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第二章 妙縁邂逅
第21話 歯車(狂)
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京の街、カンナギで依頼を終わらせた糸見は憂鬱な気持ちになっていた。
「ボス、これで全部ですかね」
「あぁ、シーバの方も終わったみたいだ。すぐに合流しよう」
糸見はこのままでいいのか迷っていた。悪をひたすらに葬り続ける日々。終わりのない連鎖。力で悪をねじ伏せるのは果たして正しいのか、自分には完全な正義が無いのではと思いはじめていた。
「ん?霧がでてきたな」
「ボス、気をつけてください」
すると、霧の中から一人の男が現れた。黒い喪服で見るからに悪が放つ雰囲気。男が指を鳴らすとフィは霧の中に消えた。
「フィ!貴様、何をした!?」
「お前はそれでいいのか?」
男は唐突に糸見に問いかける。
「何の話だ?貴様は誰だ!」
糸見はわかっていた。男が何について問いかけたのかを、しかしそれを認めるのは自分の正義に反することだと。
「力が欲しいなら手にすればいい。私の依頼を受ける代わりに力を貸してやろう」
「生憎、悪党に依頼されるほど、我々は落ちぶれてはいない」
「私が悪党に見えると?」
「あぁ、貴様からは悪党の放つ臭いが漂いすぎてるくらいだぜ」
「失礼な奴だな。しかし間違ってはいない。ぶれない様に自身の信念か正義かを持っているのだろう。素晴らしい事だ。だがそれだけでは救えない者もいるだろう」
「悪党に説法される筋合いはないね」
「一つ問おう。ならお前は我々を救えるか?」
「救ってほしいなら、最初から悪さをするなって事だな」
「だめだな。それでも本当に夕凪糸衛の弟子か」
糸見は驚いた。その名はもう聞く事がないであろうと思っていた。
「本当に何者だ貴様。我が師を知っているのか?」
「あぁ、よく知っている。だからこそわかる奴の理想もな」
「師匠の理想だと?」
「奴はな、あろう事か悪すらも救うことができると信じて行動していた男だ。終わりのない悪と善の拮抗を崩して、あまつさえ悪を善に塗り替えようとしていた。私は思うのだよ。果たして本当に悪がなくなって世界は救われるのか?悪と善のバランスが均等になっているからこそ世界は成り立っているとではと。ならそれを壊す事は悪ではないのか。どちらかに天秤が傾けば世界のバランスは崩れて終わるのでは。それを調整するのが正義の仕事なのではと。ならば世界を壊しているのは貴様達正義ではないのかと」
「戯言をペラペラと、世界のバランスだと?悪を葬り世界平和を願うのが正義だろ」
「所詮は綺麗事だ。お前は薄々感じているはずだ。悪を裁き、正義をなす事が本当の正義なのか疑問を抱いている。では、なりたくてなった悪もいないと言い切れるのか?お前は」
「それは、、」
「元々は善だった者も悪に転ずる。悪だった者も善に転ずる。もし悪が善になる手前でそれをお前達の勝手な正義で殺したとしたら?それをお前は正義と言えるか?」
「なら、私たちがやってきた事は間違いだと」
「間違いではない。それも大事なバランスを取るために必要な事だ、しかしそれでは足りない、殺さず生かす事が大事な事だ。ならそれを殺している貴様は悪では?」
「私が悪、、」
「それにお前にはまずやる事があるのでは、忘れてはならない事があるだろ。力を独占してあまつさえ正義という武器で悪に振りかざしている世界を殺す元凶夕凪家を」
男の言葉は不思議と徐々に心に浸透していく。その時糸見の中で何かが外れた。
「お前が真の正義を貫くなら。善悪の区別はもうつくな」
「悪は許さない。ただそれだけだ」
「では夕凪家は悪か?」
「夕凪家、、夕凪志貴」
「奴はお前に何をした?過去にあっただろ、救えた筈の命をも見捨てた悪だ、この世を、脅かす悪だ」
「奴は許さない。薄れかけていた復讐なるものを、そして奴が悪になったのなら殺すには十分な理由だ」
男は糸見にある物を渡す。
「これは?」
「それであの男の力を封じれる。お前の師匠に貰ったものだ。奴が保有している天与核。力を与える神物、それが夕凪家にはある」
「何故貴様がこれを持っているのかは聞かんが、これは貰っておく。我らは夕凪家を頂きその力を解放する」
「忘れるな本物の正義を」
男は霧と共に消えた。
「ボス!大丈夫ですか!?」
「あぁ、フィ。正義とは何かわかるか?」
「え?そうですね。守る心ですかね」
「それも合っているが、もっと言えば。真の世界平和だ」
第二章 妙縁邂逅 閉幕 第三章 幽愁暗恨へ
「ボス、これで全部ですかね」
「あぁ、シーバの方も終わったみたいだ。すぐに合流しよう」
糸見はこのままでいいのか迷っていた。悪をひたすらに葬り続ける日々。終わりのない連鎖。力で悪をねじ伏せるのは果たして正しいのか、自分には完全な正義が無いのではと思いはじめていた。
「ん?霧がでてきたな」
「ボス、気をつけてください」
すると、霧の中から一人の男が現れた。黒い喪服で見るからに悪が放つ雰囲気。男が指を鳴らすとフィは霧の中に消えた。
「フィ!貴様、何をした!?」
「お前はそれでいいのか?」
男は唐突に糸見に問いかける。
「何の話だ?貴様は誰だ!」
糸見はわかっていた。男が何について問いかけたのかを、しかしそれを認めるのは自分の正義に反することだと。
「力が欲しいなら手にすればいい。私の依頼を受ける代わりに力を貸してやろう」
「生憎、悪党に依頼されるほど、我々は落ちぶれてはいない」
「私が悪党に見えると?」
「あぁ、貴様からは悪党の放つ臭いが漂いすぎてるくらいだぜ」
「失礼な奴だな。しかし間違ってはいない。ぶれない様に自身の信念か正義かを持っているのだろう。素晴らしい事だ。だがそれだけでは救えない者もいるだろう」
「悪党に説法される筋合いはないね」
「一つ問おう。ならお前は我々を救えるか?」
「救ってほしいなら、最初から悪さをするなって事だな」
「だめだな。それでも本当に夕凪糸衛の弟子か」
糸見は驚いた。その名はもう聞く事がないであろうと思っていた。
「本当に何者だ貴様。我が師を知っているのか?」
「あぁ、よく知っている。だからこそわかる奴の理想もな」
「師匠の理想だと?」
「奴はな、あろう事か悪すらも救うことができると信じて行動していた男だ。終わりのない悪と善の拮抗を崩して、あまつさえ悪を善に塗り替えようとしていた。私は思うのだよ。果たして本当に悪がなくなって世界は救われるのか?悪と善のバランスが均等になっているからこそ世界は成り立っているとではと。ならそれを壊す事は悪ではないのか。どちらかに天秤が傾けば世界のバランスは崩れて終わるのでは。それを調整するのが正義の仕事なのではと。ならば世界を壊しているのは貴様達正義ではないのかと」
「戯言をペラペラと、世界のバランスだと?悪を葬り世界平和を願うのが正義だろ」
「所詮は綺麗事だ。お前は薄々感じているはずだ。悪を裁き、正義をなす事が本当の正義なのか疑問を抱いている。では、なりたくてなった悪もいないと言い切れるのか?お前は」
「それは、、」
「元々は善だった者も悪に転ずる。悪だった者も善に転ずる。もし悪が善になる手前でそれをお前達の勝手な正義で殺したとしたら?それをお前は正義と言えるか?」
「なら、私たちがやってきた事は間違いだと」
「間違いではない。それも大事なバランスを取るために必要な事だ、しかしそれでは足りない、殺さず生かす事が大事な事だ。ならそれを殺している貴様は悪では?」
「私が悪、、」
「それにお前にはまずやる事があるのでは、忘れてはならない事があるだろ。力を独占してあまつさえ正義という武器で悪に振りかざしている世界を殺す元凶夕凪家を」
男の言葉は不思議と徐々に心に浸透していく。その時糸見の中で何かが外れた。
「お前が真の正義を貫くなら。善悪の区別はもうつくな」
「悪は許さない。ただそれだけだ」
「では夕凪家は悪か?」
「夕凪家、、夕凪志貴」
「奴はお前に何をした?過去にあっただろ、救えた筈の命をも見捨てた悪だ、この世を、脅かす悪だ」
「奴は許さない。薄れかけていた復讐なるものを、そして奴が悪になったのなら殺すには十分な理由だ」
男は糸見にある物を渡す。
「これは?」
「それであの男の力を封じれる。お前の師匠に貰ったものだ。奴が保有している天与核。力を与える神物、それが夕凪家にはある」
「何故貴様がこれを持っているのかは聞かんが、これは貰っておく。我らは夕凪家を頂きその力を解放する」
「忘れるな本物の正義を」
男は霧と共に消えた。
「ボス!大丈夫ですか!?」
「あぁ、フィ。正義とは何かわかるか?」
「え?そうですね。守る心ですかね」
「それも合っているが、もっと言えば。真の世界平和だ」
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