天使ノ探求者

はなり

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第七章 天使転輪

第165話 弱点

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六花は向かってくる白斗を三叉槍で次から次へと切り殺す。そして、切ったところから増え続ける白斗の大群を切り倒しながら本物の白斗へと話かける。
 
「この技の欠点が何かわかるか?」
 
「知らねぇよ、そんなの」
 
「それぐらい把握しておけ。物量で押し切れる相手ならこういう戦い方でも構わない。しかし、そうではないというのなら、それは間違いだ」
 
「なにが言いてぇんだ?」
 
「つまるところは、分身体には同じ力は宿らないということだ。お前から分身が作られているというのなら、お前の力を半分に分けて使うということだ。だからこの様に簡単に殺せる。その技は力のあるものが使う技だ。お前にはまだ早い」
 
「ごちゃごちゃうるせぇなぁ!!!要は物量でおしゃーいいんだろうが!!」
 
切られた白斗の死体からさらに分裂してさらに数を増やす。
 
「意味のないことを」
 
白斗の大群が六花へと波の様に覆い被さった。
 
シュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッ!!!!
 
六花は白斗の有象無象達を三叉槍を振り回して蹴散らし、大量の死体と大量の血の雨を地上に降らせた。
 
「これでもまだわからないのか」
 
ドクンッ!
 
(なっ、なんだ、、)
 
急に六花はふらつきだした。六花の脳裏に突如として再生される光景。それは白斗の有象無象を切り殺す光景と被る。白斗ではない誰かを切り殺している自分だった。六花は顔を押さえて、少し頭を振ると白斗を見据えた。
 
「あん?どうした?、、はぁ、、あんなこと言いながら、はぁ、バテたのかぁ?」
 
白斗は少しばかり息を切らしていた。
 
「なんでもない、それより白斗」
 
「なんだ?」
 
「お前こそ、息切れしているぞ。それに」
 
六花は辺りを見回すと白斗の分身体の数が減っていることに気づく。
 
「そろそろか、まぁだいぶ耐えた方だな。その技のもう一つの欠点はな、血を使うということだ。分身とは自分の体の一部、すなわち血液による複製ということになる。それを馬鹿みたいにどんどん使うということは血をどんどん失うということ。それは吸血鬼にとって致命的なことだ」
 
六花は残りの白斗を切り殺していく。そして、数秒もしないうちに白斗の有象無象は全滅した。
 
「だめ、、だったか」
 
「どうした?えらく弱気だな」
 
白斗の目の前には三叉槍を片手に持ち、こちらを見下ろす六花がいた。
 
「残念だ。もう少し賢いと思ったが、やはり、馬鹿だったな」
 
「ガッ!!」
 
六花の三叉槍が目にも止まらぬ速さで白斗へと投擲され、そのまま白斗と共に地上へと落ちた。
 
「やべえ血が足りねー」
 
白斗は自分に刺さった槍を抜こうとしたが気づくと目の前には六花がいた。そのまま白斗から強引に槍を引き抜くと胸ぐらを掴んで持ち上げる。
 
「もう限界か。お前にしてはできた方か」
 
「く、、そ、、いつまで、、姉貴づら、、してやがる」
 
「そりゃそうだろう。お前の姉なんだから」
 
六花は片手の三叉槍を白斗に向ける。
 
「終わりだな」
 
ドクンッ!
 
「くっ!?」
 
六花は再び謎の記憶がフラッシュバックする。今、目の前にいる白斗の姿が記憶にない子供の姿へと移り変わる。
 
「あぁぁああああ!!!!」
 
六花は白斗の胸ぐらから手を離すと頭を抱えながら後ろへと後ずさり苦しみ出す。白斗は六花から手を離されて地面へと倒れるとゆっくりと立ち上がる。
 
「なん、、だ?何が起こってやがる」
 
白斗は目の前で蹲っている六花の姿を見て驚いた。六花はしばらく唸ってゆっくりと立ち上がった。
 
「はぁ、、はぁ、、お前と戦っているとおかしくなる、、もう殺す」
 
六花は少し焦っていて、疲弊している様に見えた。
 
「馬鹿か、、吸血鬼は、死なねえんだろうが」
 
「ふん、馬鹿はお前だ。誰がそんなこと言ったんだ?吸血鬼は血を失うと不死は保てない。そして、お前は血を失いすぎた。現に槍で貫かれた部分の再生が遅いだろ。次で切り刻んで終わりにしてやる」
 
六花は三叉槍を構えて白斗へと駆け出す。
 
(こんな感じで死ねるかよ、、俺はまだお前に、、)
 
腹に空いた穴からの出血により動けなかった白斗は無惨にも四肢を切り刻まれた。
 
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