天使ノ探求者

はなり

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第七章 天使転輪

第169話 弱虫

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いつからだろうか私は毎晩、妙な夢にうなされていた。それはいつも同じ夢、顔は誰なのかわからなかった、でもその誰かわからない子供達に、いつも感謝の言葉や戯れの言葉をかけられる。全員が憧れの眼差しというのだろうか?そういう目で、私のことを見ていた。そして、その夢の終わりには必ず、血の結末が待っている。私は両手に誰のだかわからない、温かい血がべっとりとついていた。そして、私の周りには血まみれの、顔のない子供達が横たわっていた。何故だがその手についた温もりの感触はしっかりと覚えていた。私は数え切れないほど人を殺した。吸血鬼として生まれた時には興味本位で人の血を吸ったりもしていた。何人殺そうが、私に罪悪感はなかった。だけど、その夢では私は初めて罪悪感を覚えていた。あれは誰だったか、いつかある男に言われた事があったな。

(人を知れ、知れば知るほどお前は変われる)

そう言ってその男はその後どうなったか?いや、そうじゃないな。その男の名前は、、、、、思い出した。
夕凪糸衛、あの男の言葉で私は、変わり始めたんだったか。それから私は次第に人を殺さなくなった。いや、殺しはしたが誰も彼も適当に殺すのは辞めた。あの男にならって悪を、悪人だけを殺す様になった。それから何年か経って、私もあの男にならって自分の居場所なるモノを作った。それから、、、それから、、、子供達を養子にとって、、、そうだ、、思い出した。
あの男が死んだんだったか、私はどこかであの男に惚れていたのか、いや違うな、あれは憧れか。だから、私はあの男の訃報を聞いた時、信じられなかった。私よりも、この吸血鬼である私よりも強い人間が、何故居なくなるのか、理解できなかった。その時、私の心は感じた事のない感情を覚えた。それからずっと一人で考えていた。そしてある時、これは悲しみという感情だと、あの男、、、宗谷に教えてもらったんだったか、、、そうだ、その男が来て、私は。私はその感情を誰かに渡してはいけなかったんだ。でも、私はこの悲しみという感情に耐え切れなくなって、そして、した。しかし、その自分勝手な感情は誰も許しはしなかった。どんな願いにも代償はつくということを忘れていた。そうして、私に与えられた代償は消された記憶の中で自我だけが残されるというものだった。その先は地獄だった。私はあのに命令されて何故だか逆らえず、子供達を、私がこの手で皆殺しにした。やめろ、、やめろ、、、やめろ!!!!いくら叫んでも手は、体は止まってくれなかった。気がつくと目の前にはあの光景が広がっていた。そして、白斗だけ一人残して皆殺しにした。今思えば、白斗だけが生き残ったことは私が自分の悲しみという感情から逃げ出した事への裁きをまだ神が許してくれているのだと思った。だから、、、
 
「白斗、私を殺せ」
 
「はぁ?だからさっきも言っただろ。別にお前を殺す気はねぇってよ」
 
「ダメだ!私は許されない大罪を犯した、、」
 
先ほどの六花とはまるで別人の様に弱々しい声をあげた。
 
「全部思い出した。あの家で、あの場所で起こったことも。お前達、兄弟姉妹との日々も、それを奪ったのが私だということも。いくら操られていたからと言って許されない。これは私が自身の感情と向き合えなかったから起こったことだ。だからせめて、家族だったお前の手で私を裁いてくれ、、頼む」
 
それを聞いた白斗は顔を歪ませて叫ぶ。
 
「ふっざけんな!!どんな事情か知らねえがお前の言う通りに裁くのなんてごめんだ!裁く、裁かないはこの俺が決めることで、俺はお前を裁かない!その罪をお前は背負って生きていくべきだ!俺に裁かれて、はい終わり?ふざけんじゃねぇ!それこそお前の言う逃げだ!それに操られてたって言ったな、せめて償いたいと思うなら、その元凶を見つけてけりをつけるべきだろ!そんなの俺が、、」
 
「俺が尊敬したあんたの生き方じゃねぇだろ、、、」
 
白斗は消え入りそうな声で言った。
 
(あぁ、そうか、、一番辛いのは白斗だ。私は死んで詫びようなんて、、情けないことだ。あの子達を殺したのは私だ。それで自分も死のうなんて、、また逃げるところだった。、、ならせめて、、)
 
目を閉じて、六花は地面に膝をついて頭を下げる。
 
「すまなかった。私は弱い、人の心から逃げ出した弱虫だ。だから、私は生きて罪を償うよ永遠に、、、」
 
「あぁ、、俺だって弱虫さ。あの時、誰一人として守れなかった。ただ見ている事しかできなかった。だから、あいつらには悪いけど痛み分けでこの話は終わりだ。もうあんたと戦う理由がなくなった。もう顔をあげて立てよいつまでも見てられねぇ」
 
白斗の言葉で六花は顔をあげてゆっくりと立ち上がる。

「これからどうするつもりだ?」
 
「まぁそうだな、、俺はけじめをつけるつもりだ。あんたはどうするんだ?あんたを操ったやつ、そいつには心当たりがあるんだろ。そんなことをするやつは俺も一人しか思いつかないし、俺が思っている事とあんたが思っている事が同じなら、そいつをぶっ飛ばすのが俺たちのけじめだと思うが?」
 
「あぁ。ならついて行こう。私もあいつには話があるからな。その前に一ついいか?」
 
「なんだ?まだ何か言いたいのか?」
 
「いや、先に止めるべき奴がいる。現状を作り出している奴だ」
 
「はぁ、、まぁ面倒だが。やってやるか、それで宗谷はどこにいるんだ?奴って宗谷の事だろ?話を聞いた限りぶっ飛んでるやばいやつって聞いてるぜ」
 
「まずはここを出る。この空間は別の場所だ。だからまず、奴のいる本島へ戻らねばならん。それに私の言っている奴は宗谷などではない」

「へぇ、じゃあ誰なんだ?」

「宗谷より、もっとやばい奴だ。そいつはそこ件を含め、全てのだ」
 
 
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