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第1章 変化の始まり
オーバーフロー #6
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「わかった。走るよ」
*
森の中央に位置するリミルのホームポイントから東南東に向かって走る。
草木を掻き分け苔むした岩場やせせらぎの川を越えて木々を通り抜けた先に小さな花畑があった。
その花畑の中心にある薄紅色の花を付けた巨木の根元がダンジョンの入口になっていた。
『これは…綺麗な所だな。よく荒らされずに済んでる』
「ここら一帯には俺とクライで《結界》を張ってるからな。普通は気づかないうちに避けて通るんだ」
『なるほど妖術か』
<人前では使わないし知られない方が良いだろってことでステータスには表示しないようにした>
『そうだな。賢明な判断だと思う。でもクライは進化したばっかりだろ?フェンリルは種族レベル1からステータスをいじれるのか?それとも前の種族レベルが高いのか?』
「それは帰ってからゆっくり話そう。日が沈む前に家に帰りたいだろ?」
『だな。じゃあ入るか』
三人は早速木の根元に開いた穴から中へと入り地下に続く階段を降りていく。
1層目に到着するとそこは天井が高く奥にも広い、円形に近いドーム状の空間になっていた。
降りてきた階段以外の壁には幾つもの横穴があり、下層に降りる階段を探すのに大変時間がかかりそうだ。
1つの横穴がどこまで続いているのか、何があるのか、どんな魔物が出るのか、ドロップアイテムはどんなものが出るのか、何処にどの程度のレベルの魔物が出るのかなど、調べる項目がとても多い。
そうして調べたダンジョンは信頼度の高い冒険者や適正レベルの冒険者には立ち入りを許可したり、ダンジョンによっては条件付きで一般に解放していたりする。
このダンジョンはリミルの話や周辺の状況から条件付きの一般解放は難しい。
初心者の育成に良い環境ならば許可制での運用が出来ればとギルレイは考えていた。
しかし、全ては確認が取れてからだ。
全ての確認にどれだけの時間がかかるのか。
『リミルはこのダンジョンの内部は全て把握しているのか?』
「まあね。ここに住んでた時に全部確認して何ヶ所かは自分の部屋にしてるよ。あと、友好的な魔物もいるから向こうから飛びかかって来ない内は切りかからないで欲しい」
『え…友好的な魔物?それはもう魔獣じゃないのか?』
「いや、それはないな。分類的には魔物で間違いない。魔獣は本来、野生の生き物って扱いだろ?だから共存共栄して互いにあまり踏み込まないというか…でも魔物は直ぐに襲ってくる奴が殆どで人間にとって危険だから狩る。でも、魔獣も魔物もテイムして一緒に暮らすことができる。友好的な魔物って言ったけど最初はアイツらも襲ってきたんだ。ただ仕方なくって感じで…魔物にも変わったヤツが居るんだなって思ったらつい声をかけてた」
『すまん、混乱してた。ダンジョンには本来魔物しか生まれないよな。どの種族にも良い奴も悪い奴もいるってことか。相手をよく見て判断しなければ行けないな』
<稀有なリミルには変わったヤツが寄ってくるんだろ。俺も人間と家族になった珍しい分類だしな>
『確かにな。銀狼が人間といること自体初だっただろうからな。そもそも何で二人は一緒にいるんだ?』
「そうだな。安全な場所を案内しながら話すよ」
リミルが冒険者になって2年程経った頃、アンリが亡くなってしまった。
その頃はまだアンリを介してギルレイやリリアンと少し話せる程度だったため、リミルには頼れる人がアンリしかいなかった。
とても悲しくて落ち込んでいた所に声をかけてきた二人の冒険者がいた。
世間知らずだったリミルはその二人に騙されていた。
暫くは気付かずにその二人と過ごしていたが偶々二人の話を聞いてしまってショックを受けた。
誰にも相談出来ず、途方に暮れて唯一安心できる場所だった森に帰ったが余計に虚しくなり、泣きながら森を彷徨った。
そして泣いている銀狼の仔犬を見つけた。
お互い思う所があったのか、くっついて座り、リミルはあった事を赤裸々に語った。誰かに聞いて欲しかった。
全て話終えると妙にスッキリしていた。仔犬も励ますように、寂しさを埋めるように、リミルに擦り寄った。
お互いの寂しさを感じて家族になった。
仔犬のステータスが見えて称号に{リミルの家族}とあって、嬉しくなって今度は二人で泣いた。
泣いてばかりのこの出会いを忘れないように仔犬には"クライ"と名付けた。
「その後話せるようになったクライに泣いてた理由を聞いて、俺と同じ捨て子だって分かってまた泣いて傷の舐め合いをしたよ」
『…そうか。アンリエットの葬儀が終わって暫く見ないと思ったら急にクライを連れて現れて…あの頃は驚いたけどそんな事があったんだな』
クライとの出会いのエピソードを話しているうちに1層目の私物化している場所を案内し終えた。
「ここも俺が自分の部屋にしてた場所で、残りの横穴は魔物が出る場所と階段がある場所で1層目は終わりだな」
『そうか。なら今日はこの辺で帰るか』
*
森の中央に位置するリミルのホームポイントから東南東に向かって走る。
草木を掻き分け苔むした岩場やせせらぎの川を越えて木々を通り抜けた先に小さな花畑があった。
その花畑の中心にある薄紅色の花を付けた巨木の根元がダンジョンの入口になっていた。
『これは…綺麗な所だな。よく荒らされずに済んでる』
「ここら一帯には俺とクライで《結界》を張ってるからな。普通は気づかないうちに避けて通るんだ」
『なるほど妖術か』
<人前では使わないし知られない方が良いだろってことでステータスには表示しないようにした>
『そうだな。賢明な判断だと思う。でもクライは進化したばっかりだろ?フェンリルは種族レベル1からステータスをいじれるのか?それとも前の種族レベルが高いのか?』
「それは帰ってからゆっくり話そう。日が沈む前に家に帰りたいだろ?」
『だな。じゃあ入るか』
三人は早速木の根元に開いた穴から中へと入り地下に続く階段を降りていく。
1層目に到着するとそこは天井が高く奥にも広い、円形に近いドーム状の空間になっていた。
降りてきた階段以外の壁には幾つもの横穴があり、下層に降りる階段を探すのに大変時間がかかりそうだ。
1つの横穴がどこまで続いているのか、何があるのか、どんな魔物が出るのか、ドロップアイテムはどんなものが出るのか、何処にどの程度のレベルの魔物が出るのかなど、調べる項目がとても多い。
そうして調べたダンジョンは信頼度の高い冒険者や適正レベルの冒険者には立ち入りを許可したり、ダンジョンによっては条件付きで一般に解放していたりする。
このダンジョンはリミルの話や周辺の状況から条件付きの一般解放は難しい。
初心者の育成に良い環境ならば許可制での運用が出来ればとギルレイは考えていた。
しかし、全ては確認が取れてからだ。
全ての確認にどれだけの時間がかかるのか。
『リミルはこのダンジョンの内部は全て把握しているのか?』
「まあね。ここに住んでた時に全部確認して何ヶ所かは自分の部屋にしてるよ。あと、友好的な魔物もいるから向こうから飛びかかって来ない内は切りかからないで欲しい」
『え…友好的な魔物?それはもう魔獣じゃないのか?』
「いや、それはないな。分類的には魔物で間違いない。魔獣は本来、野生の生き物って扱いだろ?だから共存共栄して互いにあまり踏み込まないというか…でも魔物は直ぐに襲ってくる奴が殆どで人間にとって危険だから狩る。でも、魔獣も魔物もテイムして一緒に暮らすことができる。友好的な魔物って言ったけど最初はアイツらも襲ってきたんだ。ただ仕方なくって感じで…魔物にも変わったヤツが居るんだなって思ったらつい声をかけてた」
『すまん、混乱してた。ダンジョンには本来魔物しか生まれないよな。どの種族にも良い奴も悪い奴もいるってことか。相手をよく見て判断しなければ行けないな』
<稀有なリミルには変わったヤツが寄ってくるんだろ。俺も人間と家族になった珍しい分類だしな>
『確かにな。銀狼が人間といること自体初だっただろうからな。そもそも何で二人は一緒にいるんだ?』
「そうだな。安全な場所を案内しながら話すよ」
リミルが冒険者になって2年程経った頃、アンリが亡くなってしまった。
その頃はまだアンリを介してギルレイやリリアンと少し話せる程度だったため、リミルには頼れる人がアンリしかいなかった。
とても悲しくて落ち込んでいた所に声をかけてきた二人の冒険者がいた。
世間知らずだったリミルはその二人に騙されていた。
暫くは気付かずにその二人と過ごしていたが偶々二人の話を聞いてしまってショックを受けた。
誰にも相談出来ず、途方に暮れて唯一安心できる場所だった森に帰ったが余計に虚しくなり、泣きながら森を彷徨った。
そして泣いている銀狼の仔犬を見つけた。
お互い思う所があったのか、くっついて座り、リミルはあった事を赤裸々に語った。誰かに聞いて欲しかった。
全て話終えると妙にスッキリしていた。仔犬も励ますように、寂しさを埋めるように、リミルに擦り寄った。
お互いの寂しさを感じて家族になった。
仔犬のステータスが見えて称号に{リミルの家族}とあって、嬉しくなって今度は二人で泣いた。
泣いてばかりのこの出会いを忘れないように仔犬には"クライ"と名付けた。
「その後話せるようになったクライに泣いてた理由を聞いて、俺と同じ捨て子だって分かってまた泣いて傷の舐め合いをしたよ」
『…そうか。アンリエットの葬儀が終わって暫く見ないと思ったら急にクライを連れて現れて…あの頃は驚いたけどそんな事があったんだな』
クライとの出会いのエピソードを話しているうちに1層目の私物化している場所を案内し終えた。
「ここも俺が自分の部屋にしてた場所で、残りの横穴は魔物が出る場所と階段がある場所で1層目は終わりだな」
『そうか。なら今日はこの辺で帰るか』
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