天使ノ探求者

はなり

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第五章 忘却再生

第78話 作戦

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糸音達は東へ移動を開始していた。
 
「ん?あれは紅羽の伝書鳩か」
 
「伝書鳩?何だそれ」
 
「え!知らないのか。これがジェネレーションギャップか」
 
ルクスリアは飛んできた鳥からメモを受け取り中を確認する。
 
「やはりか、東のミラーレス地区辺りから眷属崩れが群れをなしているそうだ」
 
「厄介な話だ、まぁ元はただの子悪党共だから、クレインバルドほどではないだろうが」
 
「とにかく急ごう、紅羽達はミラーレス地区の外れにある小屋にいるそうだ」
 
二人は森を進んで行く。夜通し歩き、翌日の昼過ぎには目的の小屋に着いた。
 
「ここだな」
 
「先に私が行こう」
 
警戒しつつ糸音は小屋に近づきノックをする。すると中からしゃがれ声が聞こえてきた。
 
「あいことばは?」
 
「ルクスリアは毎晩、熊のぬいぐるみを持って寝ている」
 
「よし!」
 
扉が開かれ中から詩織が出てくると。
 
「よし!じゃないわ!な、何で知っているだ!」
 
「え、だって、こないだこっそり部屋覗いたら抱いて寝てたよ、ねっ糸音」
 
「あぁ、それで即興であいことばにした」
 
「いやー、わかってるね糸音は。最近ノリいいよね」
 
「はぁ、おふざけはそこまでで。それで紅羽は?」
 
「今、偵察中。もうじき帰ってくると思うよ」
 
「とりあえず、わかるだけの情報を教えてくれ」
 
「あいよ」
 
詩織は今持っている情報を伝えた。
 
「まさかな、実はこっちも眷属崩れになったクレインと対峙した」
 
「あらあら、そりゃたいへんだったな。こっちは雑魚ばっかりだったから、まだマシな方か」
 
「戻ったぞー、ってルクスリアやっと来たか」
 
「あぁ遅くなった」
 
「無事ならいい、それで首尾は?」
 
紅羽にも先ほどの話しをする。
 
「なるほどな、ならこっちのライククイーンも眷属崩れか」
 
「いや、それは少し違うかもな」
 
「どういう事だ糸音」
 
「眷属崩れとは吸血鬼化の失敗だ、理性が無くなり、制御の効かない化け物と化す。だがそうじゃなく眷属化の成功、吸血鬼化の成功は自我を持っている。眷属にされた吸血鬼はさらに別の人間を眷属にする事ができる。しかし力の無い者は眷属にはなれず眷属崩れとなってしまう。そして親である吸血鬼は眷属崩れを操る事ができる」
 
「まさか」
 
「あぁ、ルクスリアも聞いただろ、意識が無くなる前にクレインバルドが言っていた、ライクは成功したって」
 
「じゃあ、吸血鬼共の親玉はそのライクってことなの?」
 
「いや、でも少なくともミラーレスに居た眷属崩れはライクが操っていると思ったほうがいい。おそらくミンダルに居た者も全員、ミラーレスにいるだろうな」
 
「通りで、めちゃくちゃ多かったわけだ」

うんうんと頷く紅羽。
 
「でも、どうやってあの大群を突破する?」
 
「眷属崩れなら陽の光に弱いから、日中は出てこれないはずだ」
 
「なら、行動は日中、日が沈むまでにだな」
 
「いや、ダメだ」
 
「何がダメなんだ紅羽」
 
「何故かは知らんがあの地区全体に深い黒い雲に覆われている。だから日中でも夜みたいに暗い」
 
「そんなバカなことがあるのか!」
 
糸音は過去に聞いた事を思い出す。
 
「いや、ありえるな。吸血鬼の能力は未知数でその中には天候をも操る事もできると聞いた事がある」
 
「はっは、何でもありだねー。さすが吸血鬼」
 
「笑い事じゃないぞ詩織、ならどうすれば止められる」
 
糸音は指を立てて案を提示する。
 
「一つだけ方法がある。ライククイーンを殺す事だ。親玉を殺せば眷属崩れに下された指示は消え、止まる」
 
「なるほど。だが、奴がどこにいるかわかららないんだぞ」
 
「いや、おそらく首都ラルダの王城だ」
 
「なるほどねー、さすがルクスリアだねー」
 
「だが、あの大群はどうする?」
 
「はい!それなら私が道を作るよ」
 
詩織は元気よく手を挙げる。
 
「策はあるのか?」
 
「策ってほどじゃ無いけど、まぁ見てなよ」
 
「なら、親玉は俺と糸音で殺るか」
 
「少し不安はあるが、今はそれが最善策だな。夜が明けて、明日の朝から行動開始だ、頼んだぞ三人共」
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