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第七章 天使転輪
第166話 半天
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六花は無惨にも転がっている白斗の四肢をしばらく眺めていた。ピクリとも動かない様子を見て死んだことを確認すると、六花は三叉槍を消して顔に手を当てて目を瞑り少し首を振る。
「はぁ、、なんだったんださっきのは」
六花は少し考えた後、目を開けて白斗に背を向ける。
「いや、考えるのはやめよう、、、戻るとしよう。ルミが心配だ」
六花はゆっくりと歩き去っていく。
(負けたのか?おれは)
白斗の目の前には真っ暗な闇が広がっていた。首を振ることも、手を動かすこともできず、歩くことも話すこともできない。
(情けねぇ、、ごめんな、、お前ら、、)
(本当に情けないな)
(ん?誰だ?)
今の白斗には聴覚がないはずなのにか聞こえてくるはずのない声が聞こえてくる。いや、直接白斗に語りかけてくる。
(朕か?朕はお前であり、朕である。ようやく声が届いたか。しかしあれだな、お前を幼子の時からずっと見てきたが本当に弱いな)
(チンチンチンチンうっせぇな)
(ふん、失礼なやつだ。まぁ、朕はずっとお前を見てきたからお前がそういうやつだとわかってはいるが実際に言葉を交わしてみると考え深いものがあるな。さて、早速本題だが、まだお前に死なれては困る。だから力を貸してやる)
(急に何言ってやがる。お前がどこの誰で俺のことを知っているような口ぶりで話すが、お前のことは俺は知らない。知らねぇやつに力を貸される義理はねぇよ)
(わからんやつだな。お前じゃ頼りないから手を貸してやると言ったんだ)
(ふん、ごめんだね。俺は誰の力も借りない。俺は負けたんだ。死んだ、それで終わりだ)
(お前が駄々をこねてもこねなくても、朕はお前に生きてもらわないと困る。だから、手を貸す。なぁに、いずれ返してくれればいい)
そう言われた次の瞬間、白斗の中に白斗の知らない力が流れ込んでくる。自分のものではない、その力に耐えきれずに白斗は苦しみ出す。
(て、てめぇ、、、なんだ!?これはぁ、、)
(お前は死んだんだ。その死を否定するんだ、いや反転と言ったらいいのかな?本当の反転はこんなものではないがな。ひっくり返すにはそれなりの力が必要だからな。無理くりにでも限界を超えてもらう。なぁに、少し苦しいだけで死にはしないさ)
(くそが、、ああああ!!!ぐっ!)
次の瞬間、白斗の意識が飛んだ。
「!?」
白斗から歩き去ろうとした六花は背中に何かを感じて振り返る。
「なっ!?そんな、、」
そこには今し方バラバラに切り刻んだはずの白斗が手をだらっと下げて首を垂れて立っていた。
「ばかな!?何が起こっている!?」
「、、、、、」
六花の声に反応したのか白斗を顔を上げた。その目は真っ赤に染まり六花を見据えていた。
「うがあああああああああ!!!!!」
白斗は体を押さえて急に苦しみだした。そして、白斗の片方の背中から吸血鬼の象徴とも言える黒い漆黒の翼が出てきた。
「吸血鬼の力が暴走でも起こしたのか、、いや、しかしこれはそれだけではない気がするが、、」
「○○○○○○」
白斗はどこの言語かもわからない言葉を発する。次の瞬間、六花の腕が前触れもなく吹き飛んだ。
(!?)
六花はすぐに腕を再生させると後ろへと飛び、白斗から距離をとる。
(何をされたんだ?いや、肌で感じるこの感覚は吸血鬼のそれではない、、もっと別の何かか?)
「○○○○○○!!」
(来るか!?)
六花は白斗の正体のわからない攻撃に身構える。次の瞬間、六花の体に大きな穴が空いた。
「ガハッ!」
六花は膝をつくと穴が空いたところを押さえながら白斗を見据える。
「なる、ほどな、、」
六花は無駄にやられたわけではなかった。穴を空けられるその刹那、その攻撃方法を目視した。何故、ニ回目の攻撃で見えたのか。それは六花がそれをあるものではないかと過程したからだ。それは、たまたま偶然にそれをそれと思ったからである。だから、それが見えたのはその攻撃方法を認識したからである。この二回の攻撃は速すぎて見えないではなく、その次元の攻撃方法が視覚で認識できなかったのだ。六花のような長年生きてきた吸血鬼でなければ、この数秒で見切ることはできないのだろう。付け加えるのであれば運も良かったと言える。それに自分自身も吸血鬼という一怪物というのだから、目の前にいるモノが常識ではない存在であるということは理解しているのだ。そして、今目の前にいるのがその常識の中にあるもう一つの、、いや正確には人間ではない非常識的な存在であると六花の脳は理解していた。白斗が攻撃の際に発した言葉を聞き、それに反応して、飛んでくるそれをそれだと認識したから見えたのだ。しかし、今の六花では認識するだけで精一杯であったため避けるということができなかったのだ。
「見えるはずのない鋼鉄の白羽か」
そう言った六花の腹に空いてる穴はゆっくりと閉じていき綺麗に完治する。
「あああああああ!!!!!!!!」
白斗は急に叫び声を上げると空へと舞い上がった。そして、再び何かに蝕まれているのか、唸り声をあげて体を抱える。しばらく唸った後、もう片方の背中から白い翼が現れる。それは真っ白で神々しく輝いていて、その羽から落ちてくる数枚の羽を見て六花は目の前にいる怪物を確実に認識した。
「天使か」
「はぁ、、なんだったんださっきのは」
六花は少し考えた後、目を開けて白斗に背を向ける。
「いや、考えるのはやめよう、、、戻るとしよう。ルミが心配だ」
六花はゆっくりと歩き去っていく。
(負けたのか?おれは)
白斗の目の前には真っ暗な闇が広がっていた。首を振ることも、手を動かすこともできず、歩くことも話すこともできない。
(情けねぇ、、ごめんな、、お前ら、、)
(本当に情けないな)
(ん?誰だ?)
今の白斗には聴覚がないはずなのにか聞こえてくるはずのない声が聞こえてくる。いや、直接白斗に語りかけてくる。
(朕か?朕はお前であり、朕である。ようやく声が届いたか。しかしあれだな、お前を幼子の時からずっと見てきたが本当に弱いな)
(チンチンチンチンうっせぇな)
(ふん、失礼なやつだ。まぁ、朕はずっとお前を見てきたからお前がそういうやつだとわかってはいるが実際に言葉を交わしてみると考え深いものがあるな。さて、早速本題だが、まだお前に死なれては困る。だから力を貸してやる)
(急に何言ってやがる。お前がどこの誰で俺のことを知っているような口ぶりで話すが、お前のことは俺は知らない。知らねぇやつに力を貸される義理はねぇよ)
(わからんやつだな。お前じゃ頼りないから手を貸してやると言ったんだ)
(ふん、ごめんだね。俺は誰の力も借りない。俺は負けたんだ。死んだ、それで終わりだ)
(お前が駄々をこねてもこねなくても、朕はお前に生きてもらわないと困る。だから、手を貸す。なぁに、いずれ返してくれればいい)
そう言われた次の瞬間、白斗の中に白斗の知らない力が流れ込んでくる。自分のものではない、その力に耐えきれずに白斗は苦しみ出す。
(て、てめぇ、、、なんだ!?これはぁ、、)
(お前は死んだんだ。その死を否定するんだ、いや反転と言ったらいいのかな?本当の反転はこんなものではないがな。ひっくり返すにはそれなりの力が必要だからな。無理くりにでも限界を超えてもらう。なぁに、少し苦しいだけで死にはしないさ)
(くそが、、ああああ!!!ぐっ!)
次の瞬間、白斗の意識が飛んだ。
「!?」
白斗から歩き去ろうとした六花は背中に何かを感じて振り返る。
「なっ!?そんな、、」
そこには今し方バラバラに切り刻んだはずの白斗が手をだらっと下げて首を垂れて立っていた。
「ばかな!?何が起こっている!?」
「、、、、、」
六花の声に反応したのか白斗を顔を上げた。その目は真っ赤に染まり六花を見据えていた。
「うがあああああああああ!!!!!」
白斗は体を押さえて急に苦しみだした。そして、白斗の片方の背中から吸血鬼の象徴とも言える黒い漆黒の翼が出てきた。
「吸血鬼の力が暴走でも起こしたのか、、いや、しかしこれはそれだけではない気がするが、、」
「○○○○○○」
白斗はどこの言語かもわからない言葉を発する。次の瞬間、六花の腕が前触れもなく吹き飛んだ。
(!?)
六花はすぐに腕を再生させると後ろへと飛び、白斗から距離をとる。
(何をされたんだ?いや、肌で感じるこの感覚は吸血鬼のそれではない、、もっと別の何かか?)
「○○○○○○!!」
(来るか!?)
六花は白斗の正体のわからない攻撃に身構える。次の瞬間、六花の体に大きな穴が空いた。
「ガハッ!」
六花は膝をつくと穴が空いたところを押さえながら白斗を見据える。
「なる、ほどな、、」
六花は無駄にやられたわけではなかった。穴を空けられるその刹那、その攻撃方法を目視した。何故、ニ回目の攻撃で見えたのか。それは六花がそれをあるものではないかと過程したからだ。それは、たまたま偶然にそれをそれと思ったからである。だから、それが見えたのはその攻撃方法を認識したからである。この二回の攻撃は速すぎて見えないではなく、その次元の攻撃方法が視覚で認識できなかったのだ。六花のような長年生きてきた吸血鬼でなければ、この数秒で見切ることはできないのだろう。付け加えるのであれば運も良かったと言える。それに自分自身も吸血鬼という一怪物というのだから、目の前にいるモノが常識ではない存在であるということは理解しているのだ。そして、今目の前にいるのがその常識の中にあるもう一つの、、いや正確には人間ではない非常識的な存在であると六花の脳は理解していた。白斗が攻撃の際に発した言葉を聞き、それに反応して、飛んでくるそれをそれだと認識したから見えたのだ。しかし、今の六花では認識するだけで精一杯であったため避けるということができなかったのだ。
「見えるはずのない鋼鉄の白羽か」
そう言った六花の腹に空いてる穴はゆっくりと閉じていき綺麗に完治する。
「あああああああ!!!!!!!!」
白斗は急に叫び声を上げると空へと舞い上がった。そして、再び何かに蝕まれているのか、唸り声をあげて体を抱える。しばらく唸った後、もう片方の背中から白い翼が現れる。それは真っ白で神々しく輝いていて、その羽から落ちてくる数枚の羽を見て六花は目の前にいる怪物を確実に認識した。
「天使か」
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