだか参考までに教えてくれるか?』

『リミル君の直感を信じようかなと思って。職業改変クラスチェンジを勧めてくれたってことは向いてると思ったからでしょ?それに覚えていないのに取れたってことはリミル君の習性とかが合ってたってことなんだから条件と照らし合わせながらリミル君を観察して真似すれば取得できそうだし。直ぐにレベル上げに移行できるのもいいよね。』

『そうか。何となくって言ってたらもう少し考えさせようと思ったが、そこまで考えて決めたなら良しとするか。』

 ニーナはホッとし、リリアンがクスクスと笑い出す。不思議に思って皆一斉にリリアンを見た。

『元からリミルちゃんを勧めてたんじゃない?』

『まあな。でも一応、別の道場もオススメだった。もし冒険者を選んでいてもなるべく条件の良い奴を探して勧めたしな。1番無かった選択肢は俺か一人でやるかだな。』

 リミルは自分が選択肢に上がった時点でもしや?とは思っていた。ニーナが実際選ぶとは思わなかっただけで。
 リリアンは嬉しそうに笑ってクリードとリミルを交互に見ていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~

鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合 戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる 事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊 中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。 終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人 小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である 劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。 しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。 上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。 ゆえに彼らは最前線に配備された しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。 しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。 瀬能が死を迎えるとき とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった

底辺男のミセカタ 〜ゴミスキルのせいで蔑まれていた俺はスキル『反射』を手に入れて憎い奴らに魅せつける〜

筋肉重太郎
ファンタジー
俺は……最底辺だ。 2040年、世界に突如として、スキル、と呼ばれる能力が発現する。 どんどん良くなっていく生活。 いくつもの世界問題の改善。 世界は更により良くなっていく………はずだった。 主人公 田中伸太はスキルを"一応"持っている一般人……いや、底辺男であった。 運動も勉学も平均以下、スキルすら弱過ぎるものであった。平均以上にできると言ったらゲームぐらいのものである。 だが、周りは違った。 周りから尊敬の眼差しを受け続ける幼馴染、その周りにいる"勝ち組"と言える奴ら。 なんで俺だけ強くなれない………… なんで俺だけ頭が良くなれない………… 周りからは、無能力者なんて言う不名誉なあだ名もつけられ、昔から目立ちたがりだった伸太はどんどん卑屈になっていく。 友達も増えて、さらに強くなっていく幼馴染に強い劣等感も覚え、いじめまで出始めたその時、伸太の心に1つの感情が芽生える。 それは…… 復讐心。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...