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第六章 修羅夢語
第120話 夢
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一
(一体どこへいくんだ?)
二人は街の中を治安維持局の方へと歩いていく。糸音は目的の場所に検討がつかずにいた。しかしあの真剣な表情を見るからに何かあるんだなと思い、黙ってミナモの後をついて行った。そして治安維持局の裏の山道へと入っていく。
(この道はたしか、、)
糸音はかつて紅羽と上ったこの道を思い出す。ミナモは黙って日が傾き始めた山道を進んでいく。しばらく歩いてようやく目的の場所へと辿りつく。
「何も聞かずについてきてくださり、ありがとうございます」
「いや、いいんだ。それよりも何故ここへ?」
「こちらへ」
ミナモに案内されて展望台の端へと案内される。
「ここは」
案内されたそこには墓が一つ建てられていた。
「紅羽のか」
「はい。椿お嬢様は京のご実家の方に墓を建てていますが、私たちはここに建てました。それがあの人の頼みでしたから」
「頼み?」
「紅羽様は、自分が死んだらこの場所に眠らせてほしいと。しかし遺骨が無いのでここには形だけの墓しかないですが」
「あいつらしいな」
「糸音さん。あなたは椿お嬢様を救えますか?あの子を修羅の道から助け出すことはできますか?」
「あいつは私への恨みを一生忘れないだろう。でも、他の何を捨ててでも私を恨むことなど誰も望んじゃいない。紅羽だってな」
糸音は墓の前へしゃがみ込むと手を合わせて目を瞑った。糸音は紅羽との思い出に耽っていた。そして、ふと思い出した事を口にする。
「あいつの願いはまだ叶ってないな」
「え?」
糸音は立ち上がり、ミナモの方を向く。
「ミナモさん、一つ頼みがあるんだが」
二
二人は山を降りて家へ帰ると家の前で詩織が待っていた。
「遅かったね、どこ行ってたの?」
「ちょっとな」
「ふぅーん、まぁお腹減ったから早くご飯にしようよー」
「はぁ、相変わらずマイペースで、遠慮がないな」
「これが私です!」
「胸を張って言うことじゃないだろ」
「それじゃあ、ご飯にしましょうか。お二人とも中へ。どちらか先にお風呂をどうぞ」
「じゃあ、私入るー」
詩織は家に入ると早々に風呂場へと向かった。
詩織が風呂に入ってる間にルクスリアとジータがやってきた。
「仕事は終わったのかルクスリア」
「あぁ滞りなくな」
「私も終わりました!」
「ふっふ、」
「どうしましたか?ルクスリアさん」
「いや、ジータが、なんか昔みたいになって。最近は仕事時のジータしか見ていなかったからかもしれんが。なんか懐かしいな」
「糸音さんとかがいると自分でもわからないですが、初心に戻るみたいな、、ですかね」
「なんだそれ、まぁわかる気がするがな」
「あがりー!」
詩織がリビングへとタオル一枚で入ってくる。
「おい!詩織!服はどうした?」
「そうそう、それ、ミナモさんに聞こうと思ってて」
詩織はタオルのまま、キッチンの方へと行き、ミナモに代えの服が無いか聞いていた。ミナモが詩織に注意しているのが聞こえてくる。
「はぁ、本当に何年経っても詩織は変わらんな」
「本当にな」
糸音達が話していると、さっきキッチンへと向かった詩織がミナモと共にやってきた。
「ルクスリアさん達も来ましたか。では始めましょうか」
「おなかぺこぺこだよー」
「お前はまず服を着ろ!」
「ふっふ、本当に昔みたいだ」
ジータはそう言いながら涙を流す。それを見て、皆黙ってしまった。
「椿は必ず連れて帰るよ」
「糸音」
「不安そうな顔をするなルクスリア。約束するよ必ず連れて帰る」
(椿のためにも、そして紅羽の夢のためにも)
(一体どこへいくんだ?)
二人は街の中を治安維持局の方へと歩いていく。糸音は目的の場所に検討がつかずにいた。しかしあの真剣な表情を見るからに何かあるんだなと思い、黙ってミナモの後をついて行った。そして治安維持局の裏の山道へと入っていく。
(この道はたしか、、)
糸音はかつて紅羽と上ったこの道を思い出す。ミナモは黙って日が傾き始めた山道を進んでいく。しばらく歩いてようやく目的の場所へと辿りつく。
「何も聞かずについてきてくださり、ありがとうございます」
「いや、いいんだ。それよりも何故ここへ?」
「こちらへ」
ミナモに案内されて展望台の端へと案内される。
「ここは」
案内されたそこには墓が一つ建てられていた。
「紅羽のか」
「はい。椿お嬢様は京のご実家の方に墓を建てていますが、私たちはここに建てました。それがあの人の頼みでしたから」
「頼み?」
「紅羽様は、自分が死んだらこの場所に眠らせてほしいと。しかし遺骨が無いのでここには形だけの墓しかないですが」
「あいつらしいな」
「糸音さん。あなたは椿お嬢様を救えますか?あの子を修羅の道から助け出すことはできますか?」
「あいつは私への恨みを一生忘れないだろう。でも、他の何を捨ててでも私を恨むことなど誰も望んじゃいない。紅羽だってな」
糸音は墓の前へしゃがみ込むと手を合わせて目を瞑った。糸音は紅羽との思い出に耽っていた。そして、ふと思い出した事を口にする。
「あいつの願いはまだ叶ってないな」
「え?」
糸音は立ち上がり、ミナモの方を向く。
「ミナモさん、一つ頼みがあるんだが」
二
二人は山を降りて家へ帰ると家の前で詩織が待っていた。
「遅かったね、どこ行ってたの?」
「ちょっとな」
「ふぅーん、まぁお腹減ったから早くご飯にしようよー」
「はぁ、相変わらずマイペースで、遠慮がないな」
「これが私です!」
「胸を張って言うことじゃないだろ」
「それじゃあ、ご飯にしましょうか。お二人とも中へ。どちらか先にお風呂をどうぞ」
「じゃあ、私入るー」
詩織は家に入ると早々に風呂場へと向かった。
詩織が風呂に入ってる間にルクスリアとジータがやってきた。
「仕事は終わったのかルクスリア」
「あぁ滞りなくな」
「私も終わりました!」
「ふっふ、」
「どうしましたか?ルクスリアさん」
「いや、ジータが、なんか昔みたいになって。最近は仕事時のジータしか見ていなかったからかもしれんが。なんか懐かしいな」
「糸音さんとかがいると自分でもわからないですが、初心に戻るみたいな、、ですかね」
「なんだそれ、まぁわかる気がするがな」
「あがりー!」
詩織がリビングへとタオル一枚で入ってくる。
「おい!詩織!服はどうした?」
「そうそう、それ、ミナモさんに聞こうと思ってて」
詩織はタオルのまま、キッチンの方へと行き、ミナモに代えの服が無いか聞いていた。ミナモが詩織に注意しているのが聞こえてくる。
「はぁ、本当に何年経っても詩織は変わらんな」
「本当にな」
糸音達が話していると、さっきキッチンへと向かった詩織がミナモと共にやってきた。
「ルクスリアさん達も来ましたか。では始めましょうか」
「おなかぺこぺこだよー」
「お前はまず服を着ろ!」
「ふっふ、本当に昔みたいだ」
ジータはそう言いながら涙を流す。それを見て、皆黙ってしまった。
「椿は必ず連れて帰るよ」
「糸音」
「不安そうな顔をするなルクスリア。約束するよ必ず連れて帰る」
(椿のためにも、そして紅羽の夢のためにも)
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