天使ノ探求者

はなり

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第七章 天使転輪

第130話 炎と氷

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涼香は手に氷の剣を顕現させるとエントリームへと駆け出す。そして、エントリームの首に斬りかかる。しかしエントリームの首は炎に変わり涼香の氷の剣が空を斬る。
 
「あら、応戦してくれませんの?」
 
「それがお望みかい?なら仰せのままに」
 
エントリームも手に炎の剣を顕現させて涼香の氷の剣に応戦する。氷と炎、真逆の力が凄まじい速さで交わされる。
 
「ふふふ、楽しいですわね!さぁ、さぁもっとですわ!」
 
涼香は剣速をさらに上げてエントリームに斬りかかる。エントリームもその速さに応戦する。
 
「速すぎやしないかい!」
 
「いいですわ!いいですわ!私の速さについてこれる者なんてそうそういないですから、楽しいですわね!ですが、、そろそろ次にいきましょうか!」
 
涼香は少し距離をおいて、瞬時に氷の刃を無数に放つ。エントリームはそれを炎の柱を作りだして氷河の雨を防ぐ。そしてそのまま炎の柱はうねりながら涼香へと向かっていく。涼香も氷の壁で三重の層を作り出して防ぐ。
 
「まじかよ。この暑さでこれほどの純度の高い氷の壁を作れるなんて化け物だな」
 
「あなたも反応の速度と頭の回転の速さは素晴らしいものですわね」
 
「そりゃどうも。でも、そろそろ俺のとっておきで終わりにしようか」
 
「とっておき?なんですの?見せてくださいな」
 
「じゃあ遠慮なく」
 
エントリームは手を前に翳して目を閉じる。すると二人を囲む様に火山地帯のあちこちから火の柱が噴き出した。そして、一瞬の瞬きで辺りの景色が一変した。炎の柱の内側、涼香たちのいる辺り一面はマグマが流れる火山地帯へと変貌していた。
 
「どうだい?炎の柱の内側に別の空間を作りだして、能力を向上させる。こんな風にな」
 
次の瞬間、エントリームは目にも止まらぬ速さで涼香へ接近して、そして腹に手を添えて凄まじい勢いで炎を放ち涼香は燃え上がった。
 
「いやぁ、驚きましたわ。危うくまるこげでしたわね」
 
涼香は涼しい顔で再びどこからともなく現れた。
 
「今のも避けられるのか。この俺の空間で」
 
涼香は氷の刃を作り出そうと試みたが顕現した瞬間からすぐに溶け出した。
 
「なるほど。これでは、私は氷を使えませんわね。それに何やら疲れてきましたわね。恐らくあなたの空間にいるからでしょうね」
 
「ご名答!あんたにはたまげたぜ。俺の作り出したこの空間にいるっていうのに今だに涼しい顔しているんだから。だが、もう氷は作れないだろ?それにさっきみたいに速くも動けない。それに比べて俺はこの空間内ではさっきよりも速く動ける上に能力の上昇で技の威力も上がっている。あんたの詰みだぜ」
 
「ふっふっふ、たしかに詰みですわね。私でなければね」
 
「おっと、それは負け惜しみかな」
 
「ところであなた、この力はいつから使えますの?」
 
「あ?そうだな、少し前かな。この異能を身につけて間もないがこの技が使える様になったのは最近だな」
 
「そうですか、そうですか、それは素晴らしい才能ですわね。それで技の名前はありますの?」
 
「いや、まだつけてないな。何にしようかな?」
 
「いえいえ、私が言っているのはですわよ」
 
「なんだって?」
 
「それには天地創世という名があるんですのよ。しかし、あなたのは不完全ですわ。創設者は空間に名をつけませんとその能力は不完全になってしまいます。それが世界という空間を作り出した者の役割なんですから」
 
「そんな大それた名前があるんだな。勉強になったぜ。それじゃあ、さようなら女帝さん」
 
涼香の足元から炎の柱が噴き出る。涼香の体は跡形もなく消え去った。
 
「跡形もなく消えたし、さすがに死んだろ」
 
 
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