カオスの遺子

浜口耕平

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第二部 自由国ダグラス

第八十三話 作戦会議

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 集会の翌日、会議室に集まったみんなの前で、リードとギャバンは集めた情報をみんなと共有した。ただし、集会の内容については一切触れなかった。
 「まあそう言うことだ、何か他に質問はあるか?」
 すると、ロードがはい!と言って勢いよく手を上げた。
 「何でメリナとアレスは大人しいの? 昨日も帰って来てから変だったし……」
 「それはなぁ、二人が結ばれたからだよ」
 それを聞いてロードとエルフリーデが二人を祝福するように盛大な拍手をした。
 「おめでとう二人とも、これからもお幸せに!」
 「ありがとうエルフリーデ」
 「僕からもおめでとう。つまり結婚てことだよね、赤ちゃんはいつ生まれてくるの?」
 赤ちゃんという言葉を恥ずかしげもなくメリナに尋ねるロードをエルフリーデが体を引き寄せて叱った。
 「コラ、そんなこと聞くなんてダメでしょ!! もっと他のことを聞きなさい!!」
 エルフリーデに叱られたロードは頬を膨らませて、「だって、結婚したら赤ちゃんができるって兄さんが言ってたもん、結婚したら赤ちゃんがママの体に宿るって言ってたもん」と言うと、全員が一斉にリードの方を見た。
 アレスは立ち上がってリードに近づくと、ぼそぼそと二人で会話を始めた。
 「なんてこと教えてんだお前は! ちゃんと一から教えてやれよ」
 「はあ? 全部教えるのか? あんな純粋な奴に? だったらお前がいまから教えてやれよ!」
 「無理だよ! だって、アイツまじでその気になってんじゃん」
 「なら俺にも言うなよ!! いいんだよ、どうせ大きくなったら分かることなんだし。ここは上手く口裏を合わせよう!!」
 「おうそうだな」
 二人はそうと決まったらロードの方を見て、喋りだそうとした時、ギャバンが間に割り込んできた。
 「本当の答えはな、明日から夜中にメリナかアレスの部屋に行ってみろ、すぐに分かるぞ!!」
 「え? どういうこと?」
 「つまり、セ……」
 言いかけたとき、後ろからメリナが鉄の板をギャバンの頭に叩きつけた。
 もろに食らったギャバンは地面に倒れ、彼の頭には大きなたんこぶが浮かび上がった。
 攻撃を食らわしたメリナはロードに顔を近づけると、「今の話は忘れなさい。もし、見てしまったら呪われるわよ」と脅しをかけると、ロードは怯えてエルフリーデの胸にしがみついた。
 「茶番はそこまでだ話を進めるぞ。さっき言ったメリウス、ネロ、ウォレスの三人がこの反兵士運動を裏で操っていると思われる奴らだ。コイツらを捕まえて尋問すればいいんだが、この三人は権力者だ。迂闊に手が出せん、失敗すれば俺たちは国外追放どころか最悪殺されるかもしれないからな」
 「うーん」と全員が手の打ちようがないと腕を組んで悩んだ。
 「だったらこうしよう、まずこの町から出て一番近くにいる奴から尋問していこう。ただし、俺たちの行動を敵に探られるなよ、これは隠密任務だ」
 アレスが沈黙を破って案を出すと、全員がいいねと頷いた。
 「それじゃあ決まったことだし、それぞれ行動開始だ!!」
 元気よく挨拶をすると全員自室に戻って準備を整えエルフリーデの鏡面世界ミライトライトを使い鏡を通して移動するために鏡の前に集まった。
 そして、エルフリーデが鏡の前に立って手をかざして、「鏡面世界ミライトライト」と唱えると鏡が眩い光を放つと、やがてその光は収まって鏡には見知らぬベッドが映った。
 「さあ行きましょう。まずは一人目、サン・ライズグループの会長ネロのいるネメシスへ」
 そして、ロード達は鏡を通ってネメシスへ向かった。

 鏡を通り抜けネメシスのある家の部屋にやって来たロード達は早々に行動を開始した。
 しかし、アレスだけは部屋の豪華さに感嘆した。
 「でっけえ部屋、いくらすんだろ……」
 「アレス早く行くわよー」
 メリナが部屋を出る際に顔をドアから出してアレスを呼ぶが、「先に行っといてくれと」と言い、メリナはロード達について行った。
 部屋に一人残ったアレスは部屋を物色し始めた。
 「さてさて、金目のもんはどこかな~?」
 引き出しを開けたり、クローゼットの中を覗いたりして物色していると、足音が部屋へと近づいてきた。
 しかし、アレスはその音に気付かずに意気揚々と辺りを物色していた。
 そして、ドアが開けられて入ってきた青年と目が合った。
 「あ、、」
 青年は何故自分の部屋に見知らぬ人がいるのかと疑問に感じたが、物色され物が散乱している光景を見て、今目の前にいる男は泥棒だと確信した。
 「泥棒!!」
 部屋の主である青年は近くにあった木刀をアレスに構えてじりじりと距離を詰めた。
 アレスは両手を上げて詰め寄る興奮して近づいてくる青年をどうにかして落ち着かせようとした。
 「ちょっと待て!落ち着け!! 俺は泥棒じゃない!」
 「なら、その手に持っているのは何だ?」
 はっと思い自身の右腕に堅く握られている黄金のブレスレットを見て、隠すように自身のポケットに突っ込んだ。
 「どこに入れてんだお前は!! やっぱり泥棒じゃないか!?」
 「違うこれは俺がもとから持っていたものだ。ここの机の引き出しから取ったんじゃない!!」
 「俺は一言も机の引き出しなんて言ってないが……」
 墓穴を掘ったアレスは言葉を失った、そして次の瞬間、頭に鈍い痛みが走って気を失った。
 気が付くと、アレスは椅子に縄で縛りつけられた状態になっていた。
 体を動かして縄を解こうとするが、固く結ばれていてほどけそうにない。
 そこに、さっきの青年が入ってくると、「目が覚めたか泥棒野郎、安心しろ、まだ誰にも言ってない」 と言い椅子をアレスの前に逆向きに置いて椅子の背にしがみつくように座った。
 アレスはその青年をまじまじと見つめた。
 青年の名はカルマと言い、金色の髪と瞳を持ちアレスより背が小さかった。
 「俺を縛り上げてどうするつもりだ? 言っとくが俺の穴は進入禁止だぞ」
 「興味ねえよ、てめえのなんて。それよ、そんなこと言ってられるのか?俺が自警団に引き出せばお前は投獄されるぞ」
 「なら呼べばいいだろ、俺は構わないぞ」
 アレスはプライドに押されて、捕まってはダメだと事前に確認したことをすっかり忘れていた。
 「フフ、そんなことはしないさ。ただ、俺の言うことを聞いてくれればいいんだ」
 「お前の命令を聞く? やだよそんなの、一体俺に何の得がある?」
 「俺の願いが叶った時には、箱一杯の金貨をやろう」
 「やるやる!! どんなことでも命令してくれ!おっさんのブツでもなんでもしゃぶるぜ!!」
 アレスは報酬に釣られてカルマの提案を受け入れた。
 カルマはアレスの変容ぶりに驚いたが、まあいいと気にしないで自身の目的を語り始めた。
 「俺はこのネメシスの町で生まれ、欲しいものは何でも手に入れることができて何不自由なく暮らしてきた」
 「何だ自慢か?」
 「最後まで聞けって、そんな俺でも一つ不満がある、俺の人生がこの町で終わることだ。俺の父はサン・ライズグループの最高幹部の一人なんだが、俺をグループの役員にしようとしてくるんだ。俺の人生のはずなのに…… ここは自由の国じゃなかったのか?と反発したら怒った父にここの別邸に俺を閉じ込めやがったんだよ!! そこで、お前にはここを出る手助けをして欲しい、そしてどこか父の息が届かない場所まで連れて行って欲しい」
 カルマは頭を下げてアレスに頼み込んだ。
 アレスは上を向いて少し考えた後、彼の提案を受け入れた。
 「そうか、ありがとう」とアレスに感謝の言葉を投げかけた後、拘束していた縄を解いた。
 「さあ、それじゃあ行くか!」
 「気をつけろよ、この家の中には父が俺を監視するために多くの私兵が雇われている」
 「安心しろ、俺はモノホンの兵士だぜ? ちゃんとお前をここから連れ出してやるぜ」
 そうして、二人は家からの脱出を図るためドアに手をかけた。
 さしずめ、幽閉されているお姫様を王子様が連れ出して助けるという童話のような展開に二人は心で笑っていた。
 しかし、男性同士であろうとも自由の解放者というのは美談として後世に受け継がれるだろう。
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