稀有ってホメてる?

紙吹雪

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第1章 出会い

買い付け #2

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クライの背中に乗って数時間走り、途中見かけた村でお昼休憩を取って、また数時間走って貰うとルスタフが見えてきた。
イレアの街よりは小さい。
地形に合わせたのか外壁が歪な形をしている。

ルスタフは職人が多く集まる、物作りで有名な街だ。
街に入るとそこかしこに工房がある。
工房だらけの街だが意外と人通りが多く賑やかだ。

ルスタフでの依頼内容はとある工房で大量の食器を買ってきて欲しいというものだった。
早速指示された工房へ行きメモ通りに買っていく。


買い付けに必要なお金は自分で立て替えて置かなければならない。

しかし最終的には、報酬とは別に、宿代などの遠征資金と共に依頼者が支払ってくれる。
遠征依頼の間は必ず全てギルドタグを通して支払うことになっており、依頼完了報告の時にその内の必要経費に該当するものを算出してギルドが出してくれるのだ。
依頼完了のお知らせと共にギルドから依頼者に仲介料を含む請求書が届く。


冒険者プレイヤーはコインを取り出して使う者は少なく、ほとんどの者が普段からギルドタグでお金のやり取りをしている。

自身の血と魔力を取り込んであるので本人にしか操作できない仕様となっており、触れて発動させるとお金の出し入れややり取りが可能になる。
発動と言っても大袈裟なことは無く、僅かな魔力を吸ってほんのり光るだけだ。
種族レベルがღ1の者でも何度使っても問題ない程消費魔力が少ない。
初心者にも優しい親切設計だ。
ちなみに防犯面も安心で、寝ている人や気絶している人、死んでいる人などのタグから強盗出来ないようにもなっている。


使用記録をギルドに公開することも出来る。
それを利用して遠征資金を出してもらうのだが、何にいくら使ったというのが出るので皆普段は非公開にしている。

遠征依頼を受けると出発前に公開にして帰ってくると非公開にするのだ。

リミルも遠征資金を貰うために確認の時に公開にした。



『まいどあり』

リミルは初めて来た場所だが、依頼者のレストランのオーナーは皿が割れて減る度にこの工房で買っているらしい。

そう考えると確かに"毎度"かもしれない。

工房主にオススメの飲食店や宿屋を聞いて工房を後にした。

**

オススメされた店に行く前にギルレイからついでだと頼まれた手紙を届けにギルドに寄る。
連絡用の魔導具は?と聞くと『手紙じゃねぇと駄目だからな』と肩をすくめていた。
一応手間賃という名の報酬を貰えるので引き受けた。


「こんばんわ。ギルマスいますか?」

『こんばんは。リリアンさんの担当の子ね。その言い方は。私はイオン。待ってて、呼んでくるから』

お姉さんな感じの優しそうな鬼人族の女性がふふっと笑ってギルマス部屋らしい所に入っていった。
イレアのギルドと造りは似ているが若干違いがあるようだ。
あと建物自体が二回りほど小さい。

**

暫く長椅子で待っていると今度は額に小さな少し先の丸い角が3つ生えた鬼神の男性が出てきた。
短いウルフカットの銀髪に浅黒い肌、金色の瞳をしている。

『良く来たな。ギルレイから聞いてる。リミルとクライだな?』

そう言って男はリミルの目の前にドカッと座りサッと足を組む。
その姿が様になっている。

「…あ、うん」

リミルは初めて接するタイプに戸惑ったが同時に憧れを抱いた。

立ち居振る舞いが全てカッコよかった。
精悍で男らしい偉丈夫だ。
無駄な肉のない引き締まった身体で筋肉があるのにスラッとしている。
顔もまた男が惚れるような精悍さでリミルはおそらく惚れた。

しかしリミルは憧憬の眼差しを向けるだけだった。
本人は自分の気持ちに気づいていなかった。
気づいたのは様子を見ていたイオンとクライだけだ。

「俺がリミルでこっちがクライ」

『そうか。俺はルシノ。よろしくな』

そう言ってほんの少しだけ口角が上がったのをリミルは見つけた。
それだけで嬉しくなった。
鬱陶しく思われないように気持ちだけを込めて「よろしく」と言った。

顔が綻んでしまうのは仕方がないと思う。
イオンはそれを見て微笑ましそうにしている。
クライは出来るだけ空気になろうとしていた。

「これ頼まれた手紙」

『ああ。読ませてもらう』

ルシノはそう言ってその場で読み始めた。
その間リミルはそっとルシノを眺めていた。

そしてルシノが手紙から顔を上げた途端に目が合いドキッとしてしまうが直ぐに話しかけられ慌てる暇もなかった。

『配達ご苦労だったな。依頼の方は終わったのか?』

「さっき終わってこっちに。あと2つあるから明日にはノフテスの方に向かうけど」

『なら一緒に飯食いに行くか?まだだろ?』

有無を言わせない感じだが、リミルとしては憧れの人と一緒に食事できて嬉しいので願ってもない申し出だった。

「うん。まだだよ」

リミルは完全に素で話していた。
周りに舐められないようにとか最早どうでもよかった。
リミルの他に冒険者はおらず、バーで飲んでいる鍛冶師が数名いただけだったのもある。

『行くぞ。リミル、クライ。イオン、今日はもう上がるから何かあったら連絡をくれ』

『畏まりました。行ってらっしゃい』

「行ってくるね」

<…行ってくる>

ルシノはサッと立ち上がり三人に声をかけた。
イオンは終始ニコニコしながらルシノに返事しリミルとクライに声をかけた。
リミルは嬉しそうに返事する。
クライは一緒に行って良いのだろうか?と少し悩んだ末、呼ばれたので付いていくことにしたのだった。


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