34 / 96
第1章 変化の始まり
お風呂上がりの話し合い #1
しおりを挟む
<そうだな。今日はもう休みたい>
「晩御飯とお風呂と、あと話もしなきゃだしな」
三人はダンジョンから出てギルレイの《転移》でギルレイの家の玄関に移動した。
「《転移》用に部屋に靴マット置こうかな。クライも乗れるくらいの」
『明日買いに行くか。とりあえず風呂の使い方教えるからリミル先に入ってくれ。クライは今はすまないが《清潔》で済ませてくれ。後で俺と入ろうな』
<お!洗ってくれるのか?《清潔》楽しみだな>
「お風呂久々に入るなー」
『クライは体毛が短いから洗いやすそうだな』
<銀狼の時は長かったから短くしてみたんだ。前より早く走れるようになったしスッキリしていい感じだ>
「毛の長さが変えられるらしいよ。クライは寒い場所以外では基本短いままだな」
『そう言えば野生のフェンリルの目撃情報では体毛の長さはまちまちだったな』
そんな話をしながら二人は靴を脱ぎ装備を《武具収納》に片付け、クライは魔法で綺麗にして家に上がる。
リビングに入ると魔道具の[自動照明]や[暖炉]がつき、一気に明るくなる。
[自動照明]は人を検知し自動で発光するので様々な場所で使われている。
[暖炉]は実際に火が灯っているが部屋の温度を一定に保つ魔工が施されている。
<火があるのに暑くないな。快適だ>
『クライは少しそこでのんびりしててくれ』
クライは言われた通り、暖炉の近くに敷いてあるフワフワした毛足の長いカーペットの上で横向きに寝転び寛いだ。
蒼に埋もれた白銀の毛並みががキラキラと火に照らされ、まるで海に浮かんでいる様だ。
リミルとギルレイはそれを横目にキッチンの左の扉に向かう。
中に入るとキッチン程の広さの部屋があり、入って来た真向かいに扉、右側が殆ど磨りガラスで左側には棚と扉と洗面台がある。扉の多い脱衣所だ。
「この部屋全方向に扉があるけどそれぞれ何処に繋がってんの?」
『ああ、真向かいは俺の部屋、左側のは廊下に繋がってるが左右に手洗いがある。見とくか?』
「うん。したいときに迷ったら困るし」
左側の扉をスライドして開けると小さめの廊下があって奥に扉がある。
その扉を押し開けると右手に階段と奥に玄関がある廊下が見えた。
引っ込んで扉を閉め、小さな廊下の左右にある扉をそれぞれ開けてみる。
どちらも同じ造りになっていて、広めの個室でトイレが1つと小さな手洗い場が1つあった。
「玄関からお風呂に直行出来るね。御手洗もその場で手を洗えるし便利」
『ああ。アンリが帰ってきて直ぐにお風呂行きたいこともあるからって言ってな』
「確かに。んじゃ磨りガラスのとこがお風呂か」
脱衣所にもどり、磨りガラスの1部、扉になっている所を開ける。
壁は木材で床は石材のタイルのような物で出来ている。
丸い岩に囲まれた浴槽は5m四方程のほぼ円形をしており、右側と奥の壁にくっ付くような配置だ。
左の壁にはシャワーが二つ並んで付いている。
『シャワーは手に取るとお湯が出る魔道具だ。浴槽にはこっちでお湯を出す。ついでにどちらの温度調節もここで一緒に出来る』
ギルレイはそう言って脱衣所の唯一磨りガラスでは無い壁に設置してある魔道具の使い方を操作しながらリミルに教えた。
「わかった」
『じゃあリミルが風呂に入ってる間に晩飯作るから上がったらダイニングに来てくれ。ついでに、風呂上がりにはこれを着ろよ』
棚を開けてそこにかかっているバスローブを1つ出して部屋の真ん中にある腰くらいの高さの机に置く。
「ありがとう」
ギルレイがキッチンの方に行ったのを見送ると、早速入る準備をする。
お風呂上がりに着るものがあるので、着ていたもの全てに《清潔》をかけて《空間収納》に片付ける。
浴室に入り頭や身体を洗い、お湯に浸かる。
リミルは今日一日を振り返っていた。
(まず冒険に出ようと思って森を出たけどこれは延期になった。それから初めてちゃんとした家に住むことになった。家具を買いに行くのも初だったな。後で設置しないと。そこの店主のペティからは悪意や害意は感じなかった)
騙された頃から、悪意や害意、敵意といった嫌な視線には気をつけるようになった。
元々アンリに気を付けるようにと散々言われていたが何も起きなかったため危機感が薄かった。
実際はアンリにそれとなく守られていたのでそういった視線に気付く間も無かっただけだ。
それ故に、アンリがいなくなった途端に騙されたのだが、そうなって初めてアンリの言いつけを思い出した。
リミルはそこまで酷い目に遭った訳ではなくて良かったと思うことにした。
実際、その頃のショックが大きかっただけで今ではいい教訓になったと思っている。
取り返しがつかない事とかでなくて心底ホッとする。
だからこそ、以前のように人を簡単に信用することは出来なくなったが、視線に気をつけるようになってから、ある程度の見極めは出来るようになった。
嫌な視線の者とは出来るだけ関わりたく無かった。
(その後グレモスのレストランに行ったんだ。色々あったな。美味しい料理を食べて、俺の親かも知れない人達の話を聞いて、ピギルーイから話を聞いて…)
「晩御飯とお風呂と、あと話もしなきゃだしな」
三人はダンジョンから出てギルレイの《転移》でギルレイの家の玄関に移動した。
「《転移》用に部屋に靴マット置こうかな。クライも乗れるくらいの」
『明日買いに行くか。とりあえず風呂の使い方教えるからリミル先に入ってくれ。クライは今はすまないが《清潔》で済ませてくれ。後で俺と入ろうな』
<お!洗ってくれるのか?《清潔》楽しみだな>
「お風呂久々に入るなー」
『クライは体毛が短いから洗いやすそうだな』
<銀狼の時は長かったから短くしてみたんだ。前より早く走れるようになったしスッキリしていい感じだ>
「毛の長さが変えられるらしいよ。クライは寒い場所以外では基本短いままだな」
『そう言えば野生のフェンリルの目撃情報では体毛の長さはまちまちだったな』
そんな話をしながら二人は靴を脱ぎ装備を《武具収納》に片付け、クライは魔法で綺麗にして家に上がる。
リビングに入ると魔道具の[自動照明]や[暖炉]がつき、一気に明るくなる。
[自動照明]は人を検知し自動で発光するので様々な場所で使われている。
[暖炉]は実際に火が灯っているが部屋の温度を一定に保つ魔工が施されている。
<火があるのに暑くないな。快適だ>
『クライは少しそこでのんびりしててくれ』
クライは言われた通り、暖炉の近くに敷いてあるフワフワした毛足の長いカーペットの上で横向きに寝転び寛いだ。
蒼に埋もれた白銀の毛並みががキラキラと火に照らされ、まるで海に浮かんでいる様だ。
リミルとギルレイはそれを横目にキッチンの左の扉に向かう。
中に入るとキッチン程の広さの部屋があり、入って来た真向かいに扉、右側が殆ど磨りガラスで左側には棚と扉と洗面台がある。扉の多い脱衣所だ。
「この部屋全方向に扉があるけどそれぞれ何処に繋がってんの?」
『ああ、真向かいは俺の部屋、左側のは廊下に繋がってるが左右に手洗いがある。見とくか?』
「うん。したいときに迷ったら困るし」
左側の扉をスライドして開けると小さめの廊下があって奥に扉がある。
その扉を押し開けると右手に階段と奥に玄関がある廊下が見えた。
引っ込んで扉を閉め、小さな廊下の左右にある扉をそれぞれ開けてみる。
どちらも同じ造りになっていて、広めの個室でトイレが1つと小さな手洗い場が1つあった。
「玄関からお風呂に直行出来るね。御手洗もその場で手を洗えるし便利」
『ああ。アンリが帰ってきて直ぐにお風呂行きたいこともあるからって言ってな』
「確かに。んじゃ磨りガラスのとこがお風呂か」
脱衣所にもどり、磨りガラスの1部、扉になっている所を開ける。
壁は木材で床は石材のタイルのような物で出来ている。
丸い岩に囲まれた浴槽は5m四方程のほぼ円形をしており、右側と奥の壁にくっ付くような配置だ。
左の壁にはシャワーが二つ並んで付いている。
『シャワーは手に取るとお湯が出る魔道具だ。浴槽にはこっちでお湯を出す。ついでにどちらの温度調節もここで一緒に出来る』
ギルレイはそう言って脱衣所の唯一磨りガラスでは無い壁に設置してある魔道具の使い方を操作しながらリミルに教えた。
「わかった」
『じゃあリミルが風呂に入ってる間に晩飯作るから上がったらダイニングに来てくれ。ついでに、風呂上がりにはこれを着ろよ』
棚を開けてそこにかかっているバスローブを1つ出して部屋の真ん中にある腰くらいの高さの机に置く。
「ありがとう」
ギルレイがキッチンの方に行ったのを見送ると、早速入る準備をする。
お風呂上がりに着るものがあるので、着ていたもの全てに《清潔》をかけて《空間収納》に片付ける。
浴室に入り頭や身体を洗い、お湯に浸かる。
リミルは今日一日を振り返っていた。
(まず冒険に出ようと思って森を出たけどこれは延期になった。それから初めてちゃんとした家に住むことになった。家具を買いに行くのも初だったな。後で設置しないと。そこの店主のペティからは悪意や害意は感じなかった)
騙された頃から、悪意や害意、敵意といった嫌な視線には気をつけるようになった。
元々アンリに気を付けるようにと散々言われていたが何も起きなかったため危機感が薄かった。
実際はアンリにそれとなく守られていたのでそういった視線に気付く間も無かっただけだ。
それ故に、アンリがいなくなった途端に騙されたのだが、そうなって初めてアンリの言いつけを思い出した。
リミルはそこまで酷い目に遭った訳ではなくて良かったと思うことにした。
実際、その頃のショックが大きかっただけで今ではいい教訓になったと思っている。
取り返しがつかない事とかでなくて心底ホッとする。
だからこそ、以前のように人を簡単に信用することは出来なくなったが、視線に気をつけるようになってから、ある程度の見極めは出来るようになった。
嫌な視線の者とは出来るだけ関わりたく無かった。
(その後グレモスのレストランに行ったんだ。色々あったな。美味しい料理を食べて、俺の親かも知れない人達の話を聞いて、ピギルーイから話を聞いて…)
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜
I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。
レベル、ステータス、その他もろもろ
最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。
彼の役目は異世界の危機を救うこと。
異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。
彼はそんな人生で何よりも
人との別れの連続が辛かった。
だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。
しかし、彼は自分の強さを強すぎる
が故に、隠しきることができない。
そしてまた、この異世界でも、
服部隼人の強さが人々にばれていく
のだった。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
最弱ユニークギフト所持者の僕が最強のダンジョン探索者になるまでのお話
亘善
ファンタジー
【点滴穿石】という四字熟語ユニークギフト持ちの龍泉麟瞳は、Aランクダンジョンの攻略を失敗した後にパーティを追放されてしまう。地元の岡山に戻った麟瞳は新たに【幸運】のスキルを得て、家族や周りの人達に支えられながら少しずつ成長していく。夢はSランク探索者になること。これは、夢を叶えるために日々努力を続ける龍泉麟瞳のお話である。
幸子ばあさんの異世界ご飯
雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」
伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。
食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる