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第4章 お前嘘吐いたな

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「やー! 久しぶりだなたから屋」

「僕……かなり行きにくいんですけど」

「依頼者が来なくてどうする。行くぞ」

「あの、愛さん。急に探偵です、厨房入れてねって言って入れるんですか?」

「あそこの店主ならあたしの言う事なら聞くぞ?」

「は?」

「アイツの秘密を握っているからな。そして、アイツはお前の言う"好意"とやらをあたしに寄せているようだからな」

ま、魔性の女……
自覚がない分タチが悪い……

「もっとも好意の日本語的意味は知っているが感情的意味は全くもってわからない」

あぁ、損な性格してるなぁ、この人。
そう思う2人であった。

「さ、厨房へlet's go!!」

「おい、宮野」

「僕は呼び捨てですか」

「年下じゃん」

「愛さんも歳下でしょう?」

「好きか嫌いだ」

「はいはい、で? なんですか?」

「愛さんのテンションおかしくないか」

「事件、捜査に関わるとああなるんですよ。だから辞めとけと言ったでしょ」

「いや、良い」

「は?」

「あれでしょ? 所謂ギャップ! ギャップ萌え! やばい!」

この人、何歳だ?
阪田 下の名前不明 年齢不明。

「阪田、先に行って挨拶と詫びをしてくるんだ。でないとあたしたちは入らない」

「わっかりましたァ」

阪田はたから屋に入っていった。

「あいつ、何者ですか?」

「阪田か?」

「えぇ」

「阪田 雅彦。30歳。独身。小倉屋アルバイト。築45年のボロアパート住み」

「え?」

「独身かどうかは指を見ればわかるじゃないか。仮にあたしに本当の好意があったとして、本当の浮気をしていたら奥さんの前では良い亭主を演じるはずだ。従って指輪は外さないと考えられる。あたしの前では外すとしても痕が残ったり、そこだけ細くなる事がいるからな。それに所帯を持っている雰囲気はない。よってあいつは独身だ」

フツーそこまでみねぇーよ!
新は心で思いつつ話をきく。

「へぇ、」

「んで、ボロアパートは新が茶を淹れている間に書かせた住所がそうだった」

「なるほど」

「そういうことだ」

「って、なんですぐボロアパートの住所ってわかるんですか!」

「前に通った時に何か起こりそうな嫌なアパートだと思ったからだ」

「そんなに、やばいンですか」

「見に行くか? 新の大好きなオバケも見られるぞ」

「僕は、オバケなんか好きじゃないですから!」

むしろ嫌いだ。苦手だ。

「出そうな事は出そうだが、ヤバイは別の意味だ。犯罪の香りがする。放火事件が起きてもおかしくないし、白骨化屍体とかありそうだなとか」

「勝手に事件を作らないで下さい」

「確かに。あんなアパート燃やしたところで誰も得をしない」

あ、でもそこに恨んでる人が住んでて、睡眠薬とか飲ませて放火すれば……焼死体は誰かわからなくなる、解剖しても胃の中身なんかわかんないからな。得な奴はいるか。

「じゃなくて!」

新はっこんだが

「お、阪田が出てきたぞ」

「話をそらさないで下さい」

「しょうがない。きてしまったんだから」

「はいはい」

「大丈夫です。今は暇みたいです」


「あ、愛さんだけです。えっと、宮田クンは俺はここでまちましょう」

「宮野です」

「あ、ごめん、ごめん。宮野クン」

こいつ、わざとだな、
新はそう思ったが、相手はあくまで"お客様"だ。
そして新は"探偵"でなく、
"探偵"の相棒である。

「はい。愛さんよろしくお願いします」

「おう」

。・*・:♪

「愛ちゃん! きてくれたんだね、最近見ないから心配したんだよ」

40過ぎ、独身。2階建てのこの建物の上に家がある。
そこは愛の探偵事務所と似た造りだ。

もっとも愛の家は3階建て。
愛が3階。新が2階。事務所が1階。

シャワー、トイレは各階に完備。
事務所を覗いて各階3LDK。
なぜ、こんなに良い物件なのかはのちにわかる。

「ちょっと、忙しかったんです」

「そっかー! 今日はサービスしちゃう!」

阪田の奴、ちゃんと説明しなかったな。
あたしは味の落ちた、たから屋のラーメンを食べに来たわけではない、
調査をしに来たんだ。
しかし、食べて確かめないわけにはいかない、阪田の悪戯の可能性もゼロではないから。

「はい。塩ラーメン」

「ありがとう」

まず、レンゲでスープを飲んでみる。

「ど?」

やはり、おかしい。
さっき、阪田が持ってきたラーメンと同じ味だ。

「おいしいです」

しかし、愛は嘘をつく。
笑って嘘をつく。
相手を欺く為に。

「よかった。最近辞めたバイトにまずいっていわれてな、味が落ちたって言われてな、愛ちゃんが言うなら大丈夫だ。阪田の野郎、ヤキモチだな」

「阪田さん、辞められたんですか??」

「あぁ」

「ふーん」

「バイトに止められてピンチなんだよ」

「あ、じゃああたしと新ではいりましょうか?」

「え?」

「私、一応調理師免許とか持ってるんですよ」

なくても入れるところもあるが。

「じゃあ、厨房もOKか」

「はい、新はホールのみですけど」

「うん! じゃあ、お願いしちゃおうかな。愛ちゃん、本業はなんだっけ? Wワークとか良いの?」

あ、店長には探偵って言ってないんだった。だからあっさりお願いしてくるんだ。よかった。言ってなくて。

「まだ、本屋さんで準社員なんでOKです!」

これも当たり前だが嘘だ。

「お、良かったー! じゃあ取り敢えず明日から来れる?」

「わかりました」

そう言って、
味が変わったラーメンを食べ干した。

愛が食べてる間に店長は雇用について軽く説明をした。
時給はいくらで、制服は貸すとか、何時~何時とか。
もちろん店長は改めて話すからテキトーに聞き流してね、まぁ、食べながらだし、オヤジの戯言なんて愛ちゃん聞かないよねぇ。

とかなんとか。

。・*・:♪

「お前、嘘ついたな」

「え?」

「阪田、嘘ついたろ」

「あ、」

「嘘ついたんですね、愛さんには嘘つかない方が身の為ですよ」

「すいません。味が変なので探偵に依頼して調査してもらうので探偵を厨房に入れて下さいなんて言えませんでした」

「あたしが来る事も言っていないだろ」

「あ、はい。店入ったらスゲー怒られてそれどころじゃなくて、すいませんでした」

「まぁ、良い。今回はその嘘のお陰で堂々と長々とあそこにいすわれる」

「え?」

「新。明日からラーメン屋でバイトだ」

「は!?」

「新はホールだ。あたしは厨房。そして新の時給は最低賃金の905円だ」

「俺はって事は愛さんは?」

「厨房担当だからと、店長の計らいで1000円だ」

「うっわー!」

「しょうがないだろ。ホールも監視しなきゃならないんだから」

「つか、事務所はどうするんですか!」

「事務所? 調査中につき只今休業中。再開未定でいいだろ」

「ダメですよ。そんなんじゃ依頼こなくなっちゃいますよ」

「バイト雇う金なンかないし、誰もいきなりあそこで店番なんか不可能だろ」

「ですよねぇ……」

「あのぉ……」

「なんだ、阪田」

「僕が店番しましょうか?」

「は?」

「お、それはいい。だが、給料は払わないぞ。依頼料を割り引くだけだ」

「大丈夫です! 愛さんの職場に入れるのならお金払ってでも店番したいです!」

「よし。じゃあ頼んだ」

わ、頼んじゃうのかよ~
と、新は思ったが業務には口出しできないし他に案が思いつかない。

「さぁ、潜入捜査のはじまりだ」

愛は口元に笑みを浮かべ事務所へ向かう。
長い髪をかきあげる。
腕を組んで左手を顎に添える。

それは愛が事件に興味を持ち、
真剣に捜査する時のサインだ。
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