100 / 199
第五章 忘却再生
第99話 椿とルクスリア
しおりを挟む
一
洋館に着くと椿は自分の部屋へと戻っていった。
「はぁ、子供とは難しいな」
椅子に落ち着くとルクスリアはため息混じりにそんな事を呟いた。
「私の時より酷いな、まぁ滞在中頑張って仲良くなるんだな」
「また、人ごとみたいに言って」
「まぁ、そのうち椿もお前がいい吸血鬼だってわかってくれるさ」
「紅羽の言葉を信じるよ」
「どうぞ」
ミナモさんが三人分のお茶を用意して持って来てくれた。
「ありがとう。それでカンナギの館へはいつ行くんだ?」
「日も傾いているし、今日はゆっくりさせてもらって明日行くよ、付き添い頼むよ」
「任せろ、糸音はどうする?」
「私は椿と一緒にいるよ」
「じゃあ留守はよろしく頼むよ。ちょっと早いが飯の準備でもするか。ミナモさん!今日は豪勢に頼むよ!」
「承知しました」
ミナモさんはキッチンへ移動すると、私たち三人はしばらく談笑した。椿は部屋に篭ったまま出てこなかった。
二
ミナモさんがご飯の準備をして、下で三人が談笑している間に椿は時間を持て余していたので、いつもの刀を持ってこっそり家を出て森へと向かった。
「はぁ、なんか申し訳ないことしたかな」
椿は森の中を歩きながら一人呟いていた。考え事をしていたせいで、後ろからついて来る熊に気づかないでいた。そしてしばらく歩いたところでようやくその存在に気付いて振り返ると刀を構える。
「く、熊!?こんなところに、なんで、、」
(とにかく、逃げないと、、)
椿はゆっくりと後ずさると自分の後ろが崖になっていることに気づいた、そして次の瞬間大きな熊は椿に襲いかかってきた。
「うわ!」
椿は足を踏み外して崖の下へと落ちていく。
三
「糸音、椿を呼びに行ってくれないか」
夕食の準備が整って、糸音は紅羽に言われて二階へとあがる、そして軽く椿の部屋をノックすると反応が無く、気配がしないことに気づくと部屋を開ける。
「椿?」
部屋は真っ暗で誰も居なかった。糸音は少し焦り、階段を駆け降りてリビングへと向かった。
「椿がいないぞ!」
「なんだと!?まさか森へ行ったのか」
「手分けして探そう。誰か一人残ろう。もし帰ってきて誰も居なかったら行き違いになるかもしれないし」
「それなら私が残ります」
「じゃあ、三人で森へ探しに行くぞ!」
三人はミナモ一人を残して椿の捜索へと向かった。
洋館に着くと椿は自分の部屋へと戻っていった。
「はぁ、子供とは難しいな」
椅子に落ち着くとルクスリアはため息混じりにそんな事を呟いた。
「私の時より酷いな、まぁ滞在中頑張って仲良くなるんだな」
「また、人ごとみたいに言って」
「まぁ、そのうち椿もお前がいい吸血鬼だってわかってくれるさ」
「紅羽の言葉を信じるよ」
「どうぞ」
ミナモさんが三人分のお茶を用意して持って来てくれた。
「ありがとう。それでカンナギの館へはいつ行くんだ?」
「日も傾いているし、今日はゆっくりさせてもらって明日行くよ、付き添い頼むよ」
「任せろ、糸音はどうする?」
「私は椿と一緒にいるよ」
「じゃあ留守はよろしく頼むよ。ちょっと早いが飯の準備でもするか。ミナモさん!今日は豪勢に頼むよ!」
「承知しました」
ミナモさんはキッチンへ移動すると、私たち三人はしばらく談笑した。椿は部屋に篭ったまま出てこなかった。
二
ミナモさんがご飯の準備をして、下で三人が談笑している間に椿は時間を持て余していたので、いつもの刀を持ってこっそり家を出て森へと向かった。
「はぁ、なんか申し訳ないことしたかな」
椿は森の中を歩きながら一人呟いていた。考え事をしていたせいで、後ろからついて来る熊に気づかないでいた。そしてしばらく歩いたところでようやくその存在に気付いて振り返ると刀を構える。
「く、熊!?こんなところに、なんで、、」
(とにかく、逃げないと、、)
椿はゆっくりと後ずさると自分の後ろが崖になっていることに気づいた、そして次の瞬間大きな熊は椿に襲いかかってきた。
「うわ!」
椿は足を踏み外して崖の下へと落ちていく。
三
「糸音、椿を呼びに行ってくれないか」
夕食の準備が整って、糸音は紅羽に言われて二階へとあがる、そして軽く椿の部屋をノックすると反応が無く、気配がしないことに気づくと部屋を開ける。
「椿?」
部屋は真っ暗で誰も居なかった。糸音は少し焦り、階段を駆け降りてリビングへと向かった。
「椿がいないぞ!」
「なんだと!?まさか森へ行ったのか」
「手分けして探そう。誰か一人残ろう。もし帰ってきて誰も居なかったら行き違いになるかもしれないし」
「それなら私が残ります」
「じゃあ、三人で森へ探しに行くぞ!」
三人はミナモ一人を残して椿の捜索へと向かった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
カクテルの紡ぐ恋歌(うた)
弦巻耀
ライト文芸
鈴置美紗が「あの人」と出会ったのは、国家公務員になって三年目の初夏。異動先で新たな一歩を踏み出した美紗は仕事中に問題を起こし、それが、二十歳も年上の自衛官との許されぬ恋の始まりとなる……。
中央官庁の某機関という特殊な職場を舞台に、運命のパズルピースがひとつ揃うたびに、真面目に生きてきたはずの二人が一歩ずつ不適切な関係へと導かれていく様を、「カクテル言葉」と共にゆっくり描いてまいります。
この物語はフィクションです。実在する人物及び団体とは一切関係ありません。本文中に登場する組織名について、防衛省と自衛隊各幕僚監部以外はすべて架空のものです(話の主要舞台に似た実在機関がありますが、組織構成や建物配置などの設定はリアルとは大きく変えています)。
作者が酒好きなためお酒を絡めた話になっていますが、バーよりは職場のシーンのほうがかなり多いです。主人公が恋する相手は、若いバーテンダーではなく、二十歳年上の渋い系おじさんです(念のため)。
この物語は、社会倫理に反する行為を容認・推奨するものではありません。
本文に登場するカクテルに関しては、
・Coctail 15番地 監修『カクテルの図鑑』マイナビ出版, 2013, 208p
・KWHR様のサイト「カクテル言葉」
などを参考にいたしました。
職場に関する描写については、防衛省・自衛隊公式ページ(http://www.mod.go.jp/)、その他関連ウェブサイトを参考にしています。
(他サイトにも投稿しています。こちらはR15以上R18未満の内容を含むオリジナル版を挿絵付きで通しで掲載しております)
ヒーラーズデポジット
池田 蒼
ライト文芸
ギャンブルに明け暮れて生きてきてどん詰まりになった中年男性が藁にもすがる思いで訪れた、路地裏の不思議な店。そこで受けた審査をきっかけに出会った少女と不思議な力が男の運命を数奇なものに変えていく。複雑に絡み合う男の過去や裏組織の陰謀に予想されない結末が待ち構えているかもしれません。(ただいま絶賛リバイズ中です。そのうえで5月中に書き終えれるように頑張ります。)
猫だけに吐く弱音 ~余命3か月を宣告された家族の軌跡~
瀬崎由美
ライト文芸
人間ドックの予約を勝手にドタキャンするような医者嫌いの父。頭痛と眩暈を訴えたので病院へ連れていけば、余命3か月の末期ガンの診断が。肺ガンからの脳腫瘍はすでに3センチにもなっていた。母の希望で本人への告知は無し、家族だけが本当の病名を知る闘病生活。父は猫の前でだけ弱音を吐いた。もうダメかもしれん、と。癌細胞に徐々に蝕まれていく父の身体と、少しずつ固まっていく家族の覚悟。
★第6回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。
雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!
谷島修一
ライト文芸
雑司ヶ谷高校1年生の武田純也は、図書室で絡まれた2年生の上杉紗夜に無理やり歴史研究部に入部させられる。
部長の伊達恵梨香などと共に、その部の活動として、なし崩し的に日本100名城をすべて回る破目になってしまう。
水曜、土曜更新予定
※この小説を読んでも歴史やお城に詳しくなれません(笑)
※数年前の取材の情報も含まれますので、お城などの施設の開・休館などの情報、交通経路および料金は正しくない場合があります。
(表紙&挿絵:長野アキラ 様)
(写真:著者撮影)
神楽鈴の巫女
ゆずさくら
ライト文芸
ある日、知世のクラスに転校生がやってくる。その転校生は、知世が昨日見た夢に出てきた巫女そっくりだった。気が動転した知世は、直後のある出来事によって転校生と一緒に保健室に運ばれてしまう。転校生は、見かけはいたって普通の女子高校生だが、実は悪と戦う巫女戦士だったのだ……
REMAKE~わたしはマンガの神様~
櫃間 武士
ライト文芸
昭和29年(1954年)4月24日土曜の昼下がり。
神戸の異人館通りに住む高校生、手塚雅人の前に金髪の美少女が現れた。
と、その美少女はいきなり泣きながら雅人に抱きついてきた。
「おじいちゃん、会いたかったよ!助けてぇ!!」
彼女は平成29年(2017年)から突然タイムスリップしてきた未来の孫娘、ハルミだったのだ。
こうして雅人はハルミを救うため、60年に渡ってマンガとアニメの業界で生きてゆくことになる。
すべてはハルミを”漫画の神様”にするために!
私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。
アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。
【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】
地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。
同じ状況の少女と共に。
そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!?
怯える少女と睨みつける私。
オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。
だったら『勝手にする』から放っておいて!
同時公開
☆カクヨム さん
✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉
タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。
そして番外編もはじめました。
相変わらず不定期です。
皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます🙇💕
これからもよろしくお願いします。
駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜
あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』
という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。
それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。
そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。
まず、夫が会いに来ない。
次に、使用人が仕事をしてくれない。
なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。
でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……?
そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。
すると、まさかの大激怒!?
あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。
────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。
と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……?
善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。
────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください!
◆小説家になろう様でも、公開中◆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる