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第五章 忘却再生
第106話 再び
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「ここがヘイオーかぁ、うー寒い」
船から降りて早々、椿は震えながら紅羽にしがみついていた
「おいおい、椿引っ付きすぎた」
「喜んでいるな紅羽」
「別に喜んでなんかないぜ」
「顔が笑ってるよ、変態が」
「紅羽様は椿お嬢様がお好きですから」
そんなやりとりしていると最後の一人ルクスリアが荷物をかかえて船から降りてきた。
「よし、じゃあ行くか。実は北のミリオドにもう家を用意してあるんだ」
「だからってわざわざ北にしなくてもいいじゃねぇか」
「まぁそういうな、私がミリオドに住んでいるんだからいいじゃないか」
「はぁ、仕方ねぇ、行くか」
四人が歩き始めた時、糸音は辺りを見渡していた。
「どうかしたか?糸音」
「いや、まさかこんなに早くここに来るなんてな」
「そうだな、ドンと胸を張れ。お前はこの国では英雄なんだから」
「こそばゆいな」
五人は北の街ミリオドへと出発した。その後、特に何事もなく五日ほどゆっくり歩いてミリオドへと到着した。
「いや、寒すぎ」
「椿は初めてだからな、私たちは慣れたから」
「いや、俺は慣れねぇよ」
「だめだな紅羽は」
「なんだと!ってかミナモさん大丈夫なの?」
「ええ、私は全然平気です」
「さすがミナモさん、ほら紅羽も見習えよ」
「うっせぇ!」
「こっちだ!」
ルクスリアが先導してミリオドの街へと入る。以前とは打って変わって賑やかな街になっていた。
「こんなに賑やかだっけここ?」
「あぁ、この街の復興はもうほぼ終わっている、それに街のみんなも活気が戻ってきたしな。そうだ、後で孤児院にも寄ってやってくれ、糸音と紅羽に会いたがっている子供が多くてな」
「あいよー!」
しばらく街の中を歩いていると要塞があった場所へと辿りつく。
「ここは、今はもう完全に取り壊して治安維持局の拠点を作っている最中なんだ。今は仮でテントを立てているだけだがな。それで紅羽達が住む家はこっちだ」
言われてみてみると、京の洋館ほどの大きさではないがそれなりに大きい家がそこにはあった。
「治安維持局と近いから、もし何かあればすぐに駆けつけることができるってわけだ。まぁ何もないだろうがな」
「立派な家」
椿は家を見上げて素直に関心していた。
「ねぇ、入っていい?」
「どうぞ、これ鍵ね」
ルクスリアから鍵を受け取り中へと入る。
すでに暖房がついてあって、中は程よい暖かさであった。
「あったかいなぁ」
「一応、家具一式は全て揃えてある、何か必要であれば言ってくれ」
「こんな手厚く迎えてくれるとはな」
「そりゃ、当たり前だぞ。何たって英雄の家族なんだから」
「なんか照れるな」
しばらくみんなで談笑しながら家の中を見て回って、部屋の場所を決めたりなんかして時間を過ごした。夜になり孤児院へと向かう為、ルクスリアと糸音、紅羽の三人は家を後にする。
「生存した子供達は何人かは親が居なくてな。それで私の知り合いに頼み孤児院を開いたんだ。今や他の街の復興も始まって、この国はいい方向へと進んでいる」
「そりゃあいい事だ」
「そうだな」
「お前たち二人には感謝しかないよ、それと詩織もな」
「詩織か、今頃どうしてるかな」
「結局、向こうでは会えなかったからな」
「まぁいずれ会えるさ、、着いたぞ」
扉をノックすると、中から若い女性が一人出てきた。
「あら、ルクスリア様」
「夜になってしまって、すまないなミトナ」
「いえいえ、英雄様達もわざわざお越しくださりありがとうございます」
「いやいや、そんなやめてくれよ、英雄だなんて」
「なんだか、こそばゆいな」
「いえ、お二方はこの国を救ってくださったんですから。とりあえず外は寒いので皆様方、中へどうぞ。子供達も待っています」
「おじゃまします」
三人は家の中へ入る。すると子供が数人居て全員が入ってきた三人を見ると一斉に駆け寄って来た。
「うわー、英雄様だぁ」
「お姉さん久しぶり、あの時はありがとう」
「紅羽様、ありがとう」
三人は人気者となっていて、紅羽は女の子にずいぶんと好かれていた。
「こらこら、英雄様達も困ってるから、ゆっくりね」
「はーい!」
ミトナが声をかけると子供達は少し大人しくなった。しばらく子供達の相手をした後、三人は椅子へと腰掛けて一息つく。
「人気者だな」
「なんか、素直に嬉しいぜ、こういうのは」
「皆、いい子だ。二人とも、暇があったら時々遊びに来てやってくれ。子供達も喜ぶだろう」
「あぁ」
「そうだな」
三人は少しゆっくりした後、孤児院を静かに去って行った。
家へ戻ると椿が引っ越し祝いでパーティを開こうと言い出したので、皆んなで色々準備して楽しい時を過ごした。数週間経って、椿の怪我も完治して糸音との稽古も再開した。紅羽は時々、京へ戻って皇王からの命を受けて色々な仕事をこなしていた。ルクスリアは治安維持局統括として国の復興に人力していた。糸音はこんな平穏な日々がずっと続くのだろうと思った。
そして約三年の月日が経つ。
船から降りて早々、椿は震えながら紅羽にしがみついていた
「おいおい、椿引っ付きすぎた」
「喜んでいるな紅羽」
「別に喜んでなんかないぜ」
「顔が笑ってるよ、変態が」
「紅羽様は椿お嬢様がお好きですから」
そんなやりとりしていると最後の一人ルクスリアが荷物をかかえて船から降りてきた。
「よし、じゃあ行くか。実は北のミリオドにもう家を用意してあるんだ」
「だからってわざわざ北にしなくてもいいじゃねぇか」
「まぁそういうな、私がミリオドに住んでいるんだからいいじゃないか」
「はぁ、仕方ねぇ、行くか」
四人が歩き始めた時、糸音は辺りを見渡していた。
「どうかしたか?糸音」
「いや、まさかこんなに早くここに来るなんてな」
「そうだな、ドンと胸を張れ。お前はこの国では英雄なんだから」
「こそばゆいな」
五人は北の街ミリオドへと出発した。その後、特に何事もなく五日ほどゆっくり歩いてミリオドへと到着した。
「いや、寒すぎ」
「椿は初めてだからな、私たちは慣れたから」
「いや、俺は慣れねぇよ」
「だめだな紅羽は」
「なんだと!ってかミナモさん大丈夫なの?」
「ええ、私は全然平気です」
「さすがミナモさん、ほら紅羽も見習えよ」
「うっせぇ!」
「こっちだ!」
ルクスリアが先導してミリオドの街へと入る。以前とは打って変わって賑やかな街になっていた。
「こんなに賑やかだっけここ?」
「あぁ、この街の復興はもうほぼ終わっている、それに街のみんなも活気が戻ってきたしな。そうだ、後で孤児院にも寄ってやってくれ、糸音と紅羽に会いたがっている子供が多くてな」
「あいよー!」
しばらく街の中を歩いていると要塞があった場所へと辿りつく。
「ここは、今はもう完全に取り壊して治安維持局の拠点を作っている最中なんだ。今は仮でテントを立てているだけだがな。それで紅羽達が住む家はこっちだ」
言われてみてみると、京の洋館ほどの大きさではないがそれなりに大きい家がそこにはあった。
「治安維持局と近いから、もし何かあればすぐに駆けつけることができるってわけだ。まぁ何もないだろうがな」
「立派な家」
椿は家を見上げて素直に関心していた。
「ねぇ、入っていい?」
「どうぞ、これ鍵ね」
ルクスリアから鍵を受け取り中へと入る。
すでに暖房がついてあって、中は程よい暖かさであった。
「あったかいなぁ」
「一応、家具一式は全て揃えてある、何か必要であれば言ってくれ」
「こんな手厚く迎えてくれるとはな」
「そりゃ、当たり前だぞ。何たって英雄の家族なんだから」
「なんか照れるな」
しばらくみんなで談笑しながら家の中を見て回って、部屋の場所を決めたりなんかして時間を過ごした。夜になり孤児院へと向かう為、ルクスリアと糸音、紅羽の三人は家を後にする。
「生存した子供達は何人かは親が居なくてな。それで私の知り合いに頼み孤児院を開いたんだ。今や他の街の復興も始まって、この国はいい方向へと進んでいる」
「そりゃあいい事だ」
「そうだな」
「お前たち二人には感謝しかないよ、それと詩織もな」
「詩織か、今頃どうしてるかな」
「結局、向こうでは会えなかったからな」
「まぁいずれ会えるさ、、着いたぞ」
扉をノックすると、中から若い女性が一人出てきた。
「あら、ルクスリア様」
「夜になってしまって、すまないなミトナ」
「いえいえ、英雄様達もわざわざお越しくださりありがとうございます」
「いやいや、そんなやめてくれよ、英雄だなんて」
「なんだか、こそばゆいな」
「いえ、お二方はこの国を救ってくださったんですから。とりあえず外は寒いので皆様方、中へどうぞ。子供達も待っています」
「おじゃまします」
三人は家の中へ入る。すると子供が数人居て全員が入ってきた三人を見ると一斉に駆け寄って来た。
「うわー、英雄様だぁ」
「お姉さん久しぶり、あの時はありがとう」
「紅羽様、ありがとう」
三人は人気者となっていて、紅羽は女の子にずいぶんと好かれていた。
「こらこら、英雄様達も困ってるから、ゆっくりね」
「はーい!」
ミトナが声をかけると子供達は少し大人しくなった。しばらく子供達の相手をした後、三人は椅子へと腰掛けて一息つく。
「人気者だな」
「なんか、素直に嬉しいぜ、こういうのは」
「皆、いい子だ。二人とも、暇があったら時々遊びに来てやってくれ。子供達も喜ぶだろう」
「あぁ」
「そうだな」
三人は少しゆっくりした後、孤児院を静かに去って行った。
家へ戻ると椿が引っ越し祝いでパーティを開こうと言い出したので、皆んなで色々準備して楽しい時を過ごした。数週間経って、椿の怪我も完治して糸音との稽古も再開した。紅羽は時々、京へ戻って皇王からの命を受けて色々な仕事をこなしていた。ルクスリアは治安維持局統括として国の復興に人力していた。糸音はこんな平穏な日々がずっと続くのだろうと思った。
そして約三年の月日が経つ。
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