稀有ってホメてる?

紙吹雪

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第1章 出会い

レベル上げ #3

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まず、跳びかかっていったテラビーの蹴りをアキリムが盾で防いだ。テラビーは盾を蹴って後ろに跳び地面に着地する。
着地を狙ってニーナが矢を放つが尻尾でバランスを取ったのか足を掠めただけだった。そこに透かさずクロトが投げナイフを投擲した事でテラビーの恐らく脇腹に命中し、よろけた所をアキリムが斧でトドメを刺した。

「何その見事な連携。練習してたのか?そんな暇なかったよな?」

『3人ともそれぞれの戦い方を試験で見てたから知ってて、それで昨日一緒に戦うとしたらって話してたの』

『こんなに上手くいくとは思って無かったけどなー』

『成功して良かった。僕が最初に攻撃防げなかっから失敗だったから緊張した』

ニーナは得意げにでも嬉しそうに喜んでいて、クロトはまさかと驚いていて、アキリムはホッとした様子で三者三様な反応に何だか気が抜けたがとりあえず移動を再開する。

途中にあるせせらぎ川辺りで銀狼と黒狼に出会ったがクライといたのを覚えていたこともあり一瞥くれただけだった。魔物ではないので仕掛けない限り襲っては来ないとは思うが武器を持っていると警戒はされる。
リミルは手を振った。
3人が呑気に仲良いの?と聞いてくるので森での魔獣との接し方について教えることにした。

「クライと居たのを覚えていてくれたみたいで今回はチラッと見られただけだったが魔獣たちも警戒はする。武器を持ってると特に。でも持たずに森に入るのは危険だ。だから魔獣相手には武器に手をかけないよう気をつけろ。血の気の多い種族でない限りは警戒しつつ離れていくはずだ。」

『じゃあ今回はクライのおかげで警戒されずにすんだってことか?』

理解したようなので先を急ぐ。
走るスピードがそれぞれ違うので1番遅いアキリムに合わせる。
野伏レンジャーということもあってかニーナは比較的早いし足音が静かだ。
リミルからしたら目立つ足音だがクロトやアキリムに比べれば断然静かである。
アキリムは鎧の擦れる音もあってガチャガチャとうるさいが前衛なので仕方ない。
クロトは普通の人のそれだ。


ギルレイやクライと移動した時の5倍程の時間がかかって漸く花畑に着いた。

移動が遅い分、魔物との遭遇も多く、戦闘経験を積ませるために倒せそうな相手を任せるとどうしても時間がかかってしまった。
1度目は連携が上手くいったがその後はなかなかそうはいかなかった。
川からすぐの所に50レベルのテラビーをリーダーとする群れが居て数も多くレベルもバラバラだった。
35以上のレベルはまだ相手にさせられないのでリミルがサクッと倒してしまった。
34のテラビーと31のソラビーという爪が発達したテラビーの親近種を確保しておいて30以下を数匹ずつ相手させ、3人の手に余る敵はリミルが片付けた。

長刀を振ればキラキラと消えてしまう。
レベル差は暴力的なまでに顕著に現れる。
ただそれに絶望する人族はいない。
才能の有無は確実に存在するが努力すればどんな職にも就ける世界だ。
選択出来ないのは唯一神格だけだ。
だからこそアキリムもニーナもリミルを尊敬し自分もと意気込む。
クロトは1歩引いたように驚くだけだった。

そんな3人の反応は気にせず、リミルは先程3人が余裕をもって倒せたテラビーから放つ。
テラビーは蹴りをクロトに入れようとして飛びかかるがアキリムの盾に防がれる。しかし後ろに飛び退くと同時に長い尻尾でアキリムに一撃を繰り出しアキリムが横に弾かれた。ニーナもクロトも慌てたが一応駆け寄らずに攻撃している。矢と投げナイフで応戦するが飛びかかられたのは流石に危険と判断してリミルが斬り捨てた。
 アキリムにポーションを渡して回復させ、万全の状態にしてから次はソラビーを相手にさせた。しかし、ソラビーはテラビーよりも素早く、なかなか苦労していた。先程のような油断はなくなったが、素早い動きに矢や投擲は熟練度というか、レベルが低いために当たらない。アキリムの斧も隙がないので叩き込めない。もし隙が無い状態で攻撃すれば、まだ熟練度が低いため、弾かれたり避けられたりした時に対処しきれず、硬直する時間が長くなり、逆にアキリムの隙となってしまう。
一進一退の攻防に危険と判断してリミルが屠る。

『まだ戦えたのに。』

「一進一退じゃ新手が出てきてもおかしくないから。もし俺が余裕で倒せないやつが出てきたらどうするんだよ。戦うのでいっぱいいっぱいになったら守ってやれないんだ。それにそいつが1匹とは限らない。ここは森だ。安全な街とは違う。もう少し慎重に考えてくれ。」

リミルが索敵しながらなので突然の遭遇は有り得ないが索敵に強敵が引っかかった瞬間に逃げられるようにしておきたい。隠密行動が取れないのが2人もいるのだ。早目に対策するに越したことはない。もし連れているのがニーナだけなら今よりはもう少し余裕はあるかもしれないが。


そんなこんなで漸く花畑に到着したという訳だ。

『わぁ…綺麗…』

『花畑のなかに立つ立派な桜…実際に見ると綺麗だな…』

『あの木、サクラって言うのか。ピンクの葉を付ける木なんて初めて見た。』

『俺がいた所では桜って言うんだ。ピンクの葉じゃなくて花な。あれもそうか分からないけど桜に似てる。』

「俺は夢の木と呼んでる。実際鑑定してもそう出るだろ?それとあの木は葉も花も薄いピンクだ。」

リミルがそういうと3人とも鑑定したようで『夢の木』『ホントだ』と言っている。

『魔木って魔物ってこと?それにリミルが命名って名付け親なの?』

魔木なのはダンジョンの入口になっている時点で仕方ない気もするし、動けないし襲って来ないので無害だと伝えた。

「それに夢の木の近くで寝ると安眠出来るんだ。だから夢の木。物心着いた頃、1人だったからな。この木の近くで寝る時だけ安心できた。だから俺にとってこの場所は特別なんだ。荒らすなよ?」

しんみりした空気に最後は巫山戯てしまった。だが、3人ともそんな事しないよと言ってくれた。


ギルレイから連絡が来たので一旦中の1階層に下り、安全地帯へ3人を案内する。出ないように言い聞かせ、統括にも事情を話して転移でギルレイの家の中庭に移動しギルドに迎えに行った。

『お前ら問題起こしすぎだ。今から連れてってもらう所が個人の所有ダンジョンだと分かってるか?そこで問題起こしたら流石にヤバいぞ?理解した上で行けよ?』

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