天使ノ探求者

はなり

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第三章 幽愁暗恨

第27話 前夜

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夜になり宿に戻って来た糸音達は今後の動きについて遊から話を聞いていた。
 
「いいか、襲撃場所は三箇所。北栄へは俺と糸音、カンナギの館へはシャオとメイ、南京へは涼香と火憐で食い止める。涼香はやり過ぎるなよ、後糸音とメイは無理はするなよ。決行は明日の夜、全力で阻止する。失敗すればこの京は終わる」
 
「よし!明日には母さんとも久しぶりに会えるし、気合い入れていかないとね!」
 
「そういや、メイの母親ってシャオさんだったんだな」
 
「うん!うちは捨て子で育ての親が母さんだった、ちなみに師匠でもあるんやで」
 
「師匠か」
 
糸音は自分とメイは境遇が似ているのだなと、そういう点でも気が合うのかなと思った。

「さて、まずはその前に呑み明かそうか、戦いの前の晩酌だ!」
 
「全くこんな時だというのに、遊。まぁやりましょうか」
 
これから大きな戦いが始まる。糸音は昼間の絵描きの女の事を考えていた。何だか違和感を感じた。話していて何故だか懐かしい感じになったし、悲しいと思ってしまった。この感情は一体何なのか。
 
「ふぅ」
 
「どうしたんですか?糸音」
 
縁側で涼んでいると涼香がお猪口片手に寄ってきた。
 
「涼香姉さん、私は師匠の事を思い出した。そして姉弟子にも会った。最近は記憶が戻っていく日々だ、それに学園の皆んなと過ごして変わった気がする」
 
「変わったわよ。まぁ私が最後に見たのは四年ぐらい前ですけどね。糸音、変化を恐れてはいけませんわよ」
 
「恐れ、、」
 
志貴にはああ言ったが実際、記憶を取り戻すのには不安があった。もし記憶が戻って自分が思っているより辛く酷い記憶だったらとか、それこそ悪の心を持ってしまったらとか、糸見の様に復讐に身を投じてしまうかもしれない。
 
「もし、私が記憶を取り戻しておかしくなったり、悪い人になったら。姉さんは殺してくれますか?」
 
「あなたってば、殺さないわよ。それに、それは私ではなくあの子に言いなさいな」
 
涼香はメイを目で指す。
 
「そうですね」
 
その後宴は続きメイが早々に就寝しその後糸音達も就寝についた。火憐と遊を除いては。
 
「まだ、呑めるんだな、遊」
 
「凄いだろ!」
 
「酒呑童子だな」
 
「そういうお前もいけるじゃないか。涼香はいい頃合いで寝たからつまらなかったんだ少し付き合え」
 
「涼香姉さんは消耗が激しいので。それでは見えないの?」
 
その質問で遊の酔い顔が真剣な面持ちになる。
 
「駄目だな。今回は一人一人見る事もできない。シャオや涼香、火憐に糸音にメイおまけに敵には六花が居るかもときた。一つの場所に強大な力が集まりすぎて予測も予知もできん」
 
「特別な異能を持ってるシャオとアンタならいけると思ったんだけど」
 
「特別ね、そうかもしれんが、その特別な人間でも糸衛は救えなかった。無力も同然さ」
 
遊はそう言い酒を煽る。
 
「振り返っても仕方ないさ。そろそろ夜も随分更けてきた、もう寝るよ俺は」
 
「おやすみ遊、私もそろそろ寝よっと」
 
 
糸音達が就寝した同時刻カンナギの館でシャオは一人屋敷の廊下で立っていた。
 
だ?いやまだ死んでないんか」
 
シャオは皇室に続く長い廊下を歩く。夕方頃この京に到着して、皇王にクーデターの話を伝えようと皇室に向かおうと扉を開けたら、廊下に戻っていた。
 
「死ぬ前の記憶は無いって事は、これは私の能力で戻って無いって事やな。幻術の類やな」
 
とりあえず進んでみるか
 
シャオを辺りを警戒しつつ扉まで進むと、取っ手に手をかける寸前で止まる。
 
ここを開けるのが発動条件だとしたら触れない方がいいんか。
 
「はぁ、また怒られるやろな」
 
シャオは扉を蹴破った。そして何処からともなく声が聞こえる。
 
「そうそう、一つ一つクリアしていって次の夢へ」
 
その瞬間、辺りの景色が一変していつの間にかシャオは皇室にいた。
 
「これは異能やな。さてどうしたもんかな、夢関連の異能なら厄介やな」
 
再び何も無い所から声が聞こえる。
 
「そうそう、これは夢。ルカの異能、あなたは今、私の夢の中にいる。あなたが扉を掴んだ瞬間から始まっている」
 
シャオは声からして子供だと確信する。子供なら素直に聞いても教えてくれるだろうと思った。
 
「ここから出るにはどうしたらええんや?」
 
「ふふふ、それはできないよ。あなたはここから出れない。ルカと夢を見るのそして楽しい楽しい遊びをするの」
 
無邪気な声で楽しむルカ。そしてシャオは考えるが直ぐにやめて、座りだした。
 
「どうしたのかな?諦めちゃった?」
 
「ああ、諦めた!だから待つ!」
 
「待つ?えーつまんない」
 
「なら出してくれへんか?」
 
「それはできないよ。おじさんに頼まれたんだから、お姉さんを留めておくようにって」
 
「おじさん?一体誰の事だ」
 
「おじさんはね、ルカやお姉ちゃんに力をくれた人」
 
「やっぱり、天与核か」
 
「で、何しよっか?」
 
「寝る!」
 
「えー、」
 
シャオは寝る。夢の中なのに寝るっていうのもおかしいけど。しかし彼女は考えていた。外の連中が来るのを待っていようと。それが一番の打開策で、それにこういうタイプの子供はペラペラしゃべるのは知っていた。
 
「話なら聞いてやるから、何か話してぇな」
 
「じゃあ、お喋りだね!じゃあ、えっとね、えっとね」
 
ルカのお喋りが始まった。
 


南京の六花の集いは南京にある教会にて、明日の襲撃について話し合いに奮闘しているところであった。
 
「明日はついに、この都市を制圧し我々の吸血鬼の王に捧げる。六花様に栄光を!」
 
男達は皆、歓喜の声をあげていた。そしてその様子を外から伺うものがいた。
 
「近所迷惑なやつらだ。何が栄光だ、お前らに明日は無いのによう」
 
その男は一人教会へと歩きだし扉を開ける。
  
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