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第七章 天使転輪
第138話 森の中へ
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一
真宵は森の中にいるスナイパーを探していた。
ヒュンッ!
「またか」
真宵は森の中へ入った時から数分ごとに銃撃を受けていた。しかし、どれも少し頬を掠める程度で簡単に避けれる。しかし、一つだけ気になることがあった。
(さっきから俺を狙って撃ってはいるが、その銃声が全く聞こえない。一体どんな銃なんだ?異能の可能性を疑ったほうがいいか)
真宵は広くて少しだけ見晴らしのいい場所へと出ると敵を挑発して狙わせることにした。
「おい!何者か知らんが、いい加減に本気で殺しに来ないのか?俺はここだぜ」
ヒュンッ!
(きた!)
真宵は真正面から銃弾が来ることを確認すると、その銃弾を自身のナイフで真っ二つにする。分かれた銃弾は真宵の左右の地面へと落ちた。
「こ、これは、、、なるほどな。たしかにこれじゃあ銃声が聞こえないわけだ」
真宵は落ちていた物を拾い上げる。それは小さなビー玉だった。
「さて、ここからどうするんだ!森のスナイパーさんよ!」
「なるほど。思ったよりもやりますね」
森の中から黒いマントを羽織った女が一人出てきた。
「驚いた。まさか女性だったとは。んで、出てきてどうするんだ?」
「こうするんです」
女は手から何かを無数に放った。放たれたそれは左右に飛んだと思ったら何もない空中でバウンドして真宵へと飛んできた。
(なるほど。空中に何かあるのか)
真宵は飛んできたそれを避ける。少しだけ油断していた真宵は近づいてきた女の存在に気づかなかった。
「なっ!?」
女は拳で打撃を無数に繰り出す。真宵は虚をつかれたが、すぐに反応して応戦する。そして隙を見て女に蹴りを入れて一旦、距離をとる。
「なるほど。俺と同じタイプか」
「まさか、避けるとは。これは楽しめそうです」
「俺は、夜月真宵。あんた、名前は?」
「私は流離の殺し屋、風鳥風子」
二
志貴はゆっくりと森の奥へと進んでいた。
「おや?」
しばらく歩いていたら開けた場所に出る。そして開けた場所の中心に地下へと続く階段を見つける。
「確実に罠と分かっていても、私は入るね」
そう言って志貴は階段をゆっくりと降りて行った。一応、階段の端には蝋燭が灯ってはいるが、それでも薄暗い。しばらく降りていくと階段が終わり、長い廊下が現れた。そして、よく見ると奥の方から無数の人がフラフラと歩いて来ていた。そのどれもが白目を剥いて意識がなかった。
「なるほど、雲月カバネだな。こんな小細工なんかして、まぁいいさ、乗ってやるよ!」
志貴は一直線にカバネの操っているであろうゾンビへと向かっていった。そして、ナイフを取り出して一人一人切り倒して、流れる様に奥へと進んでいく。
「ふぅ、終わったな」
数秒で廊下の奥へ辿りついた。
「長く見えたけどそうでもなかったな。さてと」
志貴は扉に手をかけると、一瞬止まる。そして、ニヤリとして扉を開けた。
ぐおぅぅぅ!!
扉を開け放つと同時に中にいたであろうゾンビが大量に溢れ出てきて志貴に襲いかかってきた。
「おいおい、今度は物量作戦かよ」
ゾンビ達は志貴を噛もうとするがその歯は全く届かず、まるで空気でも食べているかの様だった。
「私を食べることはできないよ、って言ってもわからないか」
志貴は手を伸ばすと目の前にあった空気を押し出した。ゾンビ達は圧縮されて次から次へと潰れていく。そして、これもまた数秒で全滅させた。扉の向こうには小さな部屋であったが、もはや普通の部屋ではなくなっていた肉片や血が壁に地面に飛び散って、凄惨なものになっていた。
「暗いけどよくわかるな。酷い部屋だ」
志貴は気にせずにゆっくりと奥へと歩いていき扉を見つけて開け放つ。扉の向こうには大きな空洞があり、そこにはゾンビは居なかった。ただ一人の男がいただけだった。
「全く酷いことをする」
「それはお前だろ。雲月カバネ、再戦しに来てやったぞ。わざわざ来てやったんだ失望させるなよ」
「それはこっちのセリフだ」
プチュ!
志貴は眼力でカバネの周りの空気を操り圧縮する、そしてカバネの体はミンチになって肉片も残らず消えた。
「ちっ、やっぱり偽物か。おい!近くにいるんだろ?早く次の手を見せろよ!」
「言われなくてもお前の前にいる」
「ん?」
志貴は言われて前を向くとさっき殺したカバネの偽物の血が飛び散った地面の上に何かが立っていた。それは人の形はしているが人ではなかった。頭はライオンで体は様々な獣の部位を集めた様だ。そして、志貴は一つだけ違和感を感じていた。獣というのは本来、敵や獲物を見つけると遠吠えや、雄叫びを上げるはず。しかし目の前の化け物は声を一つ上げることなく、ただただ不気味なくらい静かに息をしていた。そして、その化け物から何一つ感じなかった。
「死体なのは確かな様だな。しかし、この化け物はなんだ?」
志貴の疑問に静かに答えたのはなんと目の前の化け物だった。
「こいつはな、キメラという化け物らしい。夜月が秘密裏に作っていた怪物だ。あのじじいが言うには夜月最高傑作の一つらしいぞ」
「なんだ、喋れるのか?」
「いや、これはこいつの体を借りて話している」
「なるほど。お前は臆病だな」
「なんだと」
「いっつもいっつも、隠れてばかり。引きこもりだな。まぁいいさ、本体は自分で見つけるよ」
「余裕でいられるのも今だけだぞ。さぁ戯言はもういい。いくぞ!」
キメラは足に力を入れると志貴へと一直線へ飛んできた。爪を立てたキメラが向かってくる。
「早いねぇ」
志貴は余裕の表情で避けることもせずにただ向かってくるキメラを待っていた。そして、志貴は自分の周りの空気を固めて空気の壁を作り出す。
「無駄だぞ!」
キメラは爪で志貴が固めた空気の層を切り裂いていく。
「いい爪だ。こりゃあ楽しめそうだな」
真宵は森の中にいるスナイパーを探していた。
ヒュンッ!
「またか」
真宵は森の中へ入った時から数分ごとに銃撃を受けていた。しかし、どれも少し頬を掠める程度で簡単に避けれる。しかし、一つだけ気になることがあった。
(さっきから俺を狙って撃ってはいるが、その銃声が全く聞こえない。一体どんな銃なんだ?異能の可能性を疑ったほうがいいか)
真宵は広くて少しだけ見晴らしのいい場所へと出ると敵を挑発して狙わせることにした。
「おい!何者か知らんが、いい加減に本気で殺しに来ないのか?俺はここだぜ」
ヒュンッ!
(きた!)
真宵は真正面から銃弾が来ることを確認すると、その銃弾を自身のナイフで真っ二つにする。分かれた銃弾は真宵の左右の地面へと落ちた。
「こ、これは、、、なるほどな。たしかにこれじゃあ銃声が聞こえないわけだ」
真宵は落ちていた物を拾い上げる。それは小さなビー玉だった。
「さて、ここからどうするんだ!森のスナイパーさんよ!」
「なるほど。思ったよりもやりますね」
森の中から黒いマントを羽織った女が一人出てきた。
「驚いた。まさか女性だったとは。んで、出てきてどうするんだ?」
「こうするんです」
女は手から何かを無数に放った。放たれたそれは左右に飛んだと思ったら何もない空中でバウンドして真宵へと飛んできた。
(なるほど。空中に何かあるのか)
真宵は飛んできたそれを避ける。少しだけ油断していた真宵は近づいてきた女の存在に気づかなかった。
「なっ!?」
女は拳で打撃を無数に繰り出す。真宵は虚をつかれたが、すぐに反応して応戦する。そして隙を見て女に蹴りを入れて一旦、距離をとる。
「なるほど。俺と同じタイプか」
「まさか、避けるとは。これは楽しめそうです」
「俺は、夜月真宵。あんた、名前は?」
「私は流離の殺し屋、風鳥風子」
二
志貴はゆっくりと森の奥へと進んでいた。
「おや?」
しばらく歩いていたら開けた場所に出る。そして開けた場所の中心に地下へと続く階段を見つける。
「確実に罠と分かっていても、私は入るね」
そう言って志貴は階段をゆっくりと降りて行った。一応、階段の端には蝋燭が灯ってはいるが、それでも薄暗い。しばらく降りていくと階段が終わり、長い廊下が現れた。そして、よく見ると奥の方から無数の人がフラフラと歩いて来ていた。そのどれもが白目を剥いて意識がなかった。
「なるほど、雲月カバネだな。こんな小細工なんかして、まぁいいさ、乗ってやるよ!」
志貴は一直線にカバネの操っているであろうゾンビへと向かっていった。そして、ナイフを取り出して一人一人切り倒して、流れる様に奥へと進んでいく。
「ふぅ、終わったな」
数秒で廊下の奥へ辿りついた。
「長く見えたけどそうでもなかったな。さてと」
志貴は扉に手をかけると、一瞬止まる。そして、ニヤリとして扉を開けた。
ぐおぅぅぅ!!
扉を開け放つと同時に中にいたであろうゾンビが大量に溢れ出てきて志貴に襲いかかってきた。
「おいおい、今度は物量作戦かよ」
ゾンビ達は志貴を噛もうとするがその歯は全く届かず、まるで空気でも食べているかの様だった。
「私を食べることはできないよ、って言ってもわからないか」
志貴は手を伸ばすと目の前にあった空気を押し出した。ゾンビ達は圧縮されて次から次へと潰れていく。そして、これもまた数秒で全滅させた。扉の向こうには小さな部屋であったが、もはや普通の部屋ではなくなっていた肉片や血が壁に地面に飛び散って、凄惨なものになっていた。
「暗いけどよくわかるな。酷い部屋だ」
志貴は気にせずにゆっくりと奥へと歩いていき扉を見つけて開け放つ。扉の向こうには大きな空洞があり、そこにはゾンビは居なかった。ただ一人の男がいただけだった。
「全く酷いことをする」
「それはお前だろ。雲月カバネ、再戦しに来てやったぞ。わざわざ来てやったんだ失望させるなよ」
「それはこっちのセリフだ」
プチュ!
志貴は眼力でカバネの周りの空気を操り圧縮する、そしてカバネの体はミンチになって肉片も残らず消えた。
「ちっ、やっぱり偽物か。おい!近くにいるんだろ?早く次の手を見せろよ!」
「言われなくてもお前の前にいる」
「ん?」
志貴は言われて前を向くとさっき殺したカバネの偽物の血が飛び散った地面の上に何かが立っていた。それは人の形はしているが人ではなかった。頭はライオンで体は様々な獣の部位を集めた様だ。そして、志貴は一つだけ違和感を感じていた。獣というのは本来、敵や獲物を見つけると遠吠えや、雄叫びを上げるはず。しかし目の前の化け物は声を一つ上げることなく、ただただ不気味なくらい静かに息をしていた。そして、その化け物から何一つ感じなかった。
「死体なのは確かな様だな。しかし、この化け物はなんだ?」
志貴の疑問に静かに答えたのはなんと目の前の化け物だった。
「こいつはな、キメラという化け物らしい。夜月が秘密裏に作っていた怪物だ。あのじじいが言うには夜月最高傑作の一つらしいぞ」
「なんだ、喋れるのか?」
「いや、これはこいつの体を借りて話している」
「なるほど。お前は臆病だな」
「なんだと」
「いっつもいっつも、隠れてばかり。引きこもりだな。まぁいいさ、本体は自分で見つけるよ」
「余裕でいられるのも今だけだぞ。さぁ戯言はもういい。いくぞ!」
キメラは足に力を入れると志貴へと一直線へ飛んできた。爪を立てたキメラが向かってくる。
「早いねぇ」
志貴は余裕の表情で避けることもせずにただ向かってくるキメラを待っていた。そして、志貴は自分の周りの空気を固めて空気の壁を作り出す。
「無駄だぞ!」
キメラは爪で志貴が固めた空気の層を切り裂いていく。
「いい爪だ。こりゃあ楽しめそうだな」
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