稀有ってホメてる?

紙吹雪

文字の大きさ
上 下
31 / 96
第1章 変化の始まり

オーバーフロー #4

しおりを挟む
『そうだな。まさかとは思うかもな…帰ったら色々聞きたいことがあるんだが、無理に話させる気は無い。聴取じゃないからな。言える範囲で構わないからお前のこと教えてくれ』

「あ、ぁぁ。改まって言われると緊張するな…ハハハ」

リミルの緊張を解すためかギルレイはリミルの頭を優しく撫でた。
リミルは昔街中で見た親子の姿を思い出してギルレイが父親のようだと思った。

周りに居た戦いを見に来ていた観客という名の野次馬達もその様子を暖かい目で見ていた。

その視線に気づいたリミルは恥ずかしくなり慌てたが、野次馬の一人が『守ってくれてありがとう』と言うと他の者達もそれに続いてピギルーイも含めリミル達四人に称賛を送った。

北門から衛兵や冒険者が入って来てそちらにも称賛や御礼の言葉が飛ぶ。

衛兵達は右手で拳を作り手の甲が正面を向くように左胸に置き、左手は身体に添え、腰を少し折る。
敬礼の姿だ。揃っているのが美しい。
その光景に歓声があがる。

そんな雰囲気をぶち壊す奴が一人。

『おい、そこのお前。よくも手柄を横取りして行きやがったな!』

突然リミルに向かって指を突き出し、怒鳴り散らす荒熊あらぐま獣人の男。
キュートな三角耳とモフモフ尻尾だが怒った顔のせいで台無しだ。
まだ若く、成人してい無さそうだがリミルよりほんの少し背が高い。
その男の連れと思わしき、犬獣人の双子が反応する。

『『ん?』』

『お前ピンチだったのを助けて貰ったんだろ?何言ってんだ』

『あれは危なかったよな』

『二人は黙っててよ!』

『『はぁ…』』

双子は慣れているのか盛大にため息を吐いて黙った。
止められないと悟っているようだ。

「俺?なんかしたっけ?」

『戦闘中の魔物を横からリミルに倒されたんじゃないか?』

リミルが分かっていなさそうだったのでギルレイがよくありガチな理由を言ってみた。

『そうだ!僕が戦ってた熊の影獣シャドウビーストをなんて事無いみたいな顔して倒して行ったんだ。弱らせたのは僕なのに。もう少しで僕が倒せたのに』

「そっか、ごめんな…速く全部倒さなきゃって焦ってたんだ。そこまで気が回らなかった」

『謝って済むかよ!アイツ倒せてたらレベルが何個か上がってたはずなのに』

<レベル上げが出来りゃ良いのか?>

『ひぃっ。何だよお前』

<俺はリミルの従魔で家族だ。それでレベルが上げられたら良いのか?>

『あ、う…ああ。レベルを上げるために参加したんだ。なのにそいつのせいで上げられなかった』

<じゃあレベル上げに良い場所連れてってやろうか?>

『ホントに!』

「クライ…どこに連れてく気だ?」

<ダンジョンだ>

『『まだラッセルには無理だ!』』

『なんだよ二人とも…僕だって強くなりたい!』

『駆け出し冒険者をダンジョンに連れていくことはギルドマスターとして許可出来ない』

『白いやつが一緒でも駄目なの?』

『お前はまだ成人もしてないし、最近登録したばかりだろ?ある程度のレベルがないと許可出来ない。お前のために』

しょげてしまった荒熊獣人のラッセルは栗色の髪から見える三角耳と綺麗な毛並みのモフモフ尻尾が垂れて可愛いが、獲物を奪ってしまった罪悪感でリミルはそれどころではなく、何とかしてやれないか必死に考える。

「んー…始まりのダンジョンなら…」

<だろ?>

(クライもそこの事を言ってたのか)

『リミル、始まりのダンジョンって何だ?』

「あーギルレイ、耳を貸してくれ」

『?ああ』

始まりのダンジョンとは、リミルとクライがそう呼んでいるだけで、森の中に存在するダンジョンの1つだ。

リミルが幼少期に住み着いていた場所でもある。
弱い魔物しか発生せず、中は広く、ドロップアイテムも多岐に渡り、魔法の練習や特殊技能スキルの試し、戦闘訓練なども出来たのでとても住みやすかった場所だ。
レベルがガンガン上がった為、直ぐに物足りなくなって移動したが、ドロップアイテム目当てでたまに潜っていた。

一応特殊技能スキル密談レット》を使って周りに聞こえないようにし、掻い摘んで説明する。

『そんなとこがあるのか。だが、確認してからでないと連れて行けないな。それに混乱を招かないようにあまり知られるわけにいかない。だから連れて行けるのはラッセルだけだ。ラッセルにも口止めしないと。でも流石に一人では危ない』

「ギルレイを連れてって確認して貰った後、許可が出たらラッセルに俺とクライも同行して行くからさ」

『そうだな…秘密を守るっていう誓約書をラッセルに書かせるのが条件だ』

「了解」

特殊技能スキルを解除する。

「ラッセル、秘密を守るための誓約書にサイン出来るならレベル上げに連れてってやれるかもしれない」

『書くよ!』

『『ラッセル!少しは疑えよ!』』

『いや、だってギルドマスターと話した結果そういう事になったなら従うでしょ?』

『ギルドマスターは良いがこいつは信用できないだろ!』

『俺達も付いていく!』

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

友人Aの俺は女主人公を助けたらハーレムを築いていた

山田空
ファンタジー
絶対に報われない鬱ゲーというキャッチコピーで売り出されていたゲームを買った俺はそのゲームの主人公に惚れてしまう。 ゲームの女主人公が報われてほしいそう思う。 だがもちろん報われることはなく友人は死ぬし助けてくれて恋人になったやつに裏切られていじめを受ける。 そしてようやく努力が報われたかと思ったら最後は主人公が車にひかれて死ぬ。 ……1ミリも報われてねえどころかゲームをする前の方が報われてたんじゃ。 そう考えてしまうほど報われない鬱ゲーの友人キャラに俺は転生してしまった。 俺が転生した山田啓介は第1章のラストで殺される不幸の始まりとされるキャラクターだ。 最初はまだ楽しそうな雰囲気があったが山田啓介が死んだことで雰囲気が変わり鬱ゲーらしくなる。 そんな友人Aに転生した俺は半年を筋トレに費やす。 俺は女主人公を影で助ける。 そしたらいつのまにか俺の周りにはハーレムが築かれていて

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...