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父親は誰?
しおりを挟むある日のこと。
『片内 沙苗』は恋人の『吾妻』と共に
喫茶店のテーブルを囲んでいた。
「…こっ、子供ができたのか!?」
「えぇ、そうよ。まだお腹膨らんでないけど、
この中には確かにあなたとの子供がいるの。
一緒に… 頑張って育てましょ!」
吾妻は驚愕の後、こう言った。
「おい… ひとつ言っていいか?」
「なぁに?」
「俺達… 1週間前に付き合い出したばかりだよな?
しかもまだ… そーゆーこともシてないし。
一体誰との子なんだ!?」
「…ふぇっ!?そ、そうだっけかな…?」
「他にも男がいた上に、子供まで…。
まさか、お前がそんなヤツだなんて
思わなかった…。…サヨナラ」
吾妻は冷たい表情と声と共に喫茶店を出た。
「アレ…?アイツじゃなかった…?いやもう、
どの男との子供かなんてわかんないよもう…
あぁ~、誰なんだろ… なんとかして早く
父親を探さないと… シングルマザーなんて
あたしゃゴメンよ!男に金稼がせて!
家事させて!あたしはエステに食事に
楽しみながら子育てしたいのよ~ん…!」
沙苗は徐にスマホを取り出して、
ラインの履歴を見て…
「はぁ… どの男から当たろうか。
とりあえず、コイツからにしよう」
早速 沙苗は付き合っていて、現在は疎遠に
なっていた男、『相良』を呼び出した。
「ひさしぶりだな、沙苗。
急に俺を呼び出して」
「ちょっと、大切な話があってね」
「…?…ハッ!そうか、ついにお前も
ミリタリーの魅力を知ったのか!俺も最初は…
ミリタリーをどことなく敬遠していた。だが、
ミリタリーを受け入れ、ミリオタになった瞬間、
世界は変わった。お前もついにこちら側の
世界にやってきたんだな。歓迎するぞ…!」
「頭まで迷彩色になってやがんのか!?
違うって!あたし、赤ちゃんができたの。
まだ目立ってないけど、この中には確かに…!」
「!?」
それを聞いて、相良は驚愕。
「…えっ、違うと思う…。こうしてお前と会うのは
一年ぶりだし、一年前に一回デートして以来
俺が連絡しても無視を決め込んでいたろ。
それなのに…!まさか他の男と…っ!!」
「…えっ?あれ、そうだっけ…?」
「この托卵野郎!!俺との子だなんて偽って!
そうやって俺に育てさせて、自分はいい男と
いい思いか?ふざけるな!!子供と男を
なめるのも大概にしろ!は~ やっぱり現実の女
なんてろくでなしばかりだな!やっぱり
好きになるのならば、米軍仕様の戦車だな!
ミリタリーは決して裏切ることはない!」
そう言って、相良は喫茶店を出て行った。
「アイツじゃなかったかぁ…。ラインやメールの
履歴から出産時期に合わせて男を探したけど、
そいや アイツのミリオタっぷりに呆れて
無視してたんだっけ。…う~んだとしたら
本当に父親は誰なんだろ。とりあえず次は
『吉井』、『綾小路』の順番に当たってみよう」
こうして沙苗は次々に男達を
当たってみるものの…
「え!?違うよ!?ぼく、そんな覚え…」
「えっ…?まさかコイツも違う…?」
「ってか、赤ちゃんってお腹に宿るんだ…
コウノトリさんが運んでくれるかとばかり…」
「子供かよっ!!」
「ふざけるな!!俺は真剣にお前のことが
好きだったのに…!お前がそんなヤツだった
なんて…!もう女とは付き合わないっ!!
これからは二次元に生きる!!」
「アイツでもないなんて…」
一向に父親が見つかることはなかった。
そして案の定、男達から完璧に
幻滅され、別れを言い渡された。
それから二カ月が経過し、沙苗は自宅にて
弟の『景祐』と、着物を着た父の『大鉄』に
心配されていた。お腹も大きくなり、
出産はもう間近だった。
「どう姉ちゃん?体調は大丈夫?」
「ありがとう、景祐... でも、未だに
誰が父親なのかわからなくて…。
今まで付き合っていた二千人くらい
当たったけど、みんなヤってないから
違うって…。誰かがウソついてるのかな…?」
それを聞いて、父・大鉄は
流石に顔をしかめざるを得なかった。
「いや… 関係持ち過ぎだろうが…
そんなに不埒だからこうなるんだろうが!
これは流石に自業自得だぞ!自分が
遊び相手だと思われていることに…」
「それ以上はやめて父さん!!」
「景祐…」
姉想いの景祐は沙苗の方を向き、言った。
「姉ちゃんの人生は姉ちゃんのモノだ」
「いやお前… そーゆー問題じゃあ…」
「それに、もうこの際 父親が誰かなんて
さしたる問題じゃないよ。まずはとにかく、
元気な赤ちゃんを産むことを考えて。
姉ちゃんの子供ならきっと絶対かわいいし!
オレ、叔父さんになれるなんて嬉しいから!」
「…まぁ、そうだな。まずはそっち優先だ。経緯は
どうあれ、孫ができるということは嬉しいし。
何かあったら、俺たちにいいなさい。
俺たちはお前のことを、ずっと思っているからな」
弟と父の言葉に 沙苗は心打たれた。
「ありがとう… 景祐、お父さん。確かに
お父さんの言う通り、今まで調子に乗って
男遊びし過ぎた 私が悪い。でも!
コレからは 私、真っ当に生きるから!
赤ちゃんを産んで、私は変わるんだ!」
嬉しそうに深く頷く大鉄。すると…
「うっ…!コレは、まさかっ…!?
ウソでしょ…!まだ予定日は先なのにぃ…!」
「姉ちゃん!!陣痛が始まったんだね…」
景祐は沙苗に駆け寄る。
「景祐!沙苗を頼む!俺は救急車を!」
「お願い父さん!」
そして、救急車がやってきて
沙苗は近くの総合病院に運ばれた。
「姉ちゃん!もう少しだよ!頑張って!!」
「う"ぅ"っ…!産まれるっ"…!
産まれるゥ"ゥ"ゥッ…!!」
「片内さん!力を緩めてください!
もう少し!もう少しです!」
そして…
おぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「やりました片内さん!元気な
赤ちゃんが産まれました!さぁ、
早速抱いてあげてください!」
沙苗は朦朧とする意識の中、産まれたての
自分の子を見る。何やらその顔は…
どことなく弟 景祐にそっくりだった。
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そっちに。あれこれ異性を取っ替え引っ替えし、
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