天使ノ探求者

はなり

文字の大きさ
上 下
172 / 199
第七章 天使転輪

第171話 森の中で(ニ)

しおりを挟む
真宵は宗谷の一挙手一投足に集中して、警戒を怠らず一定の距離を保ったまま、しばらく動かなかった。
 
「どうしたんだ?そっちがやる気だから待っているんだが」
 
(まずは、警戒しつつ一手をきるか)
 
真宵はナイフを取り出し、宗谷へと駆け出した。宗谷は不敵な笑みを浮かべて真宵の動きを見ていた。
 
(ふん、余裕ってか?舐められてるな)
 
真宵は宗谷との間合いに入るとナイフ宙へと投げた。
 
「ん?」
 
バンッ!バンッ!
 
真宵は懐から銃を取り出して至近距離で宗谷へと二発の弾丸を放った。
 
「その程度の攻撃、私へは届かないぞ」
 
しかし、真宵の放った弾丸は宗谷の体をすり抜ける。
 
「まだだ!」
 
真宵の放った弾丸は宗谷の向こう側へと、上下に交差する様に飛んでいくと交差線上で弾丸はぶつかり合い、一発は上へと跳ね上がると上空に未だ舞っているナイフへと当たり、そのままさらに上空でナイフは一人でに回転する。
 
「何をするつもりかは知らんが無駄なことだ」
 
「俺の放った弾丸は一発も無駄にしないさ」
 
バンッ!
 
真宵は宗谷の足元にある地面へと弾を放った。
 
「一体どこを狙っているんだ?」
 
真宵の放った弾丸は地面に着弾することなく弾かれた。弾かれた弾丸は宗谷の背後をとる。
 
「なるほど。一発目に同時に放った弾のもう片方は地面にめり込んでいたのか。そして、それに当てて私へと弾を弾かせた。やり方は見事だがしかし、私に見破られてしまっては意味がない」
 
後方から来る弾丸は宗谷をすり抜けた。
 
「そして上空に未だに舞っているナイフは時間差で地面へと、いや私の真上から落ちてくる、か」
 
上空を見上げた宗谷は自身に向かって落ちてくるナイフを掴み取ると真宵に向ける。
 
「悪くないやり方だ。威力はともかく、頭の回転の速さは見事だな」
 
真宵は懐からまたもやナイフを取り出し宗谷へと駆け出した。宗谷は手にしたナイフで真宵からの斬り込みをいなしていく。
 
「速さも申し分ない。一体どこでその技術を学んだ?」
 
「まぁね、いい師のおかげかな」
 
「そうか。たしかに動きがどことなくに似ているな。だからか、読みやすい!」
 
真宵は一瞬の隙をつかれて腕を掴まれた。そして、そのまま全身を宙へと浮かされると思いっきり地面へと叩きつけられた。
 
ドンッ!
 
「ガハッ!!」
 
「よくこれで今まで生き残れたものだ。いや、すまない、そういえばお前はここへくる前から連戦だったか。まぁそうでなくても弱すぎるがな。戦い方のセンスはいいがまだまだだな。ん?」
 
真宵は腕を獣化させて、宗谷の腕を掴み返すと背中に羽を生やし、宗谷ごと空へと一気に宙へと舞い上がった。
 
「なるほど。そういえばお前は鷹人間だったか、全く奇妙なものだ。しかし、お前のはそんなものではない」
 
「へっ、何を言っているのかさっぱりだな!お返しだ、落ちろ!」
 
真宵は上空から宗谷を地面へと叩きつける。
 
「獣の力になると筋力が増すのか。中々の威力だ。これでは空中で体制がとれないな。しかし、私の異能の前では無意味だ」
 
宗谷は地面へとぶつかると霧になり霧散した。
 
(どこだ!?)
 
真宵は辺りを見回す。宗谷が霧になった瞬間、気配が無くなって宗谷を見失った。
 
「ここだ」
 
「!?」
 
宗谷の声は真宵の真後ろ少し上の方から聞こえてきた。次の瞬間、振り返るより速く宗谷の踵落としが真宵へと炸裂する。そのまま真宵は地上へと真っ逆さまに落ちていき地面へと激突した。
 
宗谷は霧になり、再び地上に倒れている真宵のそばで霧から現れる。
ゆっくりと真宵は膝に手をつきながら立ち上がる。
 
「ほう、まだ立てるのか。思ったよりも頑丈な奴だな」
 
「はぁ、、はぁ、、」

(なんて力だ。片腕で人一人を宙へ浮かせて地面に叩きつけるなんて。それだけでも力は凄まじいことはわかる。後は、能力の特性さえわかれば戦える。それに何故だかはわからんが、さっき腕を掴めた!ということは攻撃も当てれる可能性があるということか。しかし、何故掴めた?あいつが能力を解除したからか?)
 
「一つ言っておくが、助けなど絶対に来ないぞ」
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日は僕の命日

あやめ_綾眼
ファンタジー
孤独なティネスは行く先で、夢を追う少女と出会う。 しかし2人を取り巻く環境は刻々と変化を続けていく。 精巧な活字による感情表現に力を入れています。よかったら読んでいって下さい。

想い出

シナモン
ライト文芸
届けたい想いをテーマにした散文・詩etc.

煌めくルビーに魅せられて

相沢蒼依
BL
バイト帰りにすれ違った人物に、いきなり襲われて―― バイトを掛け持ちして大学に通う片桐瑞稀。夜遅くの帰宅途中に、意外な人物に出会ったのがはじまりだった。

猫スタ募集中!(=^・・^=)

五十鈴りく
ライト文芸
僕には動物と話せるという特技がある。この特技をいかして、猫カフェをオープンすることにした。というわけで、一緒に働いてくれる猫スタッフを募集すると、噂を聞きつけた猫たちが僕のもとにやってくる。僕はそんな猫たちからここへ来た経緯を聞くのだけれど―― ※小説家になろう様にも掲載させて頂いております。

背守り

佐藤たま
ライト文芸
 七海は夫を突然の病で亡くし、幼い娘ねねと二人で生きていくことになる。職探しと保育園探しに奔走する中で、予期せぬ妊娠が発覚。  悩みながらも新しい命を迎える決意をするが、生活は厳しさを増す。そんな時、見知らぬ女性が現れ、七海に手を差し伸べる。  彼女は七海の亡き母の親友で、母から「娘を助けてほしい」と頼まれていたのだという。七海はその女性のアパートに移り住み、始めるた内職仕事は思わぬ過去の記憶を呼び覚まし…

ノアのワタシブネ ~フェリー会社 ルートボエニアの営業日誌~

小倉 悠綺(Yuki Ogura)
ライト文芸
 父の跡を継いで船会社ルートボエニアの社長になったノア・ディストピアは、全く船会社の仕事を知らない素人社長だった。  一日でも早く仕事を覚えようと業務に営業に経理と奔走する中、ある日会社が大手船会社、王国汽船に買収される危機に瀕していることを知る。  厳しい船出を迫られたノアは会社を守るため、ある大きな決断をしたのだった――! ※他サイトにも掲載

エッセイのプロムナード

多谷昇太
ライト文芸
題名を「エッセイのプロムナード」と付けました。河畔を散歩するようにエッセイのプロムナードを歩いていただきたく、そう命名したのです。歩く河畔がさくらの時期であったなら、川面には散ったさくらの花々が流れているやも知れません。その行く(あるいは逝く?)花々を人生を流れ行く無数の人々の姿と見るならば、その一枚一枚の花びらにはきっとそれぞれの氏・素性や、個性と生き方がある(あるいはあった)ことでしょう。この河畔があたかも彼岸ででもあるかのように、おおらかで、充たされた気持ちで行くならば、その無数の花々の「斯く生きた」というそれぞれの言挙げが、ひとつのオームとなって聞こえて来るような気さえします。この仏教の悟りの表出と云われる聖音の域まで至れるような、心の底からの花片の声を、その思考や生き様を綴って行きたいと思います。どうぞこのプロムナードを時に訪れ、歩いてみてください…。 ※「オーム」:ヘルマン・ヘッセ著「シッダールタ」のラストにその何たるかがよく描かれています。

他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。    第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。  その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。  追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。  ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。  私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。

処理中です...