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第七章 天使転輪
第176話 霧と糸(一)
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「ようやく会えたな、宗谷」
糸音は開口早々、針剣を抜き、宗谷へと突き刺した。しかし、宗谷は上体を逸らして避ける。そして掴まれた腕を振り解くと霧となり消えて少し距離をとった場所へ再び現れた。糸音は宗谷を警戒しつつ真宵の方を振り返り、ゆっくりと駆け寄る。
「大丈夫か?」
「ええ、ありがとうございます」
「お前は休んでろ。それで他のみんなは?」
「それがややこしい事になりまして。簡単に言うと分断されました。奴の口ぶりからここには誰もいないかもしれません」
「そうか。詳しい話は後で聞かせてくれ。今はとりあえずこいつだ」
ゆっくりと立ち上がり宗谷へと向き直る。
「夕凪糸音、どうやってここへ来た。ここへは簡単には上陸できないはずだが?」
「お前は仲間に裏切られたってことだよ。それとも私の友人が優秀なだけかな」
「なるほど。波風詩織、やつも来ているのか?内通者がこちらにもいたということか。全く抜け目のない奴だ」
「よくわかったな。まぁそうだな。でも詩織はこの場所にはいない。ここへ着いた時別れた」
「まぁいい。奴は誰の味方でもないことは知っている。それを咎めるのもまた違うからな。それで、お前は何をしに来たんだ?」
「はっ、何って、お前との決着をつけに来たんだよ」
「なるほど、記憶を取り戻したか。お前は思ったよりも厄介なやつだったようだな。だが、私に勝てるとでも」
「当たり前だ。勝てなきゃ来ない」
「その自信いつまで続くのか」
そう言うと宗谷は姿を消した。次の瞬間、糸音の真後ろから宗谷の手が伸びてきて糸音の首を掴みにかかった。しかし、糸音はまるでわかっていたかの様に振り返る。糸音の首に触れた瞬間、目にも止まらない速さの拳による打撃が宗谷の腕に当たった。鈍い音が鳴り、宗谷は再び消えて距離をとった場所へと姿を現す。
「まさか、私の異能を見破ったのか?」
宗谷は腕を摩りながら糸音を見る。
(何か違うな。こいつは本当にあの夕凪糸音なのか??)
「少し外したか。何回目だと思っている。私はお前の異能を見たのはこれで二回目だ。初回の一回なら無理だっただろう。だから、お前は私と初めて会った時に仕留めるべきだったんだ」
その光景を見て真宵は素直に驚いていた。
(さっきの動きはなんだ?まるで見えなかった。宗谷の動きを先輩は予測していた。さらにわざと体に触れさせている様にも見えた。まさか、先輩はすでに知っていたのか!?実体化させ、触れた瞬間にそこへ打撃を打ち込んだ。先輩の口ぶりから宗谷と対峙したのは初めてではないと思うが、それでも、さっきの様な動きはできない。事実、目の前の宗谷も見た感じ少し焦っている様にも見える)
「小細工は私には効かない。まぁ来るなら来てみなよ。わかるから」
「ガキがよく吠えるな。お前など夕凪糸衛にも及ばん」
糸音はその名前を聞いて少し目を見開く。
「師匠を知っているのか?」
「あぁ、よく知っているさ。私にとって生涯で強敵と呼べるのはやつだけだからな。だからこそわかる、お前はダメだ。奴にも似ても似つかんよ」
「ふん、別に似せてるわけじゃないが気に入らない言い方だ」
「なら、証明してやろうお前の弱さを」
そう言うと宗谷は分身体を無数に作りだして糸音へと襲いかからせた。がしかし、糸音は一歩も動かずに、ただただそれらが来るのを待っていた。次の瞬間、糸音へ宗谷の魔の手が襲いかかろうとしたその時、糸音は針剣を抜刀して一刀で薙ぎ払った。
「!?」
「すごい、、たった一回の抜刀で、、」
宗谷の霧で作られた無数の分身体はたったの一回の抜刀で霧散した。そして、糸音の抜刀に驚いていた宗谷は目の前に迫ってきていた糸音に気づかなかった。
「しまっ、、」
「遅い」
糸音は上方から針剣を一刀、振り下ろしたがこれもやはり分身体であった。
「もらったぞ」
宗谷は再び消えて同じ場所に現れると糸音の心臓目掛けて懐に隠していた短剣で突き刺す。
「!?」
しかし、それは糸音には届かず。糸音は宗谷が突き刺してきた短剣を脇腹と腕に挟んで動きを止めた。そして、糸音のもう片方の拳が宗谷の顔面に炸裂した。そのまま宗谷は後方へと吹っ飛んでいった。
「だから、小細工はやめろと言っただろ」
糸音は開口早々、針剣を抜き、宗谷へと突き刺した。しかし、宗谷は上体を逸らして避ける。そして掴まれた腕を振り解くと霧となり消えて少し距離をとった場所へ再び現れた。糸音は宗谷を警戒しつつ真宵の方を振り返り、ゆっくりと駆け寄る。
「大丈夫か?」
「ええ、ありがとうございます」
「お前は休んでろ。それで他のみんなは?」
「それがややこしい事になりまして。簡単に言うと分断されました。奴の口ぶりからここには誰もいないかもしれません」
「そうか。詳しい話は後で聞かせてくれ。今はとりあえずこいつだ」
ゆっくりと立ち上がり宗谷へと向き直る。
「夕凪糸音、どうやってここへ来た。ここへは簡単には上陸できないはずだが?」
「お前は仲間に裏切られたってことだよ。それとも私の友人が優秀なだけかな」
「なるほど。波風詩織、やつも来ているのか?内通者がこちらにもいたということか。全く抜け目のない奴だ」
「よくわかったな。まぁそうだな。でも詩織はこの場所にはいない。ここへ着いた時別れた」
「まぁいい。奴は誰の味方でもないことは知っている。それを咎めるのもまた違うからな。それで、お前は何をしに来たんだ?」
「はっ、何って、お前との決着をつけに来たんだよ」
「なるほど、記憶を取り戻したか。お前は思ったよりも厄介なやつだったようだな。だが、私に勝てるとでも」
「当たり前だ。勝てなきゃ来ない」
「その自信いつまで続くのか」
そう言うと宗谷は姿を消した。次の瞬間、糸音の真後ろから宗谷の手が伸びてきて糸音の首を掴みにかかった。しかし、糸音はまるでわかっていたかの様に振り返る。糸音の首に触れた瞬間、目にも止まらない速さの拳による打撃が宗谷の腕に当たった。鈍い音が鳴り、宗谷は再び消えて距離をとった場所へと姿を現す。
「まさか、私の異能を見破ったのか?」
宗谷は腕を摩りながら糸音を見る。
(何か違うな。こいつは本当にあの夕凪糸音なのか??)
「少し外したか。何回目だと思っている。私はお前の異能を見たのはこれで二回目だ。初回の一回なら無理だっただろう。だから、お前は私と初めて会った時に仕留めるべきだったんだ」
その光景を見て真宵は素直に驚いていた。
(さっきの動きはなんだ?まるで見えなかった。宗谷の動きを先輩は予測していた。さらにわざと体に触れさせている様にも見えた。まさか、先輩はすでに知っていたのか!?実体化させ、触れた瞬間にそこへ打撃を打ち込んだ。先輩の口ぶりから宗谷と対峙したのは初めてではないと思うが、それでも、さっきの様な動きはできない。事実、目の前の宗谷も見た感じ少し焦っている様にも見える)
「小細工は私には効かない。まぁ来るなら来てみなよ。わかるから」
「ガキがよく吠えるな。お前など夕凪糸衛にも及ばん」
糸音はその名前を聞いて少し目を見開く。
「師匠を知っているのか?」
「あぁ、よく知っているさ。私にとって生涯で強敵と呼べるのはやつだけだからな。だからこそわかる、お前はダメだ。奴にも似ても似つかんよ」
「ふん、別に似せてるわけじゃないが気に入らない言い方だ」
「なら、証明してやろうお前の弱さを」
そう言うと宗谷は分身体を無数に作りだして糸音へと襲いかからせた。がしかし、糸音は一歩も動かずに、ただただそれらが来るのを待っていた。次の瞬間、糸音へ宗谷の魔の手が襲いかかろうとしたその時、糸音は針剣を抜刀して一刀で薙ぎ払った。
「!?」
「すごい、、たった一回の抜刀で、、」
宗谷の霧で作られた無数の分身体はたったの一回の抜刀で霧散した。そして、糸音の抜刀に驚いていた宗谷は目の前に迫ってきていた糸音に気づかなかった。
「しまっ、、」
「遅い」
糸音は上方から針剣を一刀、振り下ろしたがこれもやはり分身体であった。
「もらったぞ」
宗谷は再び消えて同じ場所に現れると糸音の心臓目掛けて懐に隠していた短剣で突き刺す。
「!?」
しかし、それは糸音には届かず。糸音は宗谷が突き刺してきた短剣を脇腹と腕に挟んで動きを止めた。そして、糸音のもう片方の拳が宗谷の顔面に炸裂した。そのまま宗谷は後方へと吹っ飛んでいった。
「だから、小細工はやめろと言っただろ」
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