天使ノ探求者

第五章 忘却再生

第86話 子供の街

ミリオドに着いた三人は違和感を覚える。
　
「なんだ、子供しかいないぞ」
　
「たしかに、どう言うことだ」
　
「おーい、君たち、ちょいちょい。話し聞かせてくれるかー？」
　
詩織が近くに居た子供に声をかけると子供はそそくさと逃げて行った。
　
「おい、何してんだ！」
　
「いや、ちょっと話し聞こうと思って」
　
「はぁ、とりあえず私が行くよ」
　
糸音は近くにあった家の扉をノックすると中から子供が出てくる。
　
「ちょっといいか？話を聞きたいんだけど」
　
「、、、いいよ」
　
「ありがとう」
　
三人は家の中へ招かれるとそこには数人の子供が居て階段の影からこちらの様子を伺っていた。三人は椅子に腰掛けると子供に問いかける。
　
「なぁ、この街はどうなっている？子供しかいないが」
　
「ここはジャックが統治する街、逆らったら収監される」
　
「待て、じゃあこの行為はまずいんじゃないのか？俺たちを招きいれて」
　
「そう、だからこれは命令なの、、ジャック様がもし街に人が来たら家に入れてやれと」
　
「なっ！わ、罠か！」
　
「いや、安心はできないが。何か策があるんだろう。ここは乗っておこう」
　
「でも、どうするんだい糸音？流石に私はゆっくり寝れないよ、この状況」
　
「寝る時は順番に寝よう。それよりもこの街について教えてくれないか、できるだけ」
　
子供は少し考えて。
　
「、、いいよ。ただし約束して私達を助けて」
　
「助ける？」
　
「うん、この街に居た大人は全員監獄に連れて行かれた。ジャックが来てから僕たちは奴隷だよ、一五歳を過ぎると強制的に監獄に連れて行かれる、逆らえば殺される。この街をアイツから、ジャックから解放して」
　
「なるほどな、そういうことか」
　
紅羽は子供の頭を撫でながら笑いかける。
　
「安心しな、そのつもりで俺たちはここへ来たんだ」
　
「ありがとう」
　
「ならゆっくりしている暇はねぇな」
　
三人は立ち上がり、扉に向かい去って行った。
　
「気をつけてね、お兄ちゃん達」

三人は家を出る。
　
「さて、どうするよ」
　
「とりあえず乗り込んじゃう」
　
「普通に正面から行こう」
　
「そりゃあいいや」
　
三人は要塞ロンドルグへと向かった。
　
ロンドルグは意外に近かった。街の外れにある山を削って造った要塞のようだった。
　
「警備はいないのか」
　
「ぶっ壊すか？」
　
「そだねー、じゃあやっちゃうよ」
　
二人が頷くと、詩織が巻物を取り出していつものようにクナイで切り込むと穴から勢いよく稲妻が城壁へと走った。大きい轟音と共に城壁は吹き飛んでいった。
煙が捌けると眷属崩れ達が糸音達に向かって襲いかかって来る。
　
「やっぱりきたか、やるぞ」
　
「おけー」
　
「よしきた！」
　
三人は向かってくる眷属崩れ達を薙ぎ倒していく。しかし、糸音は戦闘の中、違和感を感じた。
　
「おかしいな」
　
「え？なんだって？」
　
「こいつら、武装してない」
　
「ん？言われてみればたしかに、ただこっちに向かってくるだけみたいだな」
　
「ある程度蹴散らしたら中へ急ごう」
　
「おっけー」
　
「了解！」
　
三人は数匹の眷属崩れを残して要塞の奥へと進んでいった。中は思いの外広くて、薄暗くジメジメした場所だった。そして三人は別れ道で足を止める。
　
「別れるか、丁度、3本の分かれ道だしな」
　
「じゃあ、私は右」
　
「俺は左」
　
「じゃあ、真ん中だな」
　
三人はそれぞれに別れて進んでいく。