天使ノ探求者

はなり

文字の大きさ
上 下
161 / 199
第七章 天使転輪

第160話 弱さと罪

しおりを挟む
静かに見つめ合う時間がゆっくりと流れる。そして交わす言葉もなく二人は動きだした。互いにゆっくりと歩み寄る。そして、互いの拳が当たる間合いへと近づいて時が数秒止まり、同時に動きだす。互いの拳が顔に当たる。そしてすぐさま二撃目を突く。そしてまた次の一手を与える。避けるという作業を体力的にみて、両者の意見が一緒になった結果だった。そう、これは互いが互いの攻撃を避けることはしない戦い方、要はシンプルな殴り合い。しかし、それも連続では続かずルミの一撃でメイは膝をつく。
 
「ぺっ!!そんなもんか!!そんなんで終われるかよ!」
 
ドカッ!
 
ルミは口の中にある血を吐き出してメイを煽っては、また一発入れる。その度にメイは倒れたがすぐに立ち上がり反撃の一撃を突く。
 
「まだまだじゃ!」
 
ドカッ!
 
両者一歩も退かず、互いの拳で殴り合う。ゆっくりと互いの体力が削られていく。
 
「お前は!ルナを殺した!私はそれが許せない!どうなっても、、どうやっても、、許せない!!」
 
「わかっとるわ!でもな!あの時はな、あぁするしかなか他になかったんや!その後、自分の無力さに後悔したわ!!それで今度お前に会った時、どう声かけていいか考えとったけど!うちはやっぱりアホからや何も思いつかんかった!!お前の気持ちも復讐もわかる!うちもお前の立場ならそうしていた!」
 
「なら!何故殺されない!!私はお前の死を望んでいた!」
 
ルミはメイに近づいて一発拳を入れる。倒れそうになったメイの胸ぐらを掴むと再び二撃目、三撃目、四撃目を入れる。ゆっくりだが想いがのった拳はメイには本当に重く感じた。その一発一発がメイへと叩きつけられる。そして、五撃目でようやくルミの拳を止めるとメイはルミを思いっきり殴った。そして、今度はメイがルミの胸ぐらを掴み一発入れる。
 
「たしかに!うちがあの時、撃ってなかったらルナは生きていたかもしれない!でも、あの時ルナに言われて撃ったんや、そしたらこないな結果になって後悔した。そして自分の無力さを痛感したわ!」
  
「そんなのはいいわけだ!あの時お前が撃ってなかったらルナは死ななかった!」
 
ルミは掴まれたままメイへ頭突きをする。
 
「くっ!、、、ならお前はそれで、世界が滅んでもええ言うんか!」
 
「妹のいない世界なんて滅んでもいい!」
 
「そんなんルナは思ってないやろ!ルナはお前を、、お前を守るために死んだんやぞ!!」
 
今度はメイがルミへ頭突きをする。
 
「くっ!、、、なんだと、、、」
 
メイは掴んでいた胸ぐらを離す。ルミはそのまま少し後ろへとよろけて膝をつく。
 
「正確には、この世界を守るためやけどな。あのままだと世界はルナの異能によって滅んでいたかもしれへんかったんや!」
 
「なんで、、、そんな、、そんなこと」

「なんや?そんなことないってか?それがあるんや!!異能の暴走は下手すりゃ世界を滅ぼせるんや!特にルナみたいなタイプの異能はなぁ、それ一つで世界が一つ滅ぶ危険があったんや!そんな危険なもん背負って、覚悟決めて死んだルナは男前やでほんま、、、」

「なんだよ、、それ、、、それじゃあルナは生まれてきたことが世界にとっての悪やったってことなんか、、、」

「何言うてんねん!!そんなこと絶っっっっっったいないわ!!生まれてきたあかん人なんておらんわ!!あれはな誰も悪くないんや、、誰もな、、」

メイは少しだけ悲しい表情を見せながらそう言った。
 
「もう、いいよ、、ルナ、、今行くよ、、」

「!?」
 
ルミは懐からナイフを取り出すと自身の喉へと刺そうとした。しかし、ギリギリのところでメイがその手を掴む。
 
「アホか!!」
 
メイはルミからナイフを奪い投げ捨てる。そして、ルミの頬を打った。
 
「ほんまにアホやな!!自暴自棄になるんもええ加減にせぇや!お前が死んでルナが喜ぶんか?ルナは最後にお前に言ってたんや!私が死んでもルミ姉さんは生きてほしい、だからは破棄するって言ってたんや!!」
 
「なんだよそれ、、そんなの、、ちくしょう、、」
 
ルミはそのまま横たわり腕で顔を隠して静かに泣いた。
 
「ルミ、お前はうちを許さんやろう。でも、それでもいい。これはうちが言うべきやろうから言うけどな。お前の、ルナを守れなかった弱さが罪と言うなら、うちもあの場をああいう方法でしか解決できなかった弱さが罪や。その罪を背負ってお互いに生きて行こうや。ルナはうちが殺したも同然や、うちはこの罪を背負っていく。だからルミ、お前はルナの分まで生きてくれや」
 
ルミは静かに泣き続けた。そして最後に一言だけ言って再び泣き続けた。
 
「ルナ、、、ごめんよ、、、」
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

極悪人

桃青
ライト文芸
極悪人に憧れ、日々悪人を目指すが、うまくいかない主人公。そんな彼が辿り着いた答えとは? ややたちの悪いコメディです。

そして、アドレーヌは眠る。

緋島礼桜
ファンタジー
長く続いた大戦、それにより腐りきった大地と生命を『奇跡の力』で蘇らせ終戦へと導いた女王――アドレーヌ・エナ・リンクス。 彼女はその偉業と引き換えに長い眠りについてしまいました。彼女を称え、崇め、祀った人々は彼女の名が付けられた新たな王国を創りました。 眠り続けるアドレーヌ。そこに生きる者たちによって受け継がれていく物語―――そして、辿りつく真実と結末。 これは、およそ千年続いたアドレーヌ王国の、始まりと終わりの物語です。 *あらすじ* ~第一篇~ かつての大戦により鉄くずと化し投棄された負の遺産『兵器』を回収する者たち―――狩人(ハンター)。 それを生業とし、娘と共に旅をするアーサガ・トルトはその活躍ぶりから『漆黒の弾丸』と呼ばれていた。 そんな彼はとある噂を切っ掛けに、想い人と娘の絆が揺れ動くことになる―――。 ~第二篇~ アドレーヌ女王の血を継ぐ王族エミレス・ノト・リンクス王女は王国東方の街ノーテルの屋敷で暮らしていた。 中肉中背、そばかすに見た目も地味…そんな引け目から人前を避けてきた彼女はある日、とある男性と出会う。 それが、彼女の過去と未来に関わる大切な恋愛となっていく―――。 ~第三篇~ かつての反乱により一斉排除の対象とされ、長い年月虐げられ続けているイニム…ネフ族。 『ネフ狩り』と呼ばれる駆逐行為は隠れ里にて暮らしていた青年キ・シエの全てを奪っていった。 愛する者、腕、両目を失った彼は名も一族の誇りすらも捨て、復讐に呑まれていく―――。 ~第四篇~ 最南端の村で暮らすソラはいつものように兄のお使いに王都へ行った帰り、謎の男二人組に襲われる。 辛くも通りすがりの旅人に助けられるが、その男もまた全身黒尽くめに口紅を塗った奇抜な出で立ちで…。 この出会いをきっかけに彼女の日常は一変し歴史を覆すような大事件へと巻き込まれていく―――。 * *2020年まで某サイトで投稿していたものですがサイト閉鎖に伴い、加筆修正して完結を目標に再投稿したいと思います。 *他小説家になろう、アルファポリスでも投稿しています。 *毎週、火・金曜日に更新を予定しています。

【完結】バイトに行ったら、ある意味モテた。ただし、本人は、納得できない模様

buchi
ライト文芸
地味め、草食系の修平は、新しいバイト先で、顔立ちはキレイだが、かなり変人の葉山と一緒になった。葉山が一緒にいるばっかりに、恋愛レベル低めの修平が、次々とトラブルに巻き込まれる羽目に。修平は、葉山を追いかける女子大生サナギに付きまとわれ、友人の松木は葉山に誘惑される。だが、最大の被害者は、バイト先の社長だろう。眉をひそめて、成り行きを静観していた修平だったが、突然、自分が最悪の被害者になっていることに気が付いた………もう、葉山なんか死ねばいいのに。

碌の塔

ゆか太郎
ライト文芸
街中に佇む不思議な映画館。 真夜中の峠での不思議な出会い。 逸れたもの同士が繋いだ手。 薬屋、絵描き、ヒーロー。 名前のない職業の人々。 そしていずれ来る星の終わり。 多種多様な世界で生きる、命の綴り。 その不揃いな石を積み上げて、それでも私は塔を作る。 (こちらは以前Twitter(現X)にて掲載していたものと同様の内容です。)

がらくたのおもちゃ箱

hyui
ライト文芸
きのみ気ままにショートショート。 「監獄の部屋」 「破滅の足音」も宜しくお願いいたします!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

婚活のサラリーマン

NAOTA
ライト文芸
気がつけば36才になっていた私は、婚活を始めた。 アラフォーサラリーマンが、なかなかうまくいかない婚活に奔走する、少しだけハードボイルドなストーリー。 (この小説はカクヨム様、ノベルデイズ様にも投稿させていただいています。)

イシャータの受難

ペイザンヌ
ライト文芸
 猫を愛する全ての方に捧げる猫目線からの物語です──1話が平均2500文字、5~6分で読了できるくらいの長さとなっております。 【あらすじ】人間と同じように猫にだって派閥がある。それは“野良猫”と“飼い猫”だ。【 シャム猫のイシャータ(♀)】は突然飼い主から捨てられ、何の不自由もない“飼い猫”生活から今まで蔑視していた“野良猫”の世界へと転落してしまう。ろくに自分の身さえ守れないイシャータだったが今度は捨て猫だった【 子猫の“佐藤 ”】の面倒までみることになってしまい、共に飢えや偏見、孤独を乗り越えていく。そんなある日、以前淡い恋心を抱いていた【風来坊の野良猫、 ヴァン=ブラン 】が町に帰ってきた。それを皮切りにイシャータとその仲間たちは【隣町のボス猫、ザンパノ 】との大きな縄張り争いにまで巻き込まれていくのだったが…………  3部構成、全41話。それぞれ1話1話にテーマを置いて書いております。シリアス、コメディ、せつなさ、成長、孤独、仲間、バトル、恋愛、ハードボイルド、歌、ヒーロー、陰謀、救済、推理、死、ナンセンス、転生、じれじれからもふもふ、まで、私的に出来うる限りのものを詰め込んだつもりです。個人、集団、つらい時やどうしようもない時、そんな時に生きる希望や勇気の沸く、そして読み終わった後にできうる限り元気になれる、そんな物語にしようという指針のもとに書きました。よろしくお願いいたします。(小説家になろうさん、カクヨムさんとの重複投稿です)

処理中です...