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第1章 変化の始まり
買い物と魔物 #5
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『まさか、堕ちたかもしれないのか?』
『ええ、違っていてほしいのですが…彼の大切な人が魔物に襲われ亡くなったそうです』
『番か?』
『ええ、おそらく。初めて出会った番だったのではと思います』
『そうか…』
「確か番って複数居るんだよね?」
『そうです。竜人族、獣人族、木人族は番を求めます。人種全てが対象となりますが、魔族、小人族、妖精族は番を求めません。ただ、惹かれ合う習性だけが顕著に現れるので恋人や夫婦となる場合が殆どです。そして、番は同時に二人現れた例がありますが、世界は広いので実際に同時に何人現れているのかは確認されていません。同じ街に二人、番がいるというのはそれほど珍しくはないと思います』
「そうなんだ」
『番だからと言って必ずしも付き合うとは限らないとも聞いたぞ?』
『はい。それは仕方ないことですね。よくあるのは、番に既に恋人や連れ合いがいて、番の幸せを思って身を引く等の物理的に不可能な場合です。あとは稀にですが、番を持たない種族の方に惹かれ合う習性が働かず、恋愛対象ではないと拒否される等の気持ち的に不可能な場合もあります。そのどちらでもキツい事ですが、魔物に襲われたとなると憤怒を抱いても仕方ないかと思います』
『だが怒りだけで堕ちたりはしない』
『ええ、ですから何かあったのか心配で…私の杞憂で終われば良いのですが』
「当人は今どこに?」
『今日は午後から店に立つ予定ですのでそろそろ降りてくるかと…』
『こちらに来るか?』
『いえ、従魔連れのお客様の担当には竜人族以外を当てておりますので…』
『噂対策か?』
『ええ』
「こっちに来るぞ!」
階段から降りてきてこちらと目が合った途端に凄い勢いで走ってくるのでテラス席から広い通りに飛び退りリミルとクライは臨戦態勢を整えるが武器等は所持せず防具も普段使いの軽装鎧と軽めのローブのみだ。対して相手は種族特殊能力の竜鱗を身に纏って竜爪を構えている。
『やめなさい!ピギルーイ!』
『リミル!』
ピギルーイがクライに襲いかかったのと同時にピギルーイの肩甲骨辺り目掛けて腕を振り下ろす。飛びかかっていた体は地面にぶつかり。
『カハッ』
息が強制的に出され気絶した。
リミルはピギルーイが息をしているか確認すると両腕で抱えあげ、店に運ぶ。
通りにいた者達やギルレイとグレモスは呆気にとられていたがリミルが店に近づくとそれぞれ動き始めた。
『あ、ありがとうございます。こちらに。クライ様うちの従業員が申し訳ありません』
<問題ない。リミルがやってしまった>
『リミルが戦う?とこ初めてみたよ』
「俺だってギルレイが戦うとこ見たことないんだけど?」
『そのうちあるだろ』
店の中にいた客達も呆然とこちらを見ていたがグレモスが声をかけたらそちらを注視し話を聞いて殆どの者は喜んでいた。
『皆様、お騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。せめてものお詫びとして本日のお食事はお代を頂きません。ごゆっくり食事を堪能していって下さいませ。…スラン、すまないがCLOSEにして来てくれ。今いるお客様のご帰宅は自由だ。注文があれば対応してくれ。副料理長に任せる』
『畏まりました』
『では我々は上へ』
**
従業員の仮眠室に入り、ピギルーイをベッドへ寝かせ、隣のベッドにリミルとギルレイが座り、グレモスは近くにあった椅子を持ってきて座った。クライはリミルの座っているベッドの隣に座っている。
「話を聞ける状態か?また飛びかからないか?」
『ああ、大丈夫だ。《拘束》これで大きな動作はできない』
『ご迷惑をお掛けします』
『こいつ、まだ堕ちてないぞ。堕ちる寸前かもしれないが』
「戻してあげられないのか?」
『話を聞いて見なければなんとも…ただ、堕ちるか堕ちないかは本人次第だな』
『そうですか…できる限り説得しようと思います』
<俺がいて話し合いができるか?>
『いる方が良いんじゃないか?たぶんこいつは話せる知性のある魔物がいると知らないから見かけたら飛びかかるんだろう』
<従魔は全員話せることも知らないのか?>
『たぶんな』
『そういった教育はしませんのでもしかしたら知らないかもしれません。言っておけば従魔を襲わなかったのでしょうか…だとしたら私の責任でもありますね』
『この際それは仕方ないだろう。従魔についてはそれほど知られていないんだから。グレモスの責任だというならそういう知識を広めなかったギルドの責任とも言える。だがこれはギルドの会合で話し合わなければならない案件だ。勝手に広めることはできない』
『ギルドから広まる方が信頼度は高いです』
『ええ、違っていてほしいのですが…彼の大切な人が魔物に襲われ亡くなったそうです』
『番か?』
『ええ、おそらく。初めて出会った番だったのではと思います』
『そうか…』
「確か番って複数居るんだよね?」
『そうです。竜人族、獣人族、木人族は番を求めます。人種全てが対象となりますが、魔族、小人族、妖精族は番を求めません。ただ、惹かれ合う習性だけが顕著に現れるので恋人や夫婦となる場合が殆どです。そして、番は同時に二人現れた例がありますが、世界は広いので実際に同時に何人現れているのかは確認されていません。同じ街に二人、番がいるというのはそれほど珍しくはないと思います』
「そうなんだ」
『番だからと言って必ずしも付き合うとは限らないとも聞いたぞ?』
『はい。それは仕方ないことですね。よくあるのは、番に既に恋人や連れ合いがいて、番の幸せを思って身を引く等の物理的に不可能な場合です。あとは稀にですが、番を持たない種族の方に惹かれ合う習性が働かず、恋愛対象ではないと拒否される等の気持ち的に不可能な場合もあります。そのどちらでもキツい事ですが、魔物に襲われたとなると憤怒を抱いても仕方ないかと思います』
『だが怒りだけで堕ちたりはしない』
『ええ、ですから何かあったのか心配で…私の杞憂で終われば良いのですが』
「当人は今どこに?」
『今日は午後から店に立つ予定ですのでそろそろ降りてくるかと…』
『こちらに来るか?』
『いえ、従魔連れのお客様の担当には竜人族以外を当てておりますので…』
『噂対策か?』
『ええ』
「こっちに来るぞ!」
階段から降りてきてこちらと目が合った途端に凄い勢いで走ってくるのでテラス席から広い通りに飛び退りリミルとクライは臨戦態勢を整えるが武器等は所持せず防具も普段使いの軽装鎧と軽めのローブのみだ。対して相手は種族特殊能力の竜鱗を身に纏って竜爪を構えている。
『やめなさい!ピギルーイ!』
『リミル!』
ピギルーイがクライに襲いかかったのと同時にピギルーイの肩甲骨辺り目掛けて腕を振り下ろす。飛びかかっていた体は地面にぶつかり。
『カハッ』
息が強制的に出され気絶した。
リミルはピギルーイが息をしているか確認すると両腕で抱えあげ、店に運ぶ。
通りにいた者達やギルレイとグレモスは呆気にとられていたがリミルが店に近づくとそれぞれ動き始めた。
『あ、ありがとうございます。こちらに。クライ様うちの従業員が申し訳ありません』
<問題ない。リミルがやってしまった>
『リミルが戦う?とこ初めてみたよ』
「俺だってギルレイが戦うとこ見たことないんだけど?」
『そのうちあるだろ』
店の中にいた客達も呆然とこちらを見ていたがグレモスが声をかけたらそちらを注視し話を聞いて殆どの者は喜んでいた。
『皆様、お騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。せめてものお詫びとして本日のお食事はお代を頂きません。ごゆっくり食事を堪能していって下さいませ。…スラン、すまないがCLOSEにして来てくれ。今いるお客様のご帰宅は自由だ。注文があれば対応してくれ。副料理長に任せる』
『畏まりました』
『では我々は上へ』
**
従業員の仮眠室に入り、ピギルーイをベッドへ寝かせ、隣のベッドにリミルとギルレイが座り、グレモスは近くにあった椅子を持ってきて座った。クライはリミルの座っているベッドの隣に座っている。
「話を聞ける状態か?また飛びかからないか?」
『ああ、大丈夫だ。《拘束》これで大きな動作はできない』
『ご迷惑をお掛けします』
『こいつ、まだ堕ちてないぞ。堕ちる寸前かもしれないが』
「戻してあげられないのか?」
『話を聞いて見なければなんとも…ただ、堕ちるか堕ちないかは本人次第だな』
『そうですか…できる限り説得しようと思います』
<俺がいて話し合いができるか?>
『いる方が良いんじゃないか?たぶんこいつは話せる知性のある魔物がいると知らないから見かけたら飛びかかるんだろう』
<従魔は全員話せることも知らないのか?>
『たぶんな』
『そういった教育はしませんのでもしかしたら知らないかもしれません。言っておけば従魔を襲わなかったのでしょうか…だとしたら私の責任でもありますね』
『この際それは仕方ないだろう。従魔についてはそれほど知られていないんだから。グレモスの責任だというならそういう知識を広めなかったギルドの責任とも言える。だがこれはギルドの会合で話し合わなければならない案件だ。勝手に広めることはできない』
『ギルドから広まる方が信頼度は高いです』
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