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第1章 出会い
クロト #4
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どうやら異世界とは建築方法が違うらしい。
こちらの世界では専用の職業を取得している者ならだれでも魔法で簡単に建築が出来る。
建築に特化した者達が所属するのが建築屋だ。
『そうか…魔法って便利だな…』
クロトはしみじみと呟いた。
宿代が勿体ないということで今晩はニーナの家に泊まらせて貰うことになった。
風呂はギルレイやルシノの家ほどでかい訳もなく、1人ずつ入った。
クライは入れなかったためいつも通り《清潔》だが風呂が気に入ったようで心做しかソワソワしていた。
次の日、準備を終えた二人と共にニーナの家の戸締りをして村長に挨拶する。
『村長、今までありがとう。大事な家だから気にかけてくれると嬉しい』
『ああ。ちゃんと庭の手入れはしとくよ』
そうして4人でノフテスに向かった。
街の近くから既に冒険者が行き来しており、結構な数の視線に晒された。
<こちらは不躾な視線がやけに多いな。鬱陶しい>
「そうだな。早くルスタフに移動したい」
そう話す二人の後ろではクロトがニーナを口説いていた。
「クロトのせいでもあると思うけど…」
『なんだ?リミル、ヤキモチか?嫉妬か?お前は好きな人とかいないの?』
そう言われたリミルの頭にはルシノがチラついた。
その時ようやく自覚しかけたがリミルは気付かないふりをした。
自覚するのが怖かった。
「…いないな」
クライは後ろの二人に気付かれない程度にリミルに視線を送った。
いるだろ。と。
リミルはその視線に気づくことなくクライには鈍いという烙印を押されていた。
街に着くとクロトとニーナがソワソワし出した。
『すげー!異世界って感じ!』
『ここがノフテス…広いのね…』
<イレアの方が広いし綺麗だぞ?>
クロトは始まりの街らしい喧騒だとか言ったあと、武具を売っている店を見て騒いでいた。
ニーナは人の多さに驚きつつ平静を装っていた。
ギルドに到着すると中は静かだった。
騒ぎを起こしていた連中は揃って居なくなっていた。
日を跨いでいるので当然といえば当然なのだが結構な人数が誰一人ギルドに来ない事などないだろう。
リミルは受付に進みギルマスに会いたい旨を伝える。
前日とは違い、丁寧に対応され、ギルマス部屋からハルバーが出てきた。
『入ってくれ。中で話そう』
ギルマスの部屋に入るとハルバーがクロトの方を向いた。
『俺はこの街のギルドマスターをしているハルバーだ。お前のことを聞かせてもらってもいいか?』
疑問形だが有無を言わせない圧を感じる。
異世界人が来たのは初めてだと思う。
だからこそ疑問も多いし、疑いもする。
クロトは話した感じ嫌な雰囲気はないが、今後もそうとは限らないし、新たに渡って来る者も居るかもしれない。
用心するに越したことはないだろう。
『はい。俺のHNはクロトです。本名は黒澤大翔って言います。異世界から来ました。ステータスでは渡人族ってなってました。よろしくお願いします』
リミルは驚いた。
ニーナも驚いているが、クロトは敬語を使えたようだ。
異世界の敬語は簡単なのだろうか?とニーナとヒソヒソ話す。
『ハンドルネーム?本名?クロサワヒロトと言うのが本当の名前ということか?長い名前だな。ハンドルネームと言うのはあだ名のようなものか?』
『俺の世界には苗字、つまり家名というものがあって、家名と個人名を並べて名乗るんです。俺の場合は家名が黒澤、個人名が大翔で、ハンドルネームはあだ名と言えばあだ名ですが、ある特定の物事で使う個人を示す名前の事を言います』
リミルはクロトのステータスの表示を思い出して納得した。
カッコ内にあった名前が途中で別れていたのは家名と個人名に別れていたからなのかと今更ながら理解した。
『そうか。それでお前はどう呼ばれたい?』
『クロトでお願いします。もう元の姿ではないし、家族もいませんのでこちらで生きていきます。帰れたとしても帰る気はありません』
クロトはリミルに話した内容を要約してハルバーに話した。
ゲームというものがイマイチ理解出来なかったが画面上で遊ぶ娯楽と認識した。
そこに出てくる世界にこの世界が似ているらしい。
クロトの世界は魔法もレベルもないらしく、不便だと思った。
だからこそ科学やらが発展してゲームがあるのだとか。
『ならなぜここに来たのかは分からないということか…』
『はい…気付いたらニーナのいる村の近くで倒れていまして。ニーナに助けてもらいました』
その後これからの事だとかこの世界のルールだったりを話していた。
そして唐突に切り出される。
『そうだ、リミル。お前がクロトの保護者な』
「は?一緒にギルレイんとこで世話になるからギルレイじゃないのか?」
思っても見なかったためとても驚いた。
ギルレイが保護者になると思っていた。
成人して間もないリミルに頼むことではない。
『あいつはギルドマスターの仕事があんだろ?数年はお前らと行動を共にして貰うんだからお前が保護者の方が都合がいいだろ?』
「俺あんま歳変わらないぞ?」
するとニーナがソワソワし始めた。
嫌な予感がする。
『私も成人はまだで親が居ないんだけど…』
『じゃあニーナの保護者もリミルな』
リミルは嘘だろ?と呆然とする。
成人して間もない親を知らないリミルが二人の親代わりとなってしまったのである。
「マジかよ…てゆか、ハルバー。サラッと言っていたが数年って?クロトが慣れるまでじゃないのか?」
『慣れるのに必要だろうと思ってな。それに成人までは一緒にいてもらうから』
成人までとなるとクロトは確か22と言っていたので2年程だ。
「流石に四六時中は無理だぞ?」
こちらの世界では専用の職業を取得している者ならだれでも魔法で簡単に建築が出来る。
建築に特化した者達が所属するのが建築屋だ。
『そうか…魔法って便利だな…』
クロトはしみじみと呟いた。
宿代が勿体ないということで今晩はニーナの家に泊まらせて貰うことになった。
風呂はギルレイやルシノの家ほどでかい訳もなく、1人ずつ入った。
クライは入れなかったためいつも通り《清潔》だが風呂が気に入ったようで心做しかソワソワしていた。
次の日、準備を終えた二人と共にニーナの家の戸締りをして村長に挨拶する。
『村長、今までありがとう。大事な家だから気にかけてくれると嬉しい』
『ああ。ちゃんと庭の手入れはしとくよ』
そうして4人でノフテスに向かった。
街の近くから既に冒険者が行き来しており、結構な数の視線に晒された。
<こちらは不躾な視線がやけに多いな。鬱陶しい>
「そうだな。早くルスタフに移動したい」
そう話す二人の後ろではクロトがニーナを口説いていた。
「クロトのせいでもあると思うけど…」
『なんだ?リミル、ヤキモチか?嫉妬か?お前は好きな人とかいないの?』
そう言われたリミルの頭にはルシノがチラついた。
その時ようやく自覚しかけたがリミルは気付かないふりをした。
自覚するのが怖かった。
「…いないな」
クライは後ろの二人に気付かれない程度にリミルに視線を送った。
いるだろ。と。
リミルはその視線に気づくことなくクライには鈍いという烙印を押されていた。
街に着くとクロトとニーナがソワソワし出した。
『すげー!異世界って感じ!』
『ここがノフテス…広いのね…』
<イレアの方が広いし綺麗だぞ?>
クロトは始まりの街らしい喧騒だとか言ったあと、武具を売っている店を見て騒いでいた。
ニーナは人の多さに驚きつつ平静を装っていた。
ギルドに到着すると中は静かだった。
騒ぎを起こしていた連中は揃って居なくなっていた。
日を跨いでいるので当然といえば当然なのだが結構な人数が誰一人ギルドに来ない事などないだろう。
リミルは受付に進みギルマスに会いたい旨を伝える。
前日とは違い、丁寧に対応され、ギルマス部屋からハルバーが出てきた。
『入ってくれ。中で話そう』
ギルマスの部屋に入るとハルバーがクロトの方を向いた。
『俺はこの街のギルドマスターをしているハルバーだ。お前のことを聞かせてもらってもいいか?』
疑問形だが有無を言わせない圧を感じる。
異世界人が来たのは初めてだと思う。
だからこそ疑問も多いし、疑いもする。
クロトは話した感じ嫌な雰囲気はないが、今後もそうとは限らないし、新たに渡って来る者も居るかもしれない。
用心するに越したことはないだろう。
『はい。俺のHNはクロトです。本名は黒澤大翔って言います。異世界から来ました。ステータスでは渡人族ってなってました。よろしくお願いします』
リミルは驚いた。
ニーナも驚いているが、クロトは敬語を使えたようだ。
異世界の敬語は簡単なのだろうか?とニーナとヒソヒソ話す。
『ハンドルネーム?本名?クロサワヒロトと言うのが本当の名前ということか?長い名前だな。ハンドルネームと言うのはあだ名のようなものか?』
『俺の世界には苗字、つまり家名というものがあって、家名と個人名を並べて名乗るんです。俺の場合は家名が黒澤、個人名が大翔で、ハンドルネームはあだ名と言えばあだ名ですが、ある特定の物事で使う個人を示す名前の事を言います』
リミルはクロトのステータスの表示を思い出して納得した。
カッコ内にあった名前が途中で別れていたのは家名と個人名に別れていたからなのかと今更ながら理解した。
『そうか。それでお前はどう呼ばれたい?』
『クロトでお願いします。もう元の姿ではないし、家族もいませんのでこちらで生きていきます。帰れたとしても帰る気はありません』
クロトはリミルに話した内容を要約してハルバーに話した。
ゲームというものがイマイチ理解出来なかったが画面上で遊ぶ娯楽と認識した。
そこに出てくる世界にこの世界が似ているらしい。
クロトの世界は魔法もレベルもないらしく、不便だと思った。
だからこそ科学やらが発展してゲームがあるのだとか。
『ならなぜここに来たのかは分からないということか…』
『はい…気付いたらニーナのいる村の近くで倒れていまして。ニーナに助けてもらいました』
その後これからの事だとかこの世界のルールだったりを話していた。
そして唐突に切り出される。
『そうだ、リミル。お前がクロトの保護者な』
「は?一緒にギルレイんとこで世話になるからギルレイじゃないのか?」
思っても見なかったためとても驚いた。
ギルレイが保護者になると思っていた。
成人して間もないリミルに頼むことではない。
『あいつはギルドマスターの仕事があんだろ?数年はお前らと行動を共にして貰うんだからお前が保護者の方が都合がいいだろ?』
「俺あんま歳変わらないぞ?」
するとニーナがソワソワし始めた。
嫌な予感がする。
『私も成人はまだで親が居ないんだけど…』
『じゃあニーナの保護者もリミルな』
リミルは嘘だろ?と呆然とする。
成人して間もない親を知らないリミルが二人の親代わりとなってしまったのである。
「マジかよ…てゆか、ハルバー。サラッと言っていたが数年って?クロトが慣れるまでじゃないのか?」
『慣れるのに必要だろうと思ってな。それに成人までは一緒にいてもらうから』
成人までとなるとクロトは確か22と言っていたので2年程だ。
「流石に四六時中は無理だぞ?」
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