天使ノ探求者

はなり

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第七章 天使転輪

第144話 逆戻り

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「特に何も無いな」
 
遊はしばらく海岸を散策していた。しかし特に何も見つからず、敵からの奇襲も無く海岸を一回りしてしまった。
 
「ここには敵はいないのか?それともただ俺たちを閉じ込めるだけだったのか?まぁどちらにせよ一旦シャオと合流だな」
 
遊は森の中にいるシャオの元へと森に入ろうとしたその時、正面の藪の中から物音がした。
 
「なんだ?生き物か?」
 
遊は少し警戒すると、藪の中から一匹のトカゲが現れた。
 
「なんだ、トカゲか。それにしても随分と大きなトカゲだな」
 
トカゲは遊を確認して立ち止まった。そして驚く出来事が起こったのだ。
 
「やっと見つけた」
 
「!?」
 
なんと、目の前にいるトカゲが喋ったのだった。恐る恐る話しかけてみる。
 
「おい、今お前しゃべったか?」
 
「あぁ、そうさ。あっ!そうかこの姿のままだったな」
 
トカゲはそういうとボンと音を立てて人の姿へと変わった。そして遊はさらに驚いた、その人物には心当たりがあったからだ。
 
「まさか!?お前、ヤサクか?」
 
「覚えていたか遊、嬉しいよ」
 
「なんでお前がこんなところに、まっ、まさか!お前も宗谷の仲間か!?」
 
遊は警戒して一歩退く。
 
「違う違う、俺は何年も宗谷から隠れていたんだ、糸衛に頼まれてな」
 
「頼まれた、だと」
 
「話せば長くなるがな」
 
「よくわからんが、味方でいいんだな?」
 
「あぁ。それでシャオはどこだ?」
 
「あいつなら一人で森へ入ったよ」
 
「そうか。なら急いで合流しよう、ベルナがやらかしているかも知れん」
 
「ベルナ?」
 
「あぁ、糸衛が残した戦力の一人だ」


 
「かっかっ!噂通り、いやそれ以上の強さだ!」
 
「こんなもん、なんでもないわ!」
 
シャオは課された重力の中でベルナの攻撃を避けては反撃を繰り返していた。
 
「なら!これでどうだ!」
 
ベルナは自身の手に重力操作を行いシャオへ拳を叩きこむ。
 
「ぐっ!こいつは!」
 
「重いだろ?これが私の異能の真骨頂!重力操作で自身の拳に数十倍の重力をかけた」
 
「なんのこれしき!」
 
シャオはベルナの重い拳を跳ね除ける。
 
「かっかっ!すごいな!たしかにこれは不死だな!面白い!」
 
「あほか!まだ死んどらんし、能力も使っとらんわ!」
 
「そうなのか?なら見せてほしいものだ!本気で殺しにかかれば見れるのか?」
 
「やってみぃや!」
 
「かっか!おもしろ!」
 
両者同時に駆け出した。そしてベルナとシャオの拳がぶつかる一歩手前で唐突に上空から無数の刃物が降ってきた。ベルナには重力操作により刃物が体へは届かなかった。しかし、シャオはあまりの唐突の事で避けきれずに串刺しになる。その光景を目の当たりにするベルナ。しかし次の瞬間、景色が逆再生する。この逆再生の中ではベルナや他の人間は観測ができない。観測者はただ一人、死んだシャオリン一人のみだった。これが彼女の異能、となり時が巻き戻る、そしてそれを観測できるのがその異能を持つものシャオリンのみであった。そして、時は戻る。
 
「かっかっ!噂通り、いやそれ以上の強さだ!」
 
シャオは後退して、ベルナから距離をとる。
 
(さっきのはなんや!)
 
「どうしたんだ?」
 
(とりあえず、事情を説明した方がええか)
 
「聞いてくれ、数秒後私は死んだ」
 
「は?どういうことだ?」
 
「すまん、直球すぎたな。うちの異能は死んだら時が巻き戻る能力なんや。それでうちはさっきお前と打ち合いをしている時に何者かの攻撃を受けて一度死んで戻ってきたんや」
 
「はい、そうですかとは言えんな。証拠はあるのか?」
 
「そうやな、さっきの戦いであんたはうちに重力で重くした拳をぶつけてきたってことはどや?」
 
「うーん、たしかに私はその技を使うところではあったしな、、、なるほどな。それで主は不死と呼ばれているのか。まぁいいだろう信じてやろう」
 
シャオに課された重力の枷は外れた。
 
(単純で助かったわ)
 
「それでいつ攻撃が来るんだ?」
 
「そろそろやな」
 
シャオがそう言うと数秒後、上空から無数の刃物が落ちてきた。
 
「かっかっ!本当に来るとはな!」
 
シャオは先ほどとは違い自由に動けるため簡単にそれは避けることができた。もちらんベルナも重力操作でそれらを防ぐ。
 
(一旦は凌げたが、一体どこからや?)
 
重力操作でベルナは木の下に置いてあった剣を手元へ手繰り寄せる。
 
「誰かは知らんが、決闘に横槍を入れる愚か者がいる様だな」
 
「一時休戦やな」
 
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