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本編
第81話
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壁の時計が20時半を回ったころ、彼らはようやく食卓につく。
タビトが作ってくれたカレーは、どこか懐かしい味がした。
「とってもおいしいです」
笑みをこぼしつつ言うと、タビトも口をもぐもぐさせながら目で笑う。彼は米ではなく少量のロールドオーツにカレーをかけて食べている。体を絞っているときは糖質を控えているらしい。
「おいしいね。――でも、飲み物……水でよかったの?俺に付き合ってくれなくてもよかったのに」
事務所の大人たち、特に高級料理店に連れて行ってくれる幹部連中は、食事の際の飲み物にはこだわるべきだと口を揃える。チカルもきっとこだわりがあるに違いないと考え、ビール、ワイン、ウイスキーなどの酒類から、フルーツジュース、牛乳、ヨーグルトドリンクまで……たいていの飲み物は用意できると伝えたが、彼女は水でいいという。彼は遠慮しているのだろうと思い再び訊ねたのだった。
「うちの事務所の社長が『カレーとハイボールの相性は最高』って言ってたよ。ハイボールってウイスキーのソーダ割りだよね。炭酸あるし、作ってあげようか?」
「ありがたいですが……お水で十分です」
「もしかしてお酒苦手?」
タビトはチカルのグラスにレモン水を注ぎ足してやりながら訊ねる。
「嗜む程度です。……タビト君は?」
「めったに飲まない。体に合わないわけじゃないんだけど……あんま好きじゃなくて」
チカルが驚いたような顔をして手を止めると、タビトはわずかに口角を上げる。
「棚にたくさんお酒があるから、酒飲みだと思ってたんでしょ?あれはうちのメンバーが買ってきたやつ。ラム、ジン、ウォッカ、ウイスキー、焼酎、日本酒。ここに持ち込んで、ちょっとだけ飲んで置いていっちゃうの。俺はアルコールの独特なにおいが苦手でほとんど飲んだことないんだよね……飲み会の雰囲気自体はすっごく楽しいし大好きなんだけどさ」
チカルは、ふむと頷いた。ショービズの世界に生きていると聞けば、飲みの席に呼ばれ羽目をはずすことも多いだろうという勝手な先入観があるが――まだ少年の面影を残しているからだろうか、酒と無縁の生活と言われても妙に納得してしまう。
「飲まないに越したことはないですよ」
「そうかな。みんな楽しそうにしてるから、飲める人が羨ましいよ。付き合い程度に飲めた方がいいんだろうなって思ってはいるし……今度またチャレンジしてみようかな」
「羨ましいだなんて……酒飲みなんて碌でもないのに」
すこし顔をしかめそう言って、水の入ったグラスを傾ける。そんな彼女をじっと見つめ、タビトは目を細めて薄く笑った。
「その言い方……もしかしてお酒で失敗した経験あり?」
チカルはちびちびと水を飲みながら、口をつぐんでいる。
「図星でしょ」
「……」
無邪気に覗き込んでくる眼差しから逃げるように顔を逸らして、グラスをスプーンに持ち替えた。
「ホズミさんは飲みすぎて前後不覚になって、赤羽から埼玉の草加市まで歩いていっちゃったことがあるって言ってたけど、そういうたぐいの失敗?」
「……」
「否定しないってことは、そうなんだ?」
「違います」きっぱりと言い、「――若いころに飲み潰れたことが一度だけ」
彼女はとうとう観念して答える。
「お酒を飲む人って、けっこういろいろやらかしてるよね」タビトは愉快そうに笑って、「居酒屋のトイレで寝ちゃったり、お店ののぼりを持って家に帰っちゃったり……ゴミ捨て場で目が覚めたって話も聞いたことある」
映画配給会社に勤めていたときの同僚が、このすべてのことをやらかしていることを思い出し、チカルは思わず笑ってしまう。
「お酒は怖いのよ、タビト君」彼女は幼い子どもに諭すように続ける。「飲むにしても、お気を付けて。深酒すると警戒心が下がって隙ができますから。……経験者が言うのだから本当よ?」
素直に頷き、にこりと笑ったタビトだったが心中穏やかではない。
(警戒心が下がる、って……)
この凛とした彼女が、酒を飲んで隙を見せる……誰に?あの男に?それとも別の誰かだろうか。彼は悶々としながら、カレーを旨そうに頬張っているチカルを見遣る。
ひとくちが大きい。だからといって品性に欠けるというのでもないから不思議だった。
大口を開けて食べていても、咀嚼音を立てたり皿に顔を突っ込むように背中を丸めたりはしていない。背筋をしゃんと伸ばして座り、カトラリーと皿がぶつかる音もほとんど立てずにカレーを掬いあげて、小さい唇を限界まで開けてせっせと運んでいる。
スプーンの扱い方やグラスを持ち傾けるしぐさ。密かに観察していてわかった。この人は所作に気品があるのだ。これまでは人が食事しているところになど興味はなかったが、不思議といつまでも見ていたくなる。
「――今度始まる新企画で、料理に挑戦しようと思ってるんだよね」
酒の席でのことについてチカルに聞きたいことは山ほどあったが、強引に話題を変えて気持ちを鎮める。
「動画配信プラットフォームにウル・ラドのチャンネルがあって、そこにいろんな動画を上げてファンに観てもらってるんだけど……今度、メンバー個人で企画を考えてそれを撮影することになってるんだ」
相槌を打ったチカルは、続く言葉に熱心に耳を傾ける。
「忙しくてしばらく料理してなかったからちょっと不安だったけど……今日チカルさんと作ってみて、やっぱり楽しいって感じたし、やってみようと思ってる」
彼は言い淀み、スプーンを皿に置いて姿勢を正すと改めて唇を開いた。
「練習の一環として、チカルさんのためにごはんを作ってもいい?スムーズに撮影が進むように腕を上げておきたいんだ」
また突飛なことを……と面食らっていると、その心中を察したタビトは拒否の言葉を口にさせまいとするように言葉を重ねる。
「疲れてるとき自分のために料理するのはしんどくて無理だけど、チカルさんのためならがんばれる。勘が戻るまででいいから」
お願い!と手を合わせるタビト。本日2回目の“お願い”だ。チカルは困ったように笑った。
「私でよければ」
「やった!」
満面の笑みを浮かべたとき、彼の口はハート型になる。チカルはその笑顔を、単純に好ましく思った。見ているとしあわせな気持ちになり、つられて笑ってしまう。
「でも……予定がなかなか合わないですよね。私が来るときに毎回タビト君がいてくれるとは限りませんし」
「新曲発売前後は忙しいけど……がんばって、仕事早く終わらせる!寄り道しないで帰るようにするから」
「私もタビト君のご都合にあわせてスケジュールを調整します」
「ありがとう、チカルさん」屈託のない笑顔が弾ける。「なにを作ろうかな……リクエストある?なんでもいいよ」
「なんでも?」
「うん。初めて作るやつでも大丈夫。レシピさえあれば」
「面倒な料理をお願いしても?」
「もちろん。むしろ手間のかかる料理の方がいいな」
タビトの本気を見たチカルはそっと息を吐き、あきらめたように笑う。
「では……ハンバーグをお願いできますか?」
「まかせて!」彼は瞳を輝かせ、「とびきりおいしいのをご馳走するね。日にちはあとで決めよ!」
わくわくしている様子のタビトを穏やかな眼差しで見つめながら、彼女は弟のリョウのことを思い出していた。
彼がアメリカに旅立つ日、ふたりで空港のレストランに入り、ふたり揃って頼んだのがハンバーグランチだった。リョウは目に涙をためていたが、かなしみや淋しさを悟られたくなかったのか、平静を装って食べていた。
味は覚えていない。それ以来この料理を見ると当時の記憶で胸が締めつけられるため避けてきたのだが、タビトが作ってくれたものを食べたら悲しい思い出が書き換えられるのではないかと思ったのだ。陰を陽に変える、そういう力が彼にはあると、特別な根拠もなくそう感じた。
「ハンバーグ作るのなんて何年ぶりだろ。楽しみ」
タビトは声を弾ませ、カレーを口に運ぶ。
「本当に料理をつくるのがお好きなんですね」
「普段は疲れててそれどころじゃないけどね。この業界を引退したら田舎でレストランかカフェを開いて、お客さんのためにごはん作りながらのんびり暮らしたいな」
こんなに若くして引退のことまで考えているのかとチカルは密かに驚愕する。アイドルには、槿花一日の栄というせつない言葉がぴったりに思う。
その後もふたりは昔からの友人同士のように仲睦まじく語り合った。そうして夢中になっているうちに、いつのまにか時計は21時半を回ろうとしている。
「ごちそうさまでした」
手を合わせてから視線を上げると、同じく手を合わせているタビトと目が合う。彼はにんまりと笑って、
「一緒に食事できてよかった。ありがと」
やわらかな声音でそう言う。
「君に“お願い”されたら、誰も断れないんじゃないかしら」チカルはちいさく息をついて口角をあげる。「それをわかっているんでしょう?悪いひとね」
「チカルさんにも有効なのがわかったから、これからどんどん“お願い”使っちゃおっと」
そう言っていたずらっぽく笑うので、チカルの口元もついついほころぶ。
「今日、楽しんでもらえた?」
テーブルに頬杖をついたタビトが、愛らしい笑みを浮かべたまま訊ねる。チカルは深く頷いた。
その瞬間、ふたりの表情が、交差する視線が――わずかに熱を帯びる。彼女はその熱に心をさらわれそうになりながら、タビトをまっすぐに見つめた。
「ありがとう」
チカルの言葉に、彼は頬を染めてくしゃっと笑う。その笑顔は子どものように幼く、黎明の空を思わせる美しさを湛えていた。
タビトが作ってくれたカレーは、どこか懐かしい味がした。
「とってもおいしいです」
笑みをこぼしつつ言うと、タビトも口をもぐもぐさせながら目で笑う。彼は米ではなく少量のロールドオーツにカレーをかけて食べている。体を絞っているときは糖質を控えているらしい。
「おいしいね。――でも、飲み物……水でよかったの?俺に付き合ってくれなくてもよかったのに」
事務所の大人たち、特に高級料理店に連れて行ってくれる幹部連中は、食事の際の飲み物にはこだわるべきだと口を揃える。チカルもきっとこだわりがあるに違いないと考え、ビール、ワイン、ウイスキーなどの酒類から、フルーツジュース、牛乳、ヨーグルトドリンクまで……たいていの飲み物は用意できると伝えたが、彼女は水でいいという。彼は遠慮しているのだろうと思い再び訊ねたのだった。
「うちの事務所の社長が『カレーとハイボールの相性は最高』って言ってたよ。ハイボールってウイスキーのソーダ割りだよね。炭酸あるし、作ってあげようか?」
「ありがたいですが……お水で十分です」
「もしかしてお酒苦手?」
タビトはチカルのグラスにレモン水を注ぎ足してやりながら訊ねる。
「嗜む程度です。……タビト君は?」
「めったに飲まない。体に合わないわけじゃないんだけど……あんま好きじゃなくて」
チカルが驚いたような顔をして手を止めると、タビトはわずかに口角を上げる。
「棚にたくさんお酒があるから、酒飲みだと思ってたんでしょ?あれはうちのメンバーが買ってきたやつ。ラム、ジン、ウォッカ、ウイスキー、焼酎、日本酒。ここに持ち込んで、ちょっとだけ飲んで置いていっちゃうの。俺はアルコールの独特なにおいが苦手でほとんど飲んだことないんだよね……飲み会の雰囲気自体はすっごく楽しいし大好きなんだけどさ」
チカルは、ふむと頷いた。ショービズの世界に生きていると聞けば、飲みの席に呼ばれ羽目をはずすことも多いだろうという勝手な先入観があるが――まだ少年の面影を残しているからだろうか、酒と無縁の生活と言われても妙に納得してしまう。
「飲まないに越したことはないですよ」
「そうかな。みんな楽しそうにしてるから、飲める人が羨ましいよ。付き合い程度に飲めた方がいいんだろうなって思ってはいるし……今度またチャレンジしてみようかな」
「羨ましいだなんて……酒飲みなんて碌でもないのに」
すこし顔をしかめそう言って、水の入ったグラスを傾ける。そんな彼女をじっと見つめ、タビトは目を細めて薄く笑った。
「その言い方……もしかしてお酒で失敗した経験あり?」
チカルはちびちびと水を飲みながら、口をつぐんでいる。
「図星でしょ」
「……」
無邪気に覗き込んでくる眼差しから逃げるように顔を逸らして、グラスをスプーンに持ち替えた。
「ホズミさんは飲みすぎて前後不覚になって、赤羽から埼玉の草加市まで歩いていっちゃったことがあるって言ってたけど、そういうたぐいの失敗?」
「……」
「否定しないってことは、そうなんだ?」
「違います」きっぱりと言い、「――若いころに飲み潰れたことが一度だけ」
彼女はとうとう観念して答える。
「お酒を飲む人って、けっこういろいろやらかしてるよね」タビトは愉快そうに笑って、「居酒屋のトイレで寝ちゃったり、お店ののぼりを持って家に帰っちゃったり……ゴミ捨て場で目が覚めたって話も聞いたことある」
映画配給会社に勤めていたときの同僚が、このすべてのことをやらかしていることを思い出し、チカルは思わず笑ってしまう。
「お酒は怖いのよ、タビト君」彼女は幼い子どもに諭すように続ける。「飲むにしても、お気を付けて。深酒すると警戒心が下がって隙ができますから。……経験者が言うのだから本当よ?」
素直に頷き、にこりと笑ったタビトだったが心中穏やかではない。
(警戒心が下がる、って……)
この凛とした彼女が、酒を飲んで隙を見せる……誰に?あの男に?それとも別の誰かだろうか。彼は悶々としながら、カレーを旨そうに頬張っているチカルを見遣る。
ひとくちが大きい。だからといって品性に欠けるというのでもないから不思議だった。
大口を開けて食べていても、咀嚼音を立てたり皿に顔を突っ込むように背中を丸めたりはしていない。背筋をしゃんと伸ばして座り、カトラリーと皿がぶつかる音もほとんど立てずにカレーを掬いあげて、小さい唇を限界まで開けてせっせと運んでいる。
スプーンの扱い方やグラスを持ち傾けるしぐさ。密かに観察していてわかった。この人は所作に気品があるのだ。これまでは人が食事しているところになど興味はなかったが、不思議といつまでも見ていたくなる。
「――今度始まる新企画で、料理に挑戦しようと思ってるんだよね」
酒の席でのことについてチカルに聞きたいことは山ほどあったが、強引に話題を変えて気持ちを鎮める。
「動画配信プラットフォームにウル・ラドのチャンネルがあって、そこにいろんな動画を上げてファンに観てもらってるんだけど……今度、メンバー個人で企画を考えてそれを撮影することになってるんだ」
相槌を打ったチカルは、続く言葉に熱心に耳を傾ける。
「忙しくてしばらく料理してなかったからちょっと不安だったけど……今日チカルさんと作ってみて、やっぱり楽しいって感じたし、やってみようと思ってる」
彼は言い淀み、スプーンを皿に置いて姿勢を正すと改めて唇を開いた。
「練習の一環として、チカルさんのためにごはんを作ってもいい?スムーズに撮影が進むように腕を上げておきたいんだ」
また突飛なことを……と面食らっていると、その心中を察したタビトは拒否の言葉を口にさせまいとするように言葉を重ねる。
「疲れてるとき自分のために料理するのはしんどくて無理だけど、チカルさんのためならがんばれる。勘が戻るまででいいから」
お願い!と手を合わせるタビト。本日2回目の“お願い”だ。チカルは困ったように笑った。
「私でよければ」
「やった!」
満面の笑みを浮かべたとき、彼の口はハート型になる。チカルはその笑顔を、単純に好ましく思った。見ているとしあわせな気持ちになり、つられて笑ってしまう。
「でも……予定がなかなか合わないですよね。私が来るときに毎回タビト君がいてくれるとは限りませんし」
「新曲発売前後は忙しいけど……がんばって、仕事早く終わらせる!寄り道しないで帰るようにするから」
「私もタビト君のご都合にあわせてスケジュールを調整します」
「ありがとう、チカルさん」屈託のない笑顔が弾ける。「なにを作ろうかな……リクエストある?なんでもいいよ」
「なんでも?」
「うん。初めて作るやつでも大丈夫。レシピさえあれば」
「面倒な料理をお願いしても?」
「もちろん。むしろ手間のかかる料理の方がいいな」
タビトの本気を見たチカルはそっと息を吐き、あきらめたように笑う。
「では……ハンバーグをお願いできますか?」
「まかせて!」彼は瞳を輝かせ、「とびきりおいしいのをご馳走するね。日にちはあとで決めよ!」
わくわくしている様子のタビトを穏やかな眼差しで見つめながら、彼女は弟のリョウのことを思い出していた。
彼がアメリカに旅立つ日、ふたりで空港のレストランに入り、ふたり揃って頼んだのがハンバーグランチだった。リョウは目に涙をためていたが、かなしみや淋しさを悟られたくなかったのか、平静を装って食べていた。
味は覚えていない。それ以来この料理を見ると当時の記憶で胸が締めつけられるため避けてきたのだが、タビトが作ってくれたものを食べたら悲しい思い出が書き換えられるのではないかと思ったのだ。陰を陽に変える、そういう力が彼にはあると、特別な根拠もなくそう感じた。
「ハンバーグ作るのなんて何年ぶりだろ。楽しみ」
タビトは声を弾ませ、カレーを口に運ぶ。
「本当に料理をつくるのがお好きなんですね」
「普段は疲れててそれどころじゃないけどね。この業界を引退したら田舎でレストランかカフェを開いて、お客さんのためにごはん作りながらのんびり暮らしたいな」
こんなに若くして引退のことまで考えているのかとチカルは密かに驚愕する。アイドルには、槿花一日の栄というせつない言葉がぴったりに思う。
その後もふたりは昔からの友人同士のように仲睦まじく語り合った。そうして夢中になっているうちに、いつのまにか時計は21時半を回ろうとしている。
「ごちそうさまでした」
手を合わせてから視線を上げると、同じく手を合わせているタビトと目が合う。彼はにんまりと笑って、
「一緒に食事できてよかった。ありがと」
やわらかな声音でそう言う。
「君に“お願い”されたら、誰も断れないんじゃないかしら」チカルはちいさく息をついて口角をあげる。「それをわかっているんでしょう?悪いひとね」
「チカルさんにも有効なのがわかったから、これからどんどん“お願い”使っちゃおっと」
そう言っていたずらっぽく笑うので、チカルの口元もついついほころぶ。
「今日、楽しんでもらえた?」
テーブルに頬杖をついたタビトが、愛らしい笑みを浮かべたまま訊ねる。チカルは深く頷いた。
その瞬間、ふたりの表情が、交差する視線が――わずかに熱を帯びる。彼女はその熱に心をさらわれそうになりながら、タビトをまっすぐに見つめた。
「ありがとう」
チカルの言葉に、彼は頬を染めてくしゃっと笑う。その笑顔は子どものように幼く、黎明の空を思わせる美しさを湛えていた。
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