46 / 96
第1章 出会い
買い付け #1 ※
しおりを挟む「あれ?ペルルーイ?」
『覚えていて下さったんですね』
ペルルーイが目を細めてニコッと微笑む。
いまいち何を考えているか読み取れない。
『ではペルルーイさん。依頼内容を話してください』
『はい。リミルさん達が旅に出ることがあったら連れて行って欲しいんです』
「………え?…」
リミルはギルレイから許可が降りたら旅に出たいと思っている。
それを知っているのか?と思うような発言に驚きを隠せない。
旅に出ようと思っていると言ったのはギルレイだけだしそれは引き留められて今ここにいる。
ならば何故?
『何処でもいいんです。何処かに行く時にご一緒させて頂くだけで』
リリアンを見ると困った顔をしつつ『ね、変わった依頼でしょ?』と言っているようだった。
リミルは正直断ろうかと思ったがリリアンに『話だけでも聞いてあげて』と言われたのを思い出す。
「えっと理由を聞いても?」
『あ、はい。えっと…私はこの街から出たことが無いのですが偶に店で珍しい食材を見かけるんです。それを見てると他にも色々な食材があるのではと興味を持ってしまって…』
<見に行きたいのか?>
『まあ見たいのもそうなんですが調理してみたくて…』
「ん?ホストだよな?料理できるならなんでホストなんだ?」
『敬語が話せるから接客になりました。料理人のレベルはそこそこ高いです。グレモスさんに店を持つのを勧められましたがそのつもりは無かったのでそのままホストとしてあの店に』
「へー」
リミルは迷っていた。
リミルも料理は出来るが店を出せるほどの腕前はない。
もしペルルーイに付いてきてもらえればいつでも店並みに美味しいご飯が食べられる。
ただ、信用していいものか…
<連れていこう。そしたら美味い物が食える>
クライは警戒していないようだ。
気づいていないのか。
それとも気づいていて態と気づいてない振りをしているのか。
ペルルーイがクライの言葉に反応する。
『どこか行かれるのですか?』
「ああ、依頼でルスタフの街とノフテスの街、その途中で村にも寄るけど」
『ならばそれに同行させては貰えませんか?』
「んー…今回は俺個人の旅ではなく依頼、つまり仕事として行くから日数も決まってるしあんまり自由が利かないけど…」
依頼を抱えてる所に何かされて問題まで抱えるのはごめんだった。
ペルルーイの視線を気にしながらの遠距離依頼は精神的にキツイ。
自分の自由に動ける旅であれば連れて行って万が一問題が生じても心に余裕がある分対処は楽だ。
『そうですか…』
やんわり断ったのが分かったのだろう。ペルルーイは落ち込んだ様子だ。
そして何かを決意したのか顔を上げた。
『先程の話し方でしたら個人的な旅をそのうちしようとお考えなのですよね?その時、連れて行ってもらうことは可能ですか?』
強い意志を感じる表情に気圧されリミルは「あ、うん」と返事してしまっていた。
それを聞いたペルルーイは満面の笑みで『良かった。その時は必ず声をかけてください』と言って去っていった。
<良かったな。リミル。これで旅に出ても上手い料理が食べ放題だ>
『ふふふ、それでは出発の日付けや注意事項等の確認をしましょう』
**
受けたのは3つ。全て買い付けの依頼だったのでルスタフ、村、ノフテスの順に済ませ、転移で一気に帰ってくることにした。
《空間収納》があるので荷物には困らない。
遠くに行って何かをする依頼_遠征依頼_は初めてなので、リリアンとの確認が終わりホッとする。
遠征依頼の準備は完了したので自分の旅支度を始める。
と言っても足りないポーションを買うだけなのだが。
オーバーフローの時にMPポーションをくれた小人族のおっちゃんの所に行く。
『らっしゃい!お!確かリミルだったな?言ってたとおり安くしてやるよ』
「サンキュ!LPポーションとENポーションとMPポーション、それから一応HLポーションとCRポーション、あとRPポーションも買うよ」
LPポーションは生命力回復薬
ENポーションは体力回復薬
MPポーションは魔力回復薬
HLポーションは傷を治す回復薬
CRポーションは状態異常を治す回復薬
RPポーションは修繕に使う溶液
ヒールとキュアに関しては魔力さえあれば魔法が使えるのであまり意味はないが念の為買う。
体力は寝れば自動的に回復していくが戦闘に備えて多めに買っておく。
体力が満タンであれば自然回復する生命力も戦闘中は待ってられないため多めに買う。
1番重要になってくるのがMPポーションとRPポーションだ。
LPもENもHLもCRも全て魔法で回復できるし、戦闘でも魔力を使う。そのためMPポーションは二人ともよく消費するのだ。RPポーションは装備品が自分たちでは修繕出来ないので必須になってくる。
それぞれ大量に買い込みお金を払って暫くおっちゃんと話したあと日が暮れる前に家に帰った。
**
するとギルレイがいてお風呂も既に入った後だった。
前日三人で入ってクライの洗い方や乾かし方を見ていたのでクライと入る。
丁寧に洗ってやり、自分も洗って二人で湯に浸かる。
<明日の朝出るのを聞いたんだろうな>
「ギルマスだから聞いてるだろうな」
しばしの沈黙後、
<そう言えばペルルーイの事だが>
「そうだ。クライはあいつの事怪しくねぇのかよ?」
リミルは聞こうと思っていた事を思い出し訊ねた。
クライは考える素振りをして言った。
<俺は危険はないと思うぞ?>
それを聞いてリミルは黙ってしまった。
クライが言うならとも思うが怪しさは拭い切れなかったため考え込んでしまったのだった。
風呂から上がるとギルレイがいつもの如く料理を振舞ってくれる。
料理を食べながらリミルの受けた依頼について話した。
翌日
朝食を食べ、ギルレイと共に南門に向かう。
リミルもクライもワクワクしていた。
それを見てギルレイは笑っていたが門に着くと真剣な顔で『無茶はするな』と言った。
『気をつけて行ってこいよ』
「見送りありがとう。行ってくるね」
<行ってくる>
『ああ、行ってこい』
二人はギルレイに見送られて南門を出た。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる