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第六章 修羅夢語
第123話 修羅の終わり
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「はぁ、はぁ、お前、、何故異能を使わない!」
「それは、、、」
糸音は異能を使わないのではなく使えないのだ。理由はわからないが、起きて記憶が戻った時から異能が使えなくなっていた。その事に気がついたのは昨日のジータの戦いでだった。
「まぁいい、、次で終わりにしよう」
椿は和刀を投げる体制をとる。
「本当の神鳴を見せてやる」
糸音は目を閉じて数秒、呼吸を整えると目を開けて針剣を構え集中する。
「来い!お前の全てを受けてやる」
椿の心には今、恨みや憎悪などは無く、ただただ目の前のそれを殺す事だけに集中する。今、二人の間には、これまでにはないほどの静寂な剣気が漂う。そして、風がやんで、椿は和刀を放った。その速さは光速を超える神速、そしてその飛行する和刀よりもさらに速く動く椿。椿は糸音に当たる少し手前で和刀を掴み、その勢いを殺さずに糸音の心臓へと和刀を突き刺す。しかし糸音は椿が動いた、その時に繊細な糸を高速で編み込んで針剣へと纏わせていた。それを盾にして神鳴を受け止める。そして椿は未だ勢いが弱まらない神鳴をさらに押し出す。それを糸音は針剣で押し返す。
「はあああああ!!!!!」
「はあああああ!!!!!」
二人のそれはまさに最強の矛と盾、どちらが勝ってもおかしくなかった。二人の闘気に火花が散り、風が吹き荒ぶ。そして糸音は椿の和刀を跳ね返した。
「なっ!」
仰け反る椿に針剣の剣先に持ち手を変えて柄の部分で鳩尾をつく。
「く、そ!」
椿は後ろに倒れた。糸音も息を切らして膝をつく。椿はそのまま意識を失った。二人の戦いが終わるのを見てルクスリア達は糸音へと駆け寄る。
「糸音さん、いけますか?」
「あ、あぁ」
「凄いものを見せてもらったよ糸音」
「終わったな」
「いや、まだだ」
「え?」
「まだこれで終わってない」
「どう言う事だ?」
糸音はジータに支えられて立ち上がると倒れて気絶している椿のもとへと歩く。
「おい!何やってるんだ糸音!」
糸音は少しふらつきながらも椿を起こして背中に背負っていた。
「いいから、みんなついてきてくれ」
そう言われた三人は黙って糸音について行った。
しばらく歩いて治安維持局へと戻ってくると裏の山道へと入っていく一行。
「なぁ、糸音。本当にどこへ行くんだ?」
「もう少しだ」
そして五人は目的の場所に辿り着くと、そこにはミナモが大きなシートを広げてそこへ座っていた。その横には大きな箱があった。
「いったいなんなんだ?」
「紅羽の夢を叶えるんだよ」
二
夢を見た。兄さんと昔行ったピクニック。あの日はすごく晴れてたな。そういえば、兄さん、料理とか全然しないのにその日はミナモさんに教えてもらいながら作ってたな。その中でも卵焼きは特に美味しかったな。幸せだ、ずっと夢ならどれほどいいものか。もう、夢が覚める。誰かが私に声をかけてくる。多分だけどそれは小さな私だ。
(許せないの?)
(許せないよ)
(本当はわかってるんでしょ?)
(うん。でもそれを許してしまったら私はどうしたらいいの?)
(もう復讐なんてやめなよ。許せないならそれでいいでしょ。糸音のことも好きだけど兄さんのことも許せない)
(この感情って難しいね)
(そうだね)
(もう復讐のために生きるのは疲れたよ)
兄さん、、、、
椿は短くて長い夢から覚める。
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